第54話 確かな手応え
第三節終了から数日後。
RAVEN’S NESTの会議室では第四節へ向けたミーティングが行われていた。
大型モニターには第三節の試合映像と順位表。
テーブルには神谷、藤堂、真田、黒崎、そしてオーダー外だった九条も参加している。
現在首位。
勝点100。
結果だけ見れば順調そのものだった。
だが誰一人満足している様子はない。
真田が順位表を見ながら口を開く。
「GENESISが思ったより上がってきたな」
モニターには勝点80の数字。
狼塚を倒した勢いは本物だった。
九条も頷く。
「早乙女が完全に覚醒したな」
藤堂も同意する。
「第四節以降は間違いなくマークされる」
黒崎が静かに湯呑みを置いた。
「良い選手じゃのう」
短い言葉だった。
だが評価は高い。
続いてVORTEX。
勝点60。
皇城龍之介を中心に巻き返しを始めている。
真田が苦笑した。
「皇城も上がってきたな」
九条も笑う。
「あいつは元々強い」
「だな」
会議室に少し笑いが起こる。
だが誰も油断していない。
Division Fは確実にレベルが上がっていた。
その時。
九条が神谷を見る。
「で」
全員の視線が集まる。
「武神どうだった」
神谷は少し考えた。
そして素直に答える。
「予想以上でした」
即答だった。
藤堂も頷く。
「見てて分かった」
真田も笑う。
「かなり馴染んでたな」
神谷はモニターに映る自分の試合を見る。
正直。
手応えは大きかった。
「選択肢が増えました」
それが一番だった。
Kai。
Rex。
そして武神タケル。
相手によって変えられる。
オーダーによって変えられる。
リーグ戦では大きな武器になる。
九条が笑う。
「だろ」
神谷も頷く。
「かなり助かってます」
黒崎が静かに口を開く。
「じゃが」
会議室が静かになる。
「武神が強いわけではないぞ」
神谷もすぐ頷いた。
「はい」
分かっている。
武神を使えば勝てるわけではない。
考える時間が増えた。
見えるものが増えた。
それが大きかった。
黒崎は続ける。
「前より相手を見れるようになっとる」
神谷は少しだけ笑った。
それは最近自分でも感じていた。
焦らない。
急がない。
待てる。
以前より選択肢が増えている。
九条も腕を組む。
「開幕節なら狼塚戦で無理に行ってた場面も多かったからな」
真田も頷く。
「今なら違う戦い方するだろうな」
神谷は否定しなかった。
確かにそう思う。
負けた経験。
黒崎との会話。
控えから見た試合。
全部が繋がっていた。
藤堂が珍しく笑う。
「成長してる」
短い一言。
だが神谷は少し照れ臭そうに笑った。
その空気を見て真田が笑う。
「玲奈が褒めるとか珍しいな」
「事実だから」
即答。
会議室に笑いが起こる。
そして九条が立ち上がった。
「まあ順調だな」
全員が見る。
「でもまだ完成じゃない」
神谷も頷く。
その通りだった。
武神もまだ伸びる。
Rexも伸びる。
Kaiも伸びる。
そして何より。
自分自身も伸びる。
第四節まで残りわずか。
リーグ前半戦も終盤へ向かう。
だが神谷蓮には確かな手応えがあった。
強くなっている。
少しずつ。
確実に。
その実感だけは誰よりも大きかった。




