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第13章:彼は一体何者だ?

轟音が鳴り響き、鼓膜を打ちつけた。


巨人の頭部は粉々に砕け散り、瞬きする間に消滅した。引き千切られた首の残骸から、黒煙と共に肉片と骨が勢いよく噴き出す。巨体は制御を失い、後ろによろめいた。大剣が手から離れ、足元の大地を揺るがす重い音を立てて地面に叩きつけられた。


首の断面からドス黒い血が噴水のように溢れ出し、周囲の地面を生臭い血溜まりに変えていく。


「今だ! 走れ!」


俺は、その凄惨な光景に釘付けになっているディナの手を引き、叫んだ。


ガレンは崩れ落ちる巨人の足元から転がり出て、ふらつきながら立ち上がった。顔は泥と血に塗れている。俺の仕業を確認しようと振り返ることはしなかった。これが唯一の逃走のチャンスだと理解しているからだ。


だが、ゴブリンロードの巨体が完全に倒れる前に、その背後から別の影が飛び出した。


速い。異常に速い。


一匹じゃない。三匹だ。


ゴブリンロードよりは小さいが、通常のゴブリンよりは大きい。継ぎ接ぎだらけのローブを纏い、小さな頭蓋骨で飾られた骨の杖を持っている。


『ゴブリンシャーマン』。


奴らは膝をついたばかりのロードの肩や頭の残骸の上に立ち、禍々しい紫色の光を宿した瞳で俺たちを見下ろした。


詠唱を始める。その声は黒板を爪で引っ掻くような音で、耳障りだ。


「嘘でしょ……」ディナの顔から血の気が引く。「あいつら……魔法を使うわ!」


奴らの杖の先に、小さな紫色の魔法陣が浮かび上がる。


『ヒュン!』


三つの紫色の火の玉が俺たちに向かって放たれた。


「危ない!」


俺はディナを横に突き飛ばした。ガレンも別の方向へ跳ぶ。


『ドガァァン!』


一秒前まで俺たちがいた地面に火の玉が着弾し、紫色の炎が爆発的に燃え上がり、草を一瞬で黒い灰に変えた。腐った卵のような硫黄の臭いが広がる。


「止まるな! 森へ走れ!」ガレンが叫び、手を振る。


俺たちは走った。だが、ゴブリンシャーマンたちはそう簡単に逃がしてはくれない。奴らが命令を叫ぶと、フラッシュバンで散り散りになっていた何十匹もの通常のゴブリンたちが正気を取り戻し始めた。頭を振り、まだ涙目になりながらも、指導者が倒された怒りで闘志を再燃させている。


「オッエッロ! コッロッセ! クッエ!」


粗野なゴブリン語の叫びが谷中に響き渡る。


数百の小さな足が俺たちを追いかけ始めた。その足音は、迫り来る土砂崩れの轟音のようだ。


俺たちは森を突き進み、肌を切り裂く藪を強引に突破した。呼吸をするたびに喉が焼けるようだ。足が鉛のように重い。だが止まれば死ぬ。


ガレンが先頭を走り、その巨体で藪をなぎ倒し、枝をへし折って道を切り開く。俺は真ん中で、時折振り返っては追ってくる緑の群れに向かって闇雲に発砲した。


『プシュッ! プシュッ!』


無駄だ。数が多すぎる。一匹倒せば、三匹がその穴を埋める。


「追いつかれる!」パニックになって叫ぶ。


俺たちと先頭集団との距離がどんどん縮まっていく。奴らのシューシューという呼吸音が聞こえ、悪臭が鼻をつく。


突然、一本の槍が頭上を掠め、目の前の木の幹に突き刺さった。


「前!」ディナが叫ぶ。


前方、木々の陰から別のゴブリンの集団が現れた。パトロール隊が戻ってきたのだ。挟まれた。前門の狼、後門の虎だ。


「クソッたれ!」ガレンが悪態をつく。彼は立ち止まり、振り返り、ひび割れた剣を構えた。「戦うしかない!」


「ダメ!」ディナが一歩前に出た。普段の穏やかな表情は消え、燃えるような決意が満ちている。彼女は木の杖を高く掲げた。先端の青い宝石が強く輝き、闇の中で眩い光を放つ。


「ここで死なせはしないわ!」


彼女は杖を回し、空中に複雑な図形を描く。青いマナが体から溢れ出し、光る水蒸気のように視認できるほど濃くなる。


「谷を守りし風よ、我が呼びかけに応えよ! 起き上がり、不落の壁となれ!」


詠唱は速く、力強い。


「イージス・オブ・ウインド!(風の聖盾)」


『ゴオォォォォッ!!!』


突如として、俺たちの周囲に竜巻が発生した。ただの風じゃない、高速で回転する風の壁が、透明なドームとなって俺たち三人を取り囲む。


前後から突っ込んできたゴブリンたちが、風の壁に激突した。


『バチン! バチン!』


見えない石壁にぶつかったかのように弾き飛ばされる。投げつけられた槍や矢は、ディナの風の渦に阻まれ、四方八方へ弾き返された。


「すげえよ、ディナ!」驚嘆して叫ぶ。


ディナは答えない。歯を食いしばり、玉のような汗を流している。杖を握る手が激しく震えている。鼻から血が滴り落ちた――魔力の過剰使用の代償だ。


「長くは……持たないわ……」彼女は喘ぐ。「急いで……トムを探して!」


風の壁はディナの歩みに合わせて移動する。俺たちはその「泡」のような結界の中で動き、苛立つゴブリンの包囲網を突破していく。奴らは叩き、引っ掻き、突き刺そうとするが、腕を折られて弾き返されるだけだ。


トムを隠した大木へ向かって走る。


「トム! トム!! どこだ!」ガレンが叫ぶ。


木の根の陰で、黒い塊が動いた。トムが俺の黒いポンチョを跳ね除け、周囲を取り囲む魔物の群れを見て顔面蒼白になっている。


「みんな……生きてたのか?」信じられないというように尋ねる。


「無駄口叩くな! 行くぞ!」ガレンはトムをひっ掴み、米袋のように左肩に担ぎ上げた。右手にはまだ剣を握ったままだ。


「ディナ、今だ!」ガレンが命じる。


ディナは弱々しく頷いた。


「もう少しだけ……耐えて……」


彼女は杖を地面に突き立てた。


「ウインド・ブラスト!(爆風)」


俺たちを守っていた風の壁が、突如として外側へ弾け飛んだ。


『ドォォォォォン!』


凄まじい風の衝撃波が全方位を薙ぎ払い、包囲していた数十匹のゴブリンを木々に叩きつけた。目の前の道が一瞬だけ大きく開ける。


「走れぇぇぇ!!!」


俺たちは走った。今度は全力で、一度も振り返ることなく。


最後の魔法を放った後、ディナは倒れそうになったが、俺が腕を掴んで引っ張り、無理やり走らせた。


「気絶すんなよ、お姉ちゃん魔術師!」俺は叫んで発破をかける。


ディナは荒い息の下で弱々しく微笑んだ。「誰が……お姉ちゃんよ……」


俺たちは地獄の谷から離れるように、森の中を駆け抜けた。ゴブリンたちの怒号は背後遠くに遠のき、必死の逃走速度にはついてこれなかった。


止まらなかった。一時間。二時間。肺が破裂しそうで、足の感覚がなくなっても動き続けた。ガレンはトムという重荷を背負い、肩を負傷していながらも、疲れ知らずの機械のように走り続けた。


ついに、追跡の音が完全に聞こえなくなったのを確認してから、巣から遠く離れた浅い川のほとりで俺たちは倒れ込んだ。


ガレンはトムを慎重に苔むした岩の上に下ろすと、自分も尻餅をつき、チェーンソーのような音を立てて呼吸した。ディナは地面に大の字になり、胸を激しく上下させ、目を閉じている。


俺は膝に手をついて前屈みになり、できるだけ多くの酸素を取り込もうとした。頭がクラクラする。


「どうなったんだ……」トムが弱々しい声で尋ねた。疲れ切った俺たち三人の顔を交互に見つめ、答えを探している。


「作戦は?」


ガレンが笑った。勝利の笑いじゃない。しゃがれた、乾いた、皮肉に満ちた笑いだ。彼は葉の隙間から、夜明けの光で明るくなり始めた空を見上げた。


「作戦だと?」ガレンは手の甲で頬にこびりついた乾いた血を拭いながら繰り返した。


「大失敗さ、トム。完全にな」


ガレンは長く息を吐き、俺とディナをちらりと見て、唇に苦い笑みを浮かべた。


「ゴブリンの全滅には失敗した。巣の掃討もできなかった。あろうことか、あのクソ忌々しいシャーマンどもを起こしちまった」


「だがな……」彼はトムの肩を軽く叩いた。その目には微かな満足の色があった。「リーダーを殺すことには成功した。あのゴブリンロードは……もう死んだ」


一瞬の沈黙。俺は一人一人の顔を見た。汚れ、疲れ、傷ついた顔たち。


「生きてる」俺は低く呟き、今やひどく重く感じるグロックを見つめた。


横たわっているディナを見る。呼吸は落ち着き始めている。彼女が俺たちを救ったのだ。あの防護魔法がなければ、包囲された時点で死んでいた。


突然、大きな影が視界を覆った。ガレンが重い足取りで俺に近づいてきた。


『バチン!』


強烈な平手打ちが右頬に飛んできた。頭が横に弾かれ、熱い痛みが顔に広がる。


「このクソガキが!」ガレンの怒鳴り声が炸裂した。顔は怒りと疲労で真っ赤だ。「隠密にやれと言っただろうが! なんであんな大声出したんだ!? あの場でお前が俺たち全員を殺しかけたんだぞ!」


俺はうつむき、頬の痛みを噛み締めた。反論しなかった。できなかった。彼が正しい。俺の感情、俺の叫び、俺の軽率さが……俺たちの死因になるところだった。


「やめてよ、ガレン!」ディナが残りの力を振り絞って起き上がり、盾のように俺たちの間に立った。


「この子はまだ子供なのよ! あの小屋の惨状を見たら、ああいう反応をするのは当然でしょ! 私だって……もし初めてあんな残酷な光景を見たら、同じことをしたわ。あなただって昔はそうだったじゃない!」


ディナはガレンを睨みつけた。「それに、あの子のおかげでもあるのよ、ゴブリンロードから助かったのは」


ガレンは鼻を荒く鳴らし、もう一度俺を睨みつけてから顔を背けた。「お前は甘やかしすぎだ、ディナ」


それだけ言うと、ガレンは背を向け、森の奥へと歩いていった。凹み、血にまみれた銀の鎧が歩くたびに軋んだ音を立てる。


ディナは遠ざかるガレンの背中を悲しげに見つめ、振り返って俺の肩に優しく手を置いた。


「気にしないで」彼女は囁いた。


「口は悪くて乱暴だけど、ガレンは本当はあなたのことを心配してるのよ、リアム」


「うん、分かってる」小さく答える。不思議なことに、あの平手打ちで少し救われた気がした。相応の罰だった。


「大事なのはみんな無事だったことよ。怪我はない?」彼女は気遣うモードに戻って尋ねた。


「気にかけてくれてありがとう、ディナ。あんたは本当にいい人だな」心から言い、痛む口角を上げて笑おうとした。「俺……ちょっと川へ行ってくる。水が飲みたいんだ」


俺は水音を頼りに歩き出し、二人を残してその場を離れた。


……


「本当は……中で何があったんだ?」トムが、疲れ果てて隣に座り込んだディナに小声で尋ねた。


ディナはため息をつき、全てを話した。あの女性たちのこと、ガレンの決断、リアムの叫び、そしてゴブリンロードとの戦いについて。


トムは黙って聞いていたが、顔色は暗かった。「そうか……ガレンがあんなに怒るのも無理はないな。あまりに……酷な状況だ」


朝の森の音だけが響く沈黙が、二人の間に漂った。


「なあ、ディナ」トムが沈黙を破り、リアムが消えた川の方角を見つめた。「お前……あのリアム・アシュフォードって子供、本当は何者だと思う?」


ディナが振り返り、少し眉をひそめた。


「突然森の中に現れて俺たちを救った」トムは分析を続ける。「見たこともない奇妙な服を着て、弓のような不思議な武器を使う。リアムは森に隔離されて住んでいたと言ったが、俺が見た限り……森の住人には見えない」


「この島の子供なら誰でも知ってるような基礎的なことを聞いてきた」トムは付け加えた。「それに話し方、反応の仕方……まるで全てを初めて体験するかのようだった。あいつはまるで……この世界のことを何も知らない異邦人のようだ」


トムは木々の隙間から差し込む朝日を見つめた。「奇妙だと思わないか?」


ディナは薄く微笑み、静かに首を振った。「誰だって、関係ないじゃない?」


トムは少し驚いてディナを見た。


「リアムはダイアウルフの包囲から私たちを救ってくれた」ディナは優しく言った。「自分のアイテムであなたの出血を止めてくれた。高価なダイアウルフの毛皮を見返りなしでくれた。そしてさっき……私とガレンをゴブリンロードから守ってくれた」


ディナは川の方を見つめる。その眼差しは温かい。「私は思うの。素性がどうとか、どこから来たとか、そんなことは重要じゃないって。彼はもう私たちに誠実さを示してくれたわ。今は、私たちの仲間よ」


彼女はトムに向き直った。「たぶん、話したくない事情があるのよ。仲間として、それを尊重してあげるべきだわ。彼自身の準備ができたら話してくれるはずよ。もし話したくないなら……それでもいいじゃない。誰にだって秘密はあるもの。私たちにだってね」


朝日に照らされたディナの横顔は、輝いて見え、その言葉には嘘偽りがなかった。


トムはそれを見て、ついに観念したように微笑んだ。「ああ、お前の言う通りだな」


「リアムの言った通りだ。お前は本当にお人好しだよ、ディナ」

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