第19話 世界一への挑戦権
会場の照明が落ちる。
数千人の観客が見守る中、大型モニターに表示されたカードに歓声が爆発した。
LOSERS FINAL
神谷蓮
VS
白石凛
勝者はGrand Final進出。
敗者はここで大会終了。
世界一への挑戦権を懸けた最後の日本勢対決だった。
「さあ皆さん!!始まります!!REVOLT MAJOR 2026 Losers Final!!」
相馬優斗の声にも自然と力が入る。
「神谷選手はウィナーズ側から勝ち上がり、リー・ジェン選手を倒しエリック選手との死闘を経験してここへ来ました!」
「そして白石選手は敗者側でパク・ミンソ選手、レオン選手、リー・ジェン選手を撃破してここまで勝ち上がっています。試合数では白石選手の方がかなり多いですが、それでもプレー精度は落ちていません」
コメント欄も凄まじい勢いで流れる。
『始まるぞ!!』『神谷頼む!!』『凛頑張れ!!』『どっちも勝ってくれ』『無理だろそれ』『実質決勝だ!!』
ステージへ現れた神谷は静かだった。
歓声も視線も気にしない。
ただモニターを見る。
対する白石も同じだった。
ここまでの激戦で疲労はある。
それでも目だけは死んでいない。
むしろ今までで一番研ぎ澄まされていた。
試合開始。
ROUND1。
開幕から両者が前へ出る。
様子見はない。
お互い何度も戦っている。
知らないことなどほとんどない。
だからこそ読み合いが深い。
神谷の差し返し。
白石の対空。
投げ抜け。
暴れ潰し。
一つ一つの攻防に観客が沸く。
「レベル高い!!」
「お互い手の内を知り尽くしていますね!」
ROUND1は神谷。
細かな有利状況を積み重ね最後はRexのコンボで削り切る。
しかしROUND2は白石。
神谷の攻めパターンを逆手に取り画面端へ追い込むと、そのままCelesの連係で押し切った。
1-1。
会場の熱気が上がる。
『どっちも強い』『マジで互角』『分からん』
ROUND3。
神谷は感じていた。
白石が強い。
今まで戦った中でも間違いなく一番強い。
エリックに敗れた悔しさ。
敗者側を勝ち上がってきた経験。
その全てが白石を成長させている。
――だからこそ面白い。
自然と口元が緩みそうになる。
一方の白石も同じだった。
神谷が以前より強い。
リーを倒しエリックを追い詰めた理由が分かる。
少し気を抜けば負ける。
だから集中する。
目の前の一手だけに。
ROUND3は白石。
2-1。
白石リード。
会場が揺れる。
『凛いけるぞ!!』『神谷頑張れ!!』
追い込まれた神谷だったが焦りはない。
むしろ頭の中は冴えていた。
エリック戦で学んだこと。
リー戦で掴んだ感覚。
全てが繋がり始める。
ROUND4。
神谷が覚醒する。
差し返し精度が一段上がる。
対空成功率も上がる。
白石の癖を見抜き始める。
「神谷選手対応している!!」
「修正速度が異常です!」
白石も粘る。
だが神谷が押し切る。
2-2。
フルセット。
観客全員が立ち上がる。
コメント欄は完全に祭り状態だった。
『神試合』『これが世界大会』『どっち勝つんだ』『心臓もたない』
最終セット。
序盤は神谷。
中盤は白石。
互いにリードを奪い合う。
残り体力。
神谷三割。
白石三割。
完全な互角。
観客席から歓声が響く。
神谷は白石を見る。
白石も神谷を見る。
ここまで何度も競い合ってきた。
負けたくない。
その気持ちだけは同じだった。
そして最後の読み合い。
白石が投げを狙う。
神谷はそれを読む。
投げ抜けではない。
一歩下がる。
空振る。
差し返し。
カウンター。
会場が爆発する。
Rex最大コンボ。
体力が消える。
KO。
勝者。
神谷蓮。
数秒遅れて会場が揺れた。
「決まったあああああああああ!!」
「神谷蓮!!Grand Final進出です!!」
観客が総立ちになる。
コメント欄も流れ続ける。
『うおおおおおおおお!!』『神谷きたああああ!!』『凛も強かった!!』『最高の試合だった』『泣きそう』
白石はしばらく画面を見つめていた。
悔しい。
本当に悔しい。
だが不思議と後悔はなかった。
今出せる全てを出した。
だから神谷へ視線を向ける。
神谷も立ち上がる。
二人は無言で握手を交わす。
ライバルだからこそ分かる。
互いに全力だったことを。
そして大型モニターに表示される。
GRAND FINAL
エリック・ウォーカー
VS
神谷蓮
会場の歓声が再び大きくなる。
ウィナーズファイナルで敗れた相手。
世界最強候補。
そして今大会最大の壁。
神谷は静かにモニターを見上げる。
もう一度戦える。
今度こそ勝つために。




