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「これって……」
「そうだよ! 旦那様」
「うんそうだよ! 僕達頑張ったんだ!」
「ほんのちょっとだけど。りゅー君の為に作ったんだよ!」
「「「黄色焦げてない卵焼き」」」
赤星があけた弁当箱には黄色い卵焼きが1つ。
まさか本物? でも、しかし、うーん……
「本物なのか?」
疑問符が思わずついてしまう。
アイツらが本当にこれを作れたならば……
「どうやら本物のようですね! 流さん最後の選択です! 私を選ぶか彼女達を選ぶか、間違えたらお仕置きです!」
「旦那様!」
「流君!」
「りゅー君!」
3人が俺に手を差し伸べる。
女髪さんは微笑みながら同じく手を差し伸べた。
3人は泣きそうな表情だが、一方の女髪さんは余裕の表情。
俺の視線は順々して回る思考。
最適解――?
幸せな生活――?
美味しい手料理――?
家事力――?
幼なじみ――?
玉の輿――?
最後に浮かんだ言葉は――俺はその気持ちのまま歩き出すだす取るべき手の元へ――。
「旦那様!」
「流君!」
「りゅー君!」
最後に頭に浮かんだ言葉は想い。
俺は自分の想いを取ったのだ。
どうやってこいつらは俺は嫌いに慣れない――
「悪いな――ひまわり、シズク、暁寄り道しちまったみたいだ」
「いいよ! だって私達を最後に選んでくれたんだから!」
「流君これで僕たちは君のお嫁さんだね! 名前で呼んでくれたんだから!」
「やっと帰ってきてくれたりゅー君遅いよ!」
「ところでこれは本物だような?」
これが偽者だったら流石の俺でも考え直したくなる。
「当然だよ旦那様! 何百個も失敗してやっと作れたんだよ!」
「そうだよ! これで僕たちのお年玉貯金はゼロさ! でも流君を取り返せるなら安いものさ!」
「りゅー君これは最後の一個で3人で作ったんだよ!」
言った何個の卵を無駄にしたというのか。
ここまでされたらこいつらを捨てられないな。
仕方ない俺が家事をすれば済む事か。
中々ハードな夫婦生活になりそうだぜ……
「むふふふふ、いい物を見せてもらいました! お三方の熱い愛は見ごたえがありました! 流石正史郎さんと私の孫です!」
「ごめんな女髪さんお仕置きはちゃんと受けるよ……」
「なにを言っているんです?」
「へっ?」
「だから言いましたのよね? 正解を選ばないとお仕置きと」
どういうことだ?
「まだわかりませんか……私を選ぶ事が不正解なのです! 私の足元を見てください!」
そういわれてみてみると女髪さんの足元には大穴が開いている。
俺の目の錯覚でないなら女髪さんは宙に浮いているように見えるのだが。
もし女髪さんの手を取るために近づいたら俺は穴に落ちていただろう。
「そういうことです。この会場の内装は全て幻、料理だけは本物ですけどね!」
「女髪さんは何者なの?」
「分かりませんか――分かりませんよね――貴方と最後に会ったのはまだ赤ちゃんの時ですからね!」
赤ちゃんの時? 親父が言ってったけとうことはまさか。
「婆ちゃんなの?」
「そうですよ! お婆ちゃんですよ!」
えっでも凄い若く見えるだけど――
「そりゃ神様ですからね!」
思考を読んできた。
本当の女神なのか?
「そうですよ! お三方私が流さんのお婆ちゃんですよろしくね!」
「そっか旦那様のお婆ちゃんかって――」
「言いたいことは分かりますよ! だから説明させてください」
「じゃあ聞こうか僕たちから流君を奪おうとした理由を」
「簡単に言えば貴方達がポンコツ過ぎたからです」
「どういうことりゅーお婆ちゃん?」
「私は正史郎さんの頼みで運命の相手と出会えるようにおぜん立てをしたのですが、貴方達がポンコツ過ぎて、いつまでたっても流さんを落としてくれないからです。あげく流さんが貴方達とは結婚は出来ないと、考え始めてしまったので仕方なかったのです」
「じゃあ私達って本当の旦那様の運命の相手なの?」
「そうです神の一柱である私が保証します」
「だってさ僕たちは本当の運命で結ばれてたんだって!」
俺の袖をつんつんしてくるシズクの顔はとてもうれしげだ。
「私も驚きました。まさかこの現代日本で複数の運命の相手を持ているとは、しかしこれで正史郎さんとの約束は果たしました。流さん質問です。このお三方は貴方の運命の相手ですか?」
その言葉に俺は噛み締めながら。
「俺の運命の相手だよ!」
「よろしい大正解です! この度のことは神界からたっぷり同胞たちと楽しませてもらいました。やはり人間の色恋沙汰は面白いです。この場と今までの鑑賞代金として我々の加護を皆さんに与えます! これであなた方の幸せは保証されました」
女髪さん――婆ちゃんの体が光に包まれ始める。
それは観客も同じだ。
つまりこの場の面々は俺ら以外はすべて神様ってことか。
「いっちゃうのお婆ちゃん?」
「私の眷属となって神界に向か入れられた正史郎さんが待っていますからね。一番星の弟か妹が生まれたら会いに行きますから、それまでにひ孫を作っておいてくださいよ」
「善処するよ」
「ふふ、1人で3人のお相手ができるようにしておきますから。沢山作って私達をびっくりさせてくださいね!」
「ではまたお会いしましょう」
ふっと婆ちゃんが消え去ると会場の光は消え、ボロボロのホールが姿を露わした。
爺ちゃん確かに婆ちゃん巨乳美人だった。
「いっちゃったね! 旦那様!」
「僕もよくわからないけど終わったんだね!」
「これで私達とりゅー君はずっと一緒だね!」
「ああそうだな……そうだ最後に」
弁当箱の卵焼きを口に放り込む。
じゃり、殻の異物感がする。
酸っぱくて甘い。
うん。
「不味い」
「旦那様酷ーい!」
「僕達頑張ったのに!」
「りゅー君めっ! ここは美味しいって言うんだよ!」
「まて、お前ら確かに不味いが、実に心に響く味だ」
「旦那様泣いてるの?」
「泣いてない。ちょっと刺激が強いだけだ」
「ふふん、泣くほど美味しんだね! 僕も頑張ったかいがったよ!」
「だから泣いてないって!」
「りゅー君いい子いい子、私たちはどこにもいかないよ! これからずっとね!」
暁は俺を抱き寄せ頭を撫でる。
涙がとめどなく溢れ、実に安心する。
俺は本当にこいつらが大好きなんだな。
俺が間違っていた2度と離すものかこいつらの手を――
明日か明後日で完結予定




