月光に浮かぶ
空には美しい月が黄金色の輝きを放っている。
ススキの原に一人で佇む陽菜は、キョロキョロと周囲を見渡した。
月明かりしか光源は無いけれど、浮かび上がるのは、いつもの見慣れた場所。祖母と一緒に来た、ススキの原。
「ホントに、帰ってきたのかな……」
まだ、帰って来たという確証が持てない。
(とりあえず、家に向かって歩いてみよう)
カサカサとススキを掻き分け、ススキの原を外に向かって進んで行く。
ススキの原から出ると、突然パッと光が当てられる。眩しくて、顔を背けながら目をつむった。
「陽菜だ!」
「陽菜ぁ!」
父と母の声がしたかと思うと、思い切り抱きすくめられる。
「あぁ、陽菜ちゃん……陽菜ちゃん! あぁ、よかった。無事でよかったッ!」
「おばあちゃん?」
抱きすくめている人物は、祖母だった。
懐中電灯を手にした両親や、近所の人達も集まって来る。
「まったく、アンタって子は! おばあちゃんに心配かけちゃダメじゃない」
「ここも、何度も捜したんだぞ。どこで、なにをしてたんだ?」
泣いている祖母に何度も背中を撫でられながら、陽菜は空を見上げた。
今、ツクヨミやセツ達は、宴の片付け中だろうか。そんなことを考えながら、問い詰めてくる両親に「うん……」と生返事をする。
「月で……お餅をついてきたの」
それが、陽菜が経験してきた事実だ。他に、なにも言いようがない。
案の定、大人達は陽菜の答えにザワついている。
空にポッカリと浮かぶ明るい月は、冷たく優しい光で夜の風景と、陽菜が見つかったことに安堵する大人達の表情を……ぼんやり浮かび上がらせていた。
読んでくださり、ありがとうございます!
中秋の名月編は、これにて終幕。
次から、お正月編となります。
出てくるのは、もちろん年神様です(*^^*)