第24話 罪状に相応しい処遇だって?
「国王陛下より宣旨である。心して聞くように。」
国王の宣旨を手にした兵士は、高らかに声を張った。狭い地下室には絶対に不必要なその大声は、もちろん石造りの壁に反響して俺の鼓膜を直撃する。
そのあまりの大きさたるや、俺ははっきりと宣旨の内容を聞き取れなかったほど。もちろん、その宣旨の文章がやたらと回りくどくて小難しい言葉が並び立てられていたのも原因にあるかもしれないが――
でも、それでも断片的に聞こえてくる言葉の中から推測して言わんとすることは分かった。
俺は今からセバスト騎士団長殺害事件の当事者として国王の御前に立たされるのだ。そしてその後、罪状に相応しい処遇を言い渡されるらしい。
って、ちょっと待て。俺は、爺さんの「悪いようにはならん」の一言で、完全に気を抜いてたよ。
罪状に相応しい処遇だって?
もちろん俺が犯した罪は騎士団長の父親を殺したこと――だったらそんなもの処刑に決まっているじゃないか!
目の前には、俺をこの地下室から連れ出そうと数人の兵士が待ち構えている。こんな状況じゃもう逃げることは出来ない。
それに気がついた瞬間。俺は膝から力が抜けて、思わず床に尻もちをついた。
「ノエル=マイヤー殿。参られよ。」
こんな絶望的な状況で兵士の声は罪人に向けるものとは思えないほど柔らかかった。これから死を迎える者に対しての彼なりの温情であろうか……
だが、俺にはそんな違和感を気にする余裕は無い。
俺は二人の兵士に抱えられるようにして階段を上がり、地下室の外に出る。
何日ぶりの太陽だろうか、眩しい光が目に焼き付く。そしてこの太陽こそが俺の見納めの太陽になるのだ。処刑が決まれば執行までは多分地下牢だろう――そう思うと俺は名残惜しむように辺りの景色に視線を移した。
当然そこには馴染みのない風景が広がっている。しかし、俺はこの場所が何処だかを知っている気がした。
何より目にする建物一つ一つがあまりにも特徴的だった。この王都では珍しい漆喰に固められた白い壁――そのまま空を見上げてみれば天を突き刺す様に尖った屋根。そして建物を囲むように巡らされた城壁。
もちろん俺は外からしか見たことは無いけれど、こんな建物はこの王都に一箇所しか無い。
「ここが王城以外のどこだと言うんだ……。ワイズ、お前はいったい何者なんだよ……」
ワイズに連れられて匿われたこの場所が、まさか王城の中だなんてさすがに冗談が過ぎるではないか。
俺はこれから死ぬというのに、あまりにも予想外の出来事で俺は不覚にも笑ってしまった。
数人の兵士が俺の前に並び、何か儀式めいた様相でゆっくりと歩き出す。俺はその後ろに続く形で付き従わされた。
廊下を進むにつれ、いつの間にか廊下には赤い絨毯が敷かれていた。王城など入るのも見るのも初めてだったが、それでも玉座の間が近づいてくるのがよく分かった。
やがて、廊下の脇に立つ人々の視線が俺に集まっていることに気づく。もちろん王城に出入り出来るのだから彼らはエーデルの貴族なのだろう。
彼らは、この薄汚れた衣服に黒い髪をした俺に――この王都を騒がせた騎士団長殺しの容疑者に興味津々なのだ。
そんな、まるで見世物の様に進んで行く行進もやがて、巨大な扉の前にたどり着く。
扉の両端には、槍を構えた衛兵が二人。
行列の中から一人の兵士が前に進み――声を張る。
「ノエル=マイヤー殿をお連れしました!」
その声と同時に、巨大な扉が音もなくゆっくりと開いた。




