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Dragons Heart  作者: 空野 流星
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第六話 終わりの始まり

「例の物は?」


「テスト結果は上々、実用化に向けて最終調整中です。」


「そうか、期待しているぞ。」


「はい、ブレン大統領。」



 ブレン大統領は妖しく笑みを浮かべる。 もうすぐ掴む事の出来る未来を思い描き、歓喜に震える。



「そうだ、もうすぐ我々は奴等の手の平から逃れ自由を手にする事が出来る。 この魔道兵器と――境界移動(ラインズワープ)装置によってな。」



―――


――


―



「・・・・・・」


「――お腹すいた。」


「さっき食べたばっかりだろ。」



 最悪だ。 官邸の中ではきっと賑やかなパーティーをしているであろうが、私と翡翠は入り口で見張りという状況。 あぁ、私もいきたいー!



「私だって中で美味しい物食べたいの。」


「気持ちはわかるが、仕事なんだから我慢しろ。 あの姫様がたんまりお給料をくれるしな。」


「お給料?」



 お給料が出るなんて私は一言も聞いていない、これはまさか・・・・・・



「ねぇ翡翠、そのお給料の話って最初からあったわけ?」


「そうだが、知らなかったのか?」



 あのクソ兄貴、私には一言も説明しなかったな。 独り占めなんて許さないぞ!



「よし、お給料貰ったら美味しいもの食べよ、あと可愛い服。」


「フォルカに怒られても知らないぞ。」


「関係ない、全部あいつが悪い。」



 私は右手の拳を強く握り締め、兄への反抗を誓ったのであった。 いつまでも、順々だと思うな嫁と妹――なんてね。



「琥珀さんに限ってそれはないか。」


「何か言ったか?」


「なんでもないでーす。」



 しかしだ、やっぱりパーティに行きたいわけで、なんとかうまい潜入方法は無いかな。

 そんな事を考えていると、中から晧月さんが出てきた。 村に置いてきた事はもう根に持ってないよね?



「警備ご苦労様です、何も異常はないですか?」


「問題ありません、強いて言うなら相棒が騒いでるくらいで。」



 翡翠め、なんて事を言いやがるんでしょうか。 私がいつ騒いだというのだろうか? こんなにも大人しく警備の任についているのに。



「可愛いものじゃないか、ならば調度いいタイミングだったようだな。 姫様の命で是非お前たちも中で楽しむようにとのことだ。」


「え、いいの!?」



 その言葉が耳に入るか否か、私は目を輝かせながら晧月を見つめた。 その言葉が本当ならば、美味しいご馳走にありつける!



「そうだ、姫様に感謝するといい。」


「ありがと! 行くわよ翡翠!」


「おい待てエリカ!」



 私は勢いよく駆け出し、大きな扉を潜る。 もう頭の中にはご馳走の事しかないのだ。



―――


――


―



「わぁぁ・・・・・・」



 そこには、憧れの夢の世界が広がっていた。 ホールの中にはドレスを纏ったきらびやかな女性達、そしてイケメン男子達!



「中に入らないのか?」


「ふえっ?」


「呆けてないで行くぞ。」



 翡翠は私の手を取り、ズカズカとホールの中に入る。

 天井には巨大なシャンデリアがあり、大きな白いテーブルには食べたことのないような豪華な料理が並べられている。



「子供じゃないんだから大丈夫だってば!」


「こうしてないとお前はどこに行くかわからないだろ? 世話のかかるやつだ。」


「はいはいごめんなさいね!」


「――こっちが心配する事も考えろよ。」


「何か言った?」


「なんでもありませんよお姫様。」


「うむ、よろしい!」



 では早速―― 私が目の前にある果物に手を伸ばそうとした時だった。 ホール内に放送が響き渡ったのは。



「皆様、本日はお集まり頂きありがとうございます。」



 この声は、もしかしてブレン大統領?

 ホール奥のステージに老人が立っているのが見える。 おそらくあの人がブレン大統領だ。 その隣には、以前会った黒ローブ姿の人物――クラディス王だ。



「もうすぐ我らの友である九垓(くがい)殿が到着される、拍手で迎え入れようではないか。」



 客人達による拍手の雨の中、アフラムを先頭に3人の時空龍達がホールへと足を踏み入れた。 そのうちの1人は私がよく知る人物、銀華であった。 おそらくは、あのお爺さんが時空龍の王である九垓様であろう。 もう一人は誰だろうか?



「よくいらしてくれました九垓殿。」


「こちらこそ、急な来訪でご迷惑をおかけした。」



 なんか、すごい場に居合わせたんだと痛感する。



「どうしたエリカ、珍しく大人しいな。」


「なんていうか、場違いだなぁって。」


「――そうだな、俺たちが一生関わることの無いような場だからな。」



 こういうのを歴史的瞬間って言うのだろうか? 柄にもなく緊張してきた。 首筋にも汗が流れる感触がある。

 私は生唾をゴクリと飲み込み、二人の姿を食い入るように見つめた。



「手紙を拝借しましたが、今回は黒竜族の件で来訪されたとか。」


「あぁ、彼はもう充分罪を償ったとみえる、それに我等に近しい存在があのような扱いを受けているのは見るに耐えないのでな。」


「では、彼らを禁断の地より解放すると?」


「その通りだブレン大統領。」


「私も同じ事を考えていました。 かのクラディス王も粉骨砕身し、私達に協力してくれましたしね。」


「では、誓約を・・・・・・」



 九垓王は銀華から誓約書を受け取り、テーブルの上に広げた。



「クラディス王、あなたも署名を。」


「――わかりました。」



 テーブルを中心に、3人の王が勢ぞろいする。 なんとも近寄りがたいオーラを放っていた。 でもなんだろう、何か変な感じがする。 ――汗の量はどんどん増えている。



「どうしたエリカ、顔が真っ青だぞ?」


「なんだろ、私なんか怖い・・・・・・」


「外の空気でも吸うか?」


「うん、そうする。」



 私と翡翠は人ごみを縫うように歩いていく。 私、どうしちゃったんだろうか? 気持ち悪さはどんどんこみ上げてきて、ついには寒気まで感じる始末だ。

 そんな私を心配したのか、翡翠は私を抱き抱えた。



「こ、こら・・・・・・ 恥ずかしいでしょ。」


「そんな事言ってる場合か、辛いなら俺に体を預けておけ。」


「ごめん・・・・・・」



 なんだ、優しいところもあるじゃない。

 私は両腕を首に回し、しっかりと翡翠にしがみついた。



「よし、あと少しだからな。」


「うん。」



 もうすぐでホールを出る、そんな時だった。


 ――銃声がホールに響き渡ったのは。

~境界移動(ラインズワープ)~

境界線(レイ・ライン)を越える秘術、又は越える行為の事を指す。

それなりの下準備が必要だが、本来ならば誰でも可能な秘術。

現在は時空龍達がこの秘術を禁忌として禁止しているため行われる事はない。

ただし時空龍達は、この境界移動(ラインズワープ)を頻繁に行っている。

ゆらぎにより意図せず別の境界(ラインズ)に移動してしまう事も境界移動(ラインズワープ)と呼ばれる。

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