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LETHAL -俺だけが見える勝利の一手-  作者: 龍崎
第一章 無名の高校生

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第13話 観察の果て

「第二ゲーム開始です!」


黒田の声が響く。第一ゲームを先取したLETHAL。だが二先ルールである以上、まだ試合は終わっていない。天城レオもまた大型大会を勝ち上がってきた実力者であり、一度負けた程度で崩れるようなプレイヤーではなかった。


「むしろここからですね」


鬼塚が腕を組みながら言う。


「レオ選手ほどの実力者なら一ゲームで終わるはずがない。問題はLETHAL選手がどこまで対応できるかです」


「Round 1――Fight!」


第二ゲーム開始。


開幕から空気が違った。


第一ゲームで猛攻を仕掛けていたグラヴィオンが、今度は慎重に距離を測る。


設置技もすぐには置かない。


特殊移動も見せない。


まず相手を見る。


「おっと」


黒田が反応する。


「レオ選手かなり変えてきましたね」


「当然です」


鬼塚が頷く。


「一ゲーム目で読まれた部分をそのまま使う理由がありません」


レオは画面を見つめながら考えていた。


――やっぱり学習型だ。


あの終盤。


間違いなく自分の癖を読まれていた。


だったら答えは単純。


癖を変える。


行動を散らす。


予測を外す。


グラヴィオンが牽制を振る。


Kaiも返す。


差し返し。


ガード。


細かい読み合い。


派手なコンボはない。


しかし視聴者数十万人が固唾を呑んで見守っていた。


レオが先に流れを掴む。


投げ。


成功。


起き攻め。


下段。


ヒット。


さらに設置。


体力差が開く。


「レオ選手良いですね!」


黒田が声を上げる。


「一ゲーム目より明らかに良い内容です!」


「ええ」


鬼塚も認める。


「対策しています」


レオは確信し始めていた。


――まだいける。


相手は強い。


だが無敵じゃない。


読まれたなら変える。


対応されたらさらに変える。


そうして戦ってきたから今ここにいる。


特殊移動。


投げ。


下段。


中段。


グラヴィオンの圧力が増していく。


そして。


Kaiの体力が半分を切った。


だが。


その時だった。


Kaiが特殊移動を止めた。


一回。


二回。


三回。


今まで通っていた行動が急に通らなくなる。


レオの表情が変わる。


――早すぎる。


ほんの数十秒前まで有効だった択。


それがもう機能しない。


鬼塚も静かに口を開く。


「始まりましたね」


「何がです?」


黒田が聞く。


「適応です」


鬼塚の視線はモニターから動かない。


「LETHAL選手は理解した」


レオがさらに択を変える。


Kaiも変える。


レオが修正する。


Kaiも修正する。


試合速度が加速していく。


終盤。


体力差は消えていた。


レオ三割。


Kai三割。


完全な五分。


「勝負はここですね!」


黒田が叫ぶ。


グラヴィオン前進。


投げ。


抜けられる。


下段。


ガード。


特殊移動。


止められる。


レオは理解していた。


読まれている。


だが。


それでも通すしかない。


最後の勝負。


グラヴィオンが今まで見せていなかった最速特殊移動を選択する。


通れば勝ち。


しかし。


Kaiはそこに技を置いていた。


カウンター。


コンボ。


体力ゼロ。


KO。


「決まったあああああああああ!!」


黒田の絶叫が響く。


「勝者LETHAL!! 二対〇!! 準決勝進出です!!」


レオは椅子にもたれ、小さく笑った。


悔しい。


だが納得もあった。


勝負にならなかったわけじゃない。


むしろ今大会で一番手応えを感じた相手かもしれない。


それでも最後には上回られた。


――次は負けない。


そんなことを考えながら席を立つ。


実況席では鬼塚が静かに息を吐いた。


「どうでしたか?」


黒田が尋ねる。


「レオ選手は強かった」


鬼塚は迷いなく答えた。


「ですがLETHAL選手は試合中に成長していた。それが決定的な差でしたね」


大型モニターにトーナメント表が表示される。


準決勝進出。


LETHAL。


そしてその対戦相手も決定する。


画面に表示された名前を見た瞬間、配信コメントが一気に加速した。


黒田も思わず声を上げる。


「これは熱いカードになりました!」


鬼塚も頷く。


「視聴者が一番見たかった組み合わせかもしれませんね」


モニターに映る名前。


白石凛。


国内トップクラスの女性プロゲーマー。


現役ランカー。


優勝候補の一角。


そして何より――LETHALが世間へ知られるきっかけになった人物だった。


大会では対戦していない。


だが数週間前。


ランクマッチで行われた一戦。


その試合で白石凛はLETHALに敗北している。


当時は誰も知らない無名プレイヤーだった。


だからこそ衝撃だった。


トッププレイヤー白石凛を倒した謎のKai使い。


その試合動画は瞬く間に拡散され、LETHALという名前が格闘ゲーム界隈へ広まるきっかけになった。


そして今。


再び二人が向かい合う。


白石凛は静かにモニターを見つめていた。


あの日の敗北は忘れていない。


何度もリプレイを見返した。


何度も考えた。


なぜ負けたのか。


何を読まれたのか。


何が足りなかったのか。


だからこそ。


今度は違う。


ランクマッチではない。


偶然の一戦でもない。


数十万人の視聴者が見守る公式大会。


逃げ場のない真剣勝負。


鬼塚が小さく笑う。


「面白くなりましたね」


「やはり注目ですか?」


黒田が聞く。


「当然です」


鬼塚は即答した。


「白石凛選手はLETHAL選手に負けた経験がある数少ないトッププレイヤーです。そしてLETHAL選手も、初めて本気で研究されて挑まれる相手になります」


モニターに準決勝の対戦カードが映る。


白石凛。


LETHAL。


ランクマッチで始まった因縁。


その決着をつける舞台が、ついに整った。

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