普通とは一体
街を出た海斗達は馬車の速度に合わせてゆっくりと走っている。
商業都市のキャラバンや冒険者達は海斗達をチラ見しているが声を掛けてはこない
まあ原因は乗り物の所為だと思うんだけどね
キックボードにバイクという異様な組み合わせに疑問を持つのだろう
まだまだ学園都市の中でしか流行っていないからね。こんな奇抜な移動手段なんて初めてだと思う
ちなみに先頭はリーダーの冒険者グループ、続いて商業都市のキャラバン、その後ろに3人組の冒険者、そして街の商人達が着いてそこに海斗達が混ざる形になっている。
最後に後方を4人組の冒険者が警戒しながら着いて来ていた
「なんかあの速度で走っていたからちょっと物足りないな」
ヨシユキはいつもより遅い速度に飽き飽きしている
それは仕方ない。今は小走りくらいの速度だけどキックボードは最速で40km/sちょっと出る
流石にぶっちぎっていくわけにもいかないので我慢してもらおう
「右前方、ゴブリン4匹来るよ」
海斗は地図を開き4キロで監視しており1キロ圏内に入ったゴブリンがいたのでレオン達に注意を促した
少々大きめの声だったので街の商人達と前後の冒険者に聞こえたようだ。皆んな首を傾げて海斗の言った方向を見ている
「おい!適当な事言うんじゃねぇ!集中力が乱れるだろうが!」
後方の冒険者が怒鳴ってきた。
周りの商人達も怪訝な顔をしている
そりゃ1キロ先のゴブリンなんて見えるはずないでしょ。どんだけ障害物があると思ってるんだろうか?
「海斗、普通の冒険者は魔物をちゃんと視認しないと行動に移さないんだ。見えない魔物に警戒はしない」
あ!そうだった。みんな普通に対応してたから慣れちゃってたよ。失敗失敗
気を取り直して進んでいると海斗の言った通り右前方からゴブリンが4匹現れてきた
「なっ!?ゴブリンだと!?」
「・・本当にきやがった」
「冗談だろ!?」
冒険者や商人達は驚き海斗を見てくる
いや、それよりも早く退治しないの?
「海斗、普通の冒険者はもっと近寄ってくるまで警戒して他に魔物がいないか確認するんだ。そして護衛対象を挟むようにして討伐するのが当たり前なんだよ」
レオンが説明をしてくれるんだけど、何で普通を強調してくるのかな?
魔物は先頭に居たおっさん組が倒した
そしてその間もレオンの普通の冒険者とはを教えてくる
そんなに非常識では無いと思うよ?ただ今まで他の人が護衛している所をちゃんと見た事無いだけだし
海斗が膨れっ面で聞いていると後ろに配置していた冒険者が1人こちらにやってくる
「おい、お前なんでゴブリンが来るの分かった?」
「え?分かりませんでした?すいません、何も言ってなかったので気付いていたかと思ってました
俺は索敵担当してるのでいつも通りに仲間に声掛けただけなんですけど」
「ぐっ!くそっ!調子に乗るなよ!」
顔を真っ赤にさせて元の位置に帰って行った
「おいおい海斗、お前彼等と揉めないっていう程じゃなかったか?」
レオンが苦笑いしながら語りかけてくる
「いや、その程だったんだけどね。レオン達をバカにされたままでいるなんて黙ってはいられないでしょ」
「そうか・・サンキューな」
レオンは照れながら少し離れた。こっちも恥ずかしくなるじゃんか
その後魔物が出る事も無く、日が傾いてきたので野宿の準備を始める
商業都市のキャラバンからはマツキヨさんが使っていたコーンの魔物避けを出してきた
「おい!」
海斗が振り返るとリーダーのおっさんが立っていた
「飯は自分達で用意しろ。そこら辺に生えてるのを食うんじゃねーぞ。もし足りないなら言ってこい!少しなら分けてやる。だけどあんまり食べすぎんじゃねーぞ!腹いっぱいだと集中力がもたないからな
それから見張りの順番だが、お前らガキに見張らせるのは安心できねぇ
俺の仲間を1人入れてやる。そしてお前らが最初の見張りだ!いいな、絶対に無理をせずに知らせろよ!足手まといなんだからな!」
すげーぶっきらぼうに言って行ったけど、これって
「あの海斗さん、あの人もしかして私達の事心配しているんですかね?」
スミレもそう思うって事は間違いないようだ
いや、不器用過ぎるだろう。いらんわ、あんなツンデレ
他の冒険者はあからさまに疎んでいたのに、あのおっさんは面倒見の良い気質なんだろうね
意外な一面を見てしまった。
海斗は保存から食材と調理器具を取り出してご飯の支度を行う
今日は唐揚げとチキン南蛮だ。
メアとスミレにはご飯を炊いてもらい海斗はひたすら唐揚げを揚げる。ちなみにレオンとヨシユキは邪魔なので隅っこで剣の練習をしていた
揚げ物の良い匂いが漂ってきて他の冒険者も商人達もこちらに視線を送ってくる
海斗はそれを無視し、出来上がった唐揚げとチキン南蛮を大皿4つに分けて2皿を海斗達で、残りの2皿を街の商人達に渡した
「良いのかい?」
「ええ、もちろんですよ。美味しいものは分け合わないと」
商人達は喜んで受け取り美味いと感想を漏らしていた
商業都市の商人と冒険者達はその様子を羨ましそうに見ているんだけど無いからね
お腹も膨れ最初の見張りは海斗達だ
おっさんの組から1人男性が不機嫌そうな感じでやって来る
「チッ、俺がお前らと見張りになった。が、いいか!俺の邪魔だけはすんなよ!」
離れた所に行き、明らかに海斗達を拒絶している
「うーん、良い奴っぽいのはあのおっさんだけなのかな」
ヨシユキは呆れたように冒険者を見ていた
海斗達は気を取り直して見張りに着く。と、言っても海斗が地図を開き蒼鳥と黒猫を出して監視をするだけだ。
だからレオン達もある程度気を抜いて固まっている
側からはやる気のない集団に見えるだろう
当然見張りをしていた冒険者はその様子を見て舌打ちし、イライラしていた
「ウルフ2匹来るよ」
少し時間が経った頃、1キロ圏内にウルフが入って来た
海斗とメアが準備を始める。眉間にシワを寄せながらその様子を見ている冒険者
「おい!ウルフなんて居ないだろ!ふざけた事言うな!」
海斗は説明するのが面倒臭くなり無視を決め込んだ
メアに方向を指示し、弓を構えさせる。
メアの目にはゴツいゴーグルが装着されていた
海斗がショッピングアプリで倍率付きの暗視ゴーグルが売っているのを見つけ、衝動買いをしてしまい、夜中遊んでいる所を皆んなに見つけられ今では夜の監視の時に交互に使っている。
そして海斗の合図で2回矢を放った
海斗の合図でハンディライトを持ったレオンとヨシユキがその方向へと歩いて行き、暫くすると矢の刺さったウルフを2匹持って帰って来た
冒険者はその一連の作業を口を開けて呆然と見ているだけだった
音も無ければ目視も出来ない。ウルフが居ると言われても信じられなかった
なのに海斗達は宣言通り仕留めている
「お、お前、昼間といい今も何であそこに魔物が居ると分かったんだ?」
「え?見張りをするならせめて1km圏内の魔物の動きを警戒するのは普通でしょう?」
「なっ!?1キロ・・しかもふ、普通だ・・と」
冒険者の中にあった今までの経験と自信がグラリと揺れていた




