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渡辺和則があっさりとあのビデオカメラ映像が自分の撮影したものだと認めた。
それは検察側にとって有利になるのだろうか?
渡辺和則はあのビデオテープの最後に消し忘れていた中村真実の死体と思われる部分の存在を知らないのか?
検察側の期待は粉々に打ち砕かれた。
「あの・・・・物凄く言いにくいのですけど・・・
あれは・・その・に、人形です」
検察側が証拠として出した渡辺和則が埋めたと認めたビデオテープの120分以降に残されていた
中村真実を思わせるうつ伏せの死体画像に関して弁護士に質問された渡辺和則は
消え入りそうな声で答えた。
「人形にしては大きくないですか?等身大なように見えますが」
弁護士の質問はまるで検察側の反対質問のような口調だった。
渡辺和則は下を向いていた顔を一瞬裁判員達が座ってる方向に向けて
また直ぐにうつ向いて机に話し掛けるかのように答えた。
「えー、あの大人用の・・アダルトグッズと言いますか・・・その・ダッチワイフとかそういう感じの人形です。」
弁護士は頷きながら「何故埋めたのか」と渡辺和則に質問をすると
「箱に入れて押し入れにしまっていると時々押し入れから音がしたんです。
襖を内側から叩くような音や啜り泣きの声が。それで怖くなって・・・」
弁護士は渡辺和則の答えを胡散臭そうに聞きつつ質問を重ねた。
「その人形を埋めた場所はどこですか?今も埋まったままですか?」
「埋めた場所は祖父母から相続した家の庭ですが人形はもう埋まってません。
アリエント工業、あ、いや人形を作ったメーカーさんに聞いたら
メーカーさんの方で供養してくれるとのことだったので掘り出して洗ってメーカーさんに送り返しました。」
弁護士は一応確認しておくといった雰囲気で質問した。
「人形に着せていた服や下着はどうやって手に入れてその後どうしましたか?」
渡辺和則は答えた。
「服や下着は『ウニクロ』や『すまむら』で購入したもので、
人形に着せていた服は人形を掘り出した時に脱がせて人形を埋めていた穴にまた埋めました。」
弁護士は渡辺和則にそこまで答えさせた後、裁判官に
アリエント工業に振り込んだ人形の購入代金の記録、
アリエント工業に人形を送った時の送り状、
見世で服や下着を買ったときのレシートを
弁護側の証拠として申請し、検察側は証拠採用に反対したが裁判官は証拠を認め、採用した。
尚、渡辺和則の庭に埋まっていた服を間違いなく中村真実の服だと断言した母親が
検察側の証人として出廷していたが弁護側からの反対尋問に満足に答えることが出来なかった。
母親が中村真実に買ってやったという服なのに値段もメーカーも購入した店も答えられず
母親が買ってやった服なのに支払いは中村真実がしたから分からないとか
主張が二転三転してしまい
中村真実の母親の証言の信憑性に対する裁判員達の心証は最悪なものとなった。
結果として証拠調べが終わってからの検察による論告求刑は葬式の弔辞を読んでいるかのような雰囲気の中行われたのだった。
「~以上の理由により、被告人渡辺和則に懲役20年を求刑する」
判決が言い渡されたのは一週間後であったが当然ながら
免許証の偽造及び行使、中村真実の殺害と死体遺棄全てについて無罪だった。




