第23話 王手
第一先を落としたLETHAL。
だが内容は決して一方的ではなかった。
コメント欄もそれを理解している。
『まだ分からん』
『内容は互角』
『紙一重』
『次が大事』
黒田が声を張る。
「さあ決勝第二先です!」
「現在セットカウントは桐生選手が1-0!」
「ここで桐生選手が取れば王手! LETHAL選手が取れば振り出しになります!」
鬼塚も頷いた。
「決勝の流れを左右する重要な一先ですね」
ロードが終わる。
ステージ表示。
《Kai》と《焔舞》が向かい合う。
FIGHT
開幕。
今度はLETHALから動いた。
素早く前へ出る。
第一先より明らかに積極的だ。
Kaiの下段。
ヒット。
コンボ。
さらに起き攻め。
先に主導権を握ったのは蓮だった。
コメント欄が反応する。
『修正した』
『攻めてる』
『いいぞ』
しかし桐生もすぐに順応する。
ガード。
反撃。
最速暴れ。
焔舞の連続攻撃。
体力差が消える。
試合は再び五分。
そこから先は完全な読み合いだった。
投げ。
抜ける。
下段。
防ぐ。
飛び。
落とす。
一度通した行動が二度通らない。
互いが互いを観察し続けている。
鬼塚が静かに語る。
「対応力同士の対決ですね」
「試合中にお互いが進化しています」
コメント欄も盛り上がる。
『レベル高すぎ』
『決勝やばい』
『ずっと神試合』
終盤。
両者体力三割。
ここで蓮が仕掛けた。
Kai最大火力圏。
勝負の間合い。
コメント欄が反応する。
『来た』
『勝負だ』
『いけるか』
だが。
桐生は待っていた。
ガード。
そして最速反撃。
焔舞の蹴りが刺さる。
カウンターヒット。
画面端。
追撃。
さらにコンボ。
体力ゲージが吹き飛ぶ。
K.O.
黒田が絶叫する。
「取ったあああああ!!」
「桐生選手が第二先獲得!!」
コメント欄が爆発する。
『うおおおお』
『王手!』
『強すぎる』
『あと一先』
スコア表示。
桐生 2
LETHAL 0
鬼塚が言う。
「しかし本当に僅差です」
「数字以上に接戦ですね」
『それな』
『全部ギリギリ』
『まだ終わらん』
そして。
第三先。
桐生は優勝まであと一先。
LETHALは後がない。
黒田も興奮している。
「さあ第三先!」
「LETHAL選手、崖っぷちです!」
FIGHT
試合開始。
だが。
開始直後から空気が違った。
鬼塚が口を開く。
「変えましたね」
「またです」
黒田も反応する。
「LETHAL選手ですか!?」
「はい」
鬼塚は断言した。
「ここまでで得た情報を使ってさらに修正しています」
コメント欄がざわつく。
『まだ変わるのか』
『怖い』
『学習速度おかしい』
しかし。
桐生も止まらない。
焔舞が前へ出る。
牽制。
差し返し。
投げ。
崩し。
第一先。
第二先。
その全ての経験を利用して攻めてくる。
試合はさらに激化した。
Kaiが攻める。
焔舞が返す。
焔舞が崩す。
Kaiが読み返す。
互いに譲らない。
だが少しずつ。
本当に少しずつ。
桐生が押し始める。
コメント欄も気付き始める。
『桐生ペースか?』
『じわじわ来てる』
『苦しい』
焔舞の中段。
ヒット。
追撃。
Kaiの体力が削れる。
さらに起き攻め。
投げ。
再び崩し。
体力差が広がる。
黒田が叫ぶ。
「桐生選手の攻めが止まらない!」
蓮も必死に返す。
読み勝つ。
コンボ。
体力を削り返す。
しかし桐生も返す。
また削る。
また攻める。
試合時間が進むほど桐生の圧力が増していった。
そして終盤。
体力表示。
桐生 三割。
LETHAL 一割。
コメント欄がざわつく。
『まずい』
『追い込まれた』
『LETHALきつい』
さらに。
焔舞の攻撃が刺さる。
体力が減る。
残り数ドット。
本当にわずか。
あと一発。
小技一つで終わる体力。
黒田が叫ぶ。
「まずい!」
「LETHAL選手、あと一撃です!」
コメント欄が爆発する。
『終わる!?』
『桐生優勝か!?』
『耐えろ!』
『まだだ!』
だが。
蓮は諦めない。
後退しない。
逃げない。
残り体力はほとんどゼロ。
それでも前へ出る。
鬼塚が静かに言う。
「この選手はここからなんですよ」
中央。
《Kai》と《焔舞》が向かい合う。
桐生の体力は三割。
LETHALは瀕死。
誰が見ても桐生有利。
誰が見てもLETHAL絶体絶命。
それでも。
不思議と終わる気がしなかった。
コメント欄も同じだった。
『まだ何かある』
『LETHALだぞ』
『ここからだろ』
『終わる気しない』
黒田が叫ぶ。
「桐生選手は優勝まであと一撃!」
「LETHAL選手は後がありません!」
緊張が張り詰める。
そして。
蓮が静かにレバーを前へ倒した。
《Kai》が動く。
決勝戦最大の勝負所が――
今、始まろうとしていた。




