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番外編:多摩の土手と、四葉の約束

虹色のカーテンを出て、土手の上から叫んだあの日から、私は少しだけ強くなった。

あの意地悪な男の子が転校する最後の日、私は彼を追いかけて「私は、あんたなんか大嫌いだ」と一言だけ叫んで逃げ帰った。それから家族に何を言われても、「私は私だ」と心の中で呟いて受け流すことを覚えた。今はまだ世話になっているけれど、いつか自分で生活できるようになったら出ていけばいい。そう思えば、心に少し余裕が持てた。

小学校は4年生になると、クラス替えでいじめがだいぶ解消された。前のクラスからの持ち上がりでしつこく言ってくる子もいたけれど、反応せずに聞こえないふりをしていたら、そのうち何も言わなくなった。その後、仲の良い友達のグループにも入れてもらい、小学校、中学校、高校、大学と、なんとか自分の足で過ごしていった。その間も嫌なことがあり、何度か四葉のクローバーを見つめてあの虹色のカーテンを探したくなったけれど、そのたびに自分を奮い立たせてやり過ごした。

大人になり、社会に出れば辛いこともたくさんあった。忙しい日々に追われる中で、あの頃の痛みや悔しさは、少しずつ記憶の彼方へ薄れていった。あの時は立ち直れないかと思っていたけれど、あの日々は、ヴォータに寄り添ってもらうことで少しずつ私を強くしてくれていたのだと思う。

気がつけば、四葉のクローバーが挟まった「幸福行きの切符」はどこかへ消えていた。子供の頃の夢だったのかな、と懐かしく思うだけの日々。私は自立し、一人暮らしをしていた。

ある日、掃除中に古い宝箱を見つけた。その底から、色あせた「幸福行きの切符」が出てきた。あれは、夢ではなかったのだ。

仕事が休みの日に、私はかつて住んでいた団地へと向かった。家族も引っ越し、もう誰もいない場所。私はあの日と同じように、あの土手へと登った。

すると、ゆらゆらと揺れる虹色のカーテンが見えた。そこをくぐると、時の流れを感じさせない空間が広がり、目の前にはあの頃のままのヴォータがいた。

ふと横を見ると、そこには小さな頃の私がいた。背を丸め、体育座りで頭を膝に埋めている。私は思わずその少女の元へ駆け寄り、強く抱きしめた。少女は驚いて顔を上げたけれど、私は彼女の耳元で告げた。

「あなたはあなただから……あなたの一生をみんなが見てくれるわけじゃない。好きなだけ言いたいこと言わせればいいのよ。ほっとけばいいのよ。あなたはあなたのままで良い。自信を持って生きていいのよ。少しの間、休んでいいんだよ」

私が抱きしめ続けると、少女の表情が少しずつ穏やかになっていった。私はヴォータに向き直り、静かに伝えた。

「今でも自分が大嫌いだし、自信なんて全然ない。でも、そんな私でもそのままでいいんだよね。もうわたしは大丈夫。負けないよ。弱ってしまう時もあるけれど、そんなときでも、もう四葉のクローバーがなくても立ち直れるようになったよ」

私はヴォータに微笑みかけ、静かに光のカーテンをくぐって、元の世界へと帰っていった。


(今後の展開について)

本編および番外編はこれで一区切りとなりますが、気まぐれでまた書き足すかもしれません。もし気が向いたら、あの時、"私"を傷つけていた家族たち――兄の葛藤、妹の抱えていたもの、そして母の複雑な思い――についても、いつか書いてみたいと思っています。お父さんのことはうまく思いつきませんが、もし続きを書くことがあれば、また見守っていただければ幸いです。

今まで支えてくださり、ありがとうございました。またいつか、どこかでお会いしましょう!


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