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真実の行方  作者: hiraji
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「俺たちは渡辺和則に嵌められたんじゃないでしょうか?」

渡辺和則に無罪判決が出された後、控訴するかどうかを決める会議で七瀬巡査部長は発言した。

本来は検察官のみが参加する会議だが西武警部補と七瀬巡査部長は

警察側の意見も聞きたいという理由で参加を要請された。

「確かに。何年も前に買ったウニクロの服のレシートやら

買った服の見本写真とかキチンと保存してる奴なんか普通いないよな。」

「ダッチワイフの宅配便の送り状控えもおかしい。」

「控えの方は経年劣化で文字が消えやすいからか封筒に入れて

その封筒を濃い色のビニールで保管していたようです。」

七瀬巡査部長の発言を支持するかのような意見が会議に参加した人から次々に出された。


「仮に我々が嵌められてしまっていたとしてだ。

控訴して有罪に持ち込めるような証拠あるか?」

今回の起訴を指揮した柳沢検察官は意外にも明るい口調で会議の参加者達を見回しながら発言した。

今回の"負け"で一番責任を負わされる立場の検察官が怒っても悔しがってもいない様子なのは不思議と言えば不思議だが

部下に当たり散らされるよりはずっと有り難いので会議の参加者はそれを指摘したりはしなかった。

「控訴はしない。今回は殺人事件として捜査はしたが中村真実に関しては

殺されたのか単なる行方不明なのかも不明

引き続き捜索願が出されている失踪人という扱いになる。」

柳沢検察官は会議で一言も発していない西武警部補を見ながら確認するかのように言った。

「一つ、宜しいですか?」

担当検察官の決定を聞かされた西武警部補が初めて発言の許可を求めた。

「何かありますか?」

柳沢検察官は西武警部補の意見を歓迎するかのような口調で返事をした。

「インターネット喫茶で中村真実の動画を海外の動画サイトから削除した人間についてです。」

西武警部補に会議室にいる捜査員達の注目が集まった。

「インターネット喫茶の店員の証言と当日夜の渡辺和則のアリバイ、水戸駅から七会村に行くために使ったレンタカーの領収書や

レンタカーを返した後に水戸駅から会社に帰る為に使ったタクシーの領収書。

七会村にある別荘近くのコンビニの領収書と防犯カメラ映像

それらにより動画を削除した人間が間違いなく渡辺和則ではないことが証明されましたが

では動画を削除した人は一体誰だったんでしょう?

インターネット喫茶の防犯カメラ映像で見る限りその男は当日の渡辺和則の服装と酷似しているという言い方さえ控え目なくらい

完璧にコピーしています。

これは明らかに渡辺和則と共犯関係にあると見て良いのではないでしょうか?」

目を閉じて西武警部補の話を聞いていた検察官は大きく頷きながら答えた。

「西武警部補の指摘は正しい。もしまたその共犯者が中村真実名義の免許証を使ったら

それが中村真実の行方を確認する突破口になるかもしれない。

埼玉県内だけでなく東京や茨城のインターネット喫茶にも手配を出しておこう。」

有り難うございますと言いながら西武警部補は席に座ったが、

お礼を言いながらも

「恐らく二度とあの偽造免許証が利用されることはないんだろうな」

と西武警部補は内心で思っていた。

また、柳沢検察官は手配するだけで実際に渡辺和則の共犯者を探すための捜査を

具体的にするつもりが無さそうだ、とも思った。

検察官に悔しそうな態度や敗北感が感じられないのは

もはや中村真実失踪事件から興味を失っているからなのかもしれない。

七瀬巡査部長の言う通りで自分達は渡辺和則に嵌められてしまったのだろう。

西武警部補は敗北感を噛み締めながら負けを認めたのだった。


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