531 六翼の天使リシュエル
カプセルが開き、中の女性がゆっくり目を開ける。
白銀の長い髪をなびかせ、背中には左右に三つずつ広がる六対の白い翼を生やしていた。
サフィルス達殺戮人形も翼を二対の翼を生やせて天使っぽいと思っていたが、六対となるとより神々しく見える。
「気を付けろよレイ。コイツ、かなり強いぞ」
そんなふうに考えていたオレに、バルフィーユがそう忠告してきた。
バルフィーユは鑑定魔法無しでも、戦闘経験の多さからある程度相手の実力がわかるらしい。
っていうかバルフィーユが強いとか言うなんて、それは相当ヤバイのでは?
[$#!!#%] #@$%@!$5#@@$
おや?
女性を鑑定しようとしたら、そんな表示が出た。
鑑定不能とか弾かれたとかじゃなく、バグったような表示になっている。
以前にもステータスの一部が塗りつぶされたような表示は見たことがあるが、今回のはそれとは違う感じだ。
「···················」
目を開けた女性が周りを見渡し、オレ達に視線を向けた。とりあえず敵意は感じないが、どう出てくるか。
「%#@$@#$##$」
女性が微笑みながら何か言った。
何を言っているか、まったく聞き取れなかったが。
オレはスキルや翻訳魔法の力で異世界の言語も理解出来るはずなのだが、天使の言葉は翻訳出来ないのか?
何を言ってるかはわからないが、表情を見る限りでは敵意は感じない。
「%@#······? あ、あー······これなら通じるかな?」
途中から天使の言葉が翻訳されて聞こえるようになった。何をしたかわからないが、これなら話が出来そうだ。
「ボクの名前はリシュエル。キミ達は一体何者なのかな?」
女性が自己紹介をして改めて問いかけてきた。
女性の名前はリシュエル、か。
聞いたことはないが、確かになんとなく天使っぽい名前だな。
そして見た目はアイラ姉のような凛々しいタイプの美人さんなのに、まさかのボクっ娘なのか。
なんてどうでもいいことを考えてる場合じゃないな。
「オレはレイ。人族······でいいのかな」
「俺はバルフィーユ。一応、魔人族だ」
「――――――私はサフィルス。創造主に生命を与えられた主人の従僕です」
向こうが名乗ってきたので、オレ達もそれぞれ自己紹介をした。
天使······リシュエルはそれを聞いて首を傾げた。
「魔人族に人族? そっちの子は自動人形っぽいけど初めて見る型だし、どういう組み合わせなのかな?」
天使から見ても魔人族と人族が一緒にいるのは珍しいのかな?
どういう組み合わせと言われても、成り行きだとしか答えられないが。
「俺達のことの前にまずはこっちの質問に答えてもらおうか。お前は天使族で間違いねえんだな?」
「まあ、そうだね。ボクは天使階級はそれほど高くはないけど」
天使に階級なんてあるのか。
と言っても彼女以外の天使を見たことないので、比べる対象がいないが。
「えっと、リシュエルさんでいいんだよね? リシュエルさん以外の天使ってどこにいるの? 町の中はゴーレム以外見当たらないんだけど」
オレも質問してみた。
そもそもなんでリシュエルさんはカプセルの中で眠っていたのだろうか。
「ボク以外にいない? そんなはずはないんだけど。ボク達の住む天上都市フェーマには数百万の天使族がいるんだから」
この天使族の遺跡はフェーマというのか。
広い町だとは思ったけど、そこまでの規模だったのか。
「天上都市······か。残念ながら今はここは海の底だ。数百万の天使族がいたってのも、お前が眠る前の話だろ?」
バルフィーユが淡々と言う。
というか、ここって海の底なのかよ。ゴーレム達に転移魔法で連れて来られたから、オレも今初めて知ったぞ。
「ボクが眠る前······」
「見たところ、その入れ物は長期間休眠するための物だろ? お前がどれだけ眠ってたか知らねえがな」
バルフィーユの言葉にリシュエルさんの表情が強張る。なんだか話の方向がおかしくなってきたな。
「コールドスリープ装置、ボクはこれで眠って······でも、どうして······」
「もしかして、眠る前のことを覚えていないの?」
様子がおかしいリシュエルさんに疑問に思ったことを聞いてみた。
まあ、リシュエルさんの表情を見る限り覚えてないんだろう。
「半分記憶喪失ってわけか? ようやく天使族を見つけたってのに詳しいことは結局わからねえってことか」
やれやれと言わんばかりにバルフィーユがつぶやく。
まあリシュエルさん以外にも天使族がまだいるかもしれないし、進展がなかったわけでもないだろう。
「······ちょっと外まで案内してもらえるかな? ボク自身の目で町の様子を見てみたいんだ」
少し考えた後、リシュエルさんがそう言ってきた。
確かに町を見て回れば何か思い出すかもしれないな。けど、外はゴーレム達が見回ってるんだよな。
大丈夫だろうか?




