第六・五話 終わりの始まり(裏)
悲劇は一瞬のうちに始まった。 3人の王が署名しようとした時、意味不明な叫び声を上げながら一人の人間が乱入してきたのだ。 その手に握られていたのは間違いなく魔銃だった。
魔銃とは、私達時空龍達の中でも禁忌の技術とされ、作る事を禁じられたものだ。 その威力は凄まじく、時空龍の障壁を容易く貫通する。
「父上!」
私は同時に駆け出していた。 でも分かっている、絶対に間に合うはずがないのだ。
人間は躊躇無く魔銃の引き金を引く。 打ち出された弾丸は真っ直ぐと父の心臓目掛け飛んでいく。
まるで世界が止まってしまったと錯覚するほど時間の流れが遅く感じる。 どんなに全速力で走っても、私の手は――届かない。
辺りに響き渡る悲鳴、飛び散る父の肉片。 命中した弾丸に込められた魔法が発動し、父の身体はミンチになった。
「姫様いけません!」
「放せ宗月! 私はあの人間を八つ裂きにする!」
そうだ、あれ程毛嫌いしていてもあの人は私の父なのだ。 だから、敵を! あの人間を!
――腹を裂き、頭をかち割り、腕をもぎ、腸を引きずり出して晒し者にしてやる。
「やってくれましたなブレン大統領。」
「クラディス王?」
黒衣のローブを纏ったクラディス王が口を開く。
「わしは部下を使い貴方を監視していたのですよ。 そして今回の暗殺計画を止めようとしていたのですがな。」
「何を言っている!」
心底残念だとばかりにクラディス王はうなだれた。 そしてアフラムから剣を受け取ると、その切っ先をブレンに向けた。
「裏切り者ブレンよ! 民達、そして時空龍達に代わり貴様を処刑する!」
「お、おい、冗談はよすんだ。 私は暗殺計画など――」
「問答無用!」
片手で軽々と剣を振るう。 その動きは洗練された剣士の動きであった。 その一撃は、ブレンと犯人の首を同時に切り落としていた。
「時空龍の姫よ、この場はこれで納めてもらえないだろうか。 これがわし達が出来る精一杯の誠意だ。」
「くっ!」
私は何も答えられなかった。 頭が真っ白でそこまでの余裕がなかったからだ。 代わりに宗月が対応しているようだが、何を言っているのか耳に入ってこない。
そのままフラフラと犯人の死体と父の死体の前に座り込む。
「そんな、私はこんな事のために、ここに来たわけでは・・・・・・」
犯行に使われた魔銃を拾い上げる。 一体誰がこんな物を・・・・・・
「ぁ・・・・・・」
――その時私は気づいてしまった。 魔銃に微かに残る魔源から、宗月の匂いがする事に。




