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クレッシェンドの花  作者: 合歓野白雪
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25.Queen

「ねー、咲闌ちゃん、これ全部連れてくのぉ……」

「ついてきたがるのを放置するわけにもいかないでしょ……私を慕ってるみたいだし」


とんでもない数の下級星霊。数だけなら戦争でも起きるのかってくらい。雨の館出てから更に増えてしまった。

なんというか、物量的に息苦しい。

できれば散るとかしてほしいんだけど、私中心にしてかなりべったりついてくるものだから、今私は一人で空にいる。申し訳ないけど、他は全員地上を歩いてもらってる。私にくっつきたい紅兎が不満そう。


「あの頃よりも好かれてるのではないですか、咲闌様」

「そうかも……? でも言うことは聞いてくれたんだけどな」

「自分たちを庇護してくれる絶対君主のご帰還に対する彼らなりの歓迎でしょう」

「ライラほど目がいいわけじゃないのにわかるものなの?」

「下級だからこそ、本能的にわかるのでしょう」


テントに入ってもみっちりと囲んでくるから気配が濃密すぎてなんにも気が休まらない。

みんなソワソワしている。

どうしたらいいの、これ……


「もういっそ全部契約して元素星霊界(アストラル・ゼロ)に強制的に送っちゃったらぁ?」

「非現実的な提案をありがとう」

「そうは言いますが、咲闌様。私もそれが一番だと思いますが」

「この数を? でもさすがにしんどいし、やってみようか」

「この子たち全部に名前をあげるんですか?」

「え? 違う違う。そうか、みんな高等星霊との契約しか経験ないもんね。下級星霊の契約はもっとこう……一方的?」

「一方的?」

「そう。どこまでできるかわかんないけどやってみる。見てて」


飛ぶための最低限にしか開いてなかった翼を開く。チラチラとした蝋燭のようだった炎が燃え盛る。まるで翼そのものが輝いているよう。

今私は星霊姫(レジーナ)としての力を全開にしようとしている。周りの木々がざわめく。星霊たちが騒ぎ始めている。

でもこれは私に当てられて恐慌(パニック)になっているだけ。だから、統率する命令がいる。

まだまだ……この場全ての子を支配下に……


「ちょ、ちょっと……なんか気持ち悪いんだけど……」

「ぼ、僕も」

「あー当てられちゃったね。ライラこういうのもできたっけ?」

「一応は。結界を貼りましょう」


すっとライラが手を広げる。ふわふわとあたたかいベールのようなものが展開される。


「お二人は大丈夫ですか」

「なんとか大丈夫です」

「あたしも……つーかお姉も雨以名もなんで平気なの?」

「なんでと言われましても」

「ちょっとは気持ち悪かったよ。繭さんは全く?」

「ええ、全く」


きょとんとしている繭さんに、紅兎は顔を顰め、ライラは目を輝かせた。大体二人の考えがわかる。

繭さんが私の花嫁に相応しいと気づいたのだ。これ、ビシソワーズ家もおんなじこと考えそう。ああ、やだやだ。

おっと、そんなくだらないこと考えてる場合じゃない、集中しないと。

んん……よし。

なんて言ったらこの子たち言うこと聞いてくれるかな。威厳とかあった方がいいのかな?


「“さぁ、跪きなさい!”」


ざわっ。周りの気配が動く。多分女王である私に平伏している。

ん……全部いけた、かな……?


「私、咲闌の名のもとに命令する。お前たち、一度元素星霊界にお戻り!」


チカチカッ。きっと今の私は眩しい。自覚ある。

『女王』の言葉に従ってたくさんいた下級星霊たちは少しずつ消えていった。

これでいいか……ってあれ?


「何してんですか?」

「体がつい勝手に……」

「咲闌ちゃんが言霊に乗せて跪けって言ったからでしょ……んっ」

「えっ、嘘……」

「逆らえない命令でした……」

「んん……星霊たちは、わかるんだけど。なんで人間のみんなまで跪いてるのかな」


女王モード全開だったから星霊たちに効果あるのはいいんだけど。わかるんだけど。星霊姫まで跪けって言った覚えはないよ?

言霊を無意識に使っていても、人間には向けてないはず……なんだけど……どうしよう自信なくなってきた。


「いや、なんか咲闌がすごい女王様に見えちゃって」

「従わないとって気になって」

「気がついたらねー」

「自然と跪いていました」

「マジですか……」


今後は封印したい女王モード……いやきっと無理だよね、むしろ更に出てくる気がする。

私ヴァランシアのシャトランじゃないんですけど。

ただの咲闌なんですけど。

言い聞かせてはみたものの、自分の中のシャトランだった部分が戦いを通して出てきているのがわかる。

非常によろしくない。

ポンッ。


「深刻そうな顔しないの」

「っ。え?」


需璃さんに頭をはたかれた。ふっと意識が現実に戻る。


「あんたは咲闌でしょ。ちょっと普通じゃないくらいなんだっての。咲闌の個性でしょ。前世とか知らないよ」

「……!」


需璃さんが珍しく私を励ました……!

あっ、ほら慣れないことしたから耳が赤い! 決まり悪そう。

繭さんが頭を撫でている……

繭さんに励まされることは多いけど、需璃さんにはとても珍しい。やっぱり、お姉さんなんだなって思う。


「……なに」

「いいえ、なにも。ありがとうございます、需璃さん」

「さっさと、次行くよ」

「ですね」

「あー、需璃さん照れてるー♪」

「〜〜〜〜〜〜!!!」

「あいたっ!」


からかった雨以名が悪いけど、照れ隠しで引っ叩くのはやめてあげてください……

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