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【36】 2章の4 獅子

※今日から5日連続で、毎日1話投稿します!



「だからよォ? オレらの貴重な時間を割いて、ご丁寧に説明してやったんだ。こいつぁ、もはや『労働』だぜ? それだけで金を貰ったってイイくらいだとは……思わねぇか? んん?」


 シャク男が、とても腹の立つ顔をしながら上から目線で物を言う。と・て・も! 腹の立つ顔で!

 尖ったアゴをこっちに突き出し過ぎなんだよッ! ……もしや刺す気か? 銃刀法違反で捕まっとけッ! お巡りさーん、ここに文字通り凶器を身に着けた男が居ますッ!


 内心であらん限りの罵倒をシャク男に浴びせつつ、どうやって否定してやろうかと考えを巡らせていたのだが。

 俺が口を出すより先に、シャク男の言葉を否定した人間が居た。

 ……誰かって? そりゃあ、みんな大好きレイフェちゃんですッ!


「トラブルの解決の為に、当事者同士が話し合うのは当然の事。労働でも何でもない」

「……ァあ?」


 冷静かつ無駄の無い見事な反論だが、シャク男はお気に召さないらしい。これだから頭の回転の悪い男はダメなんだ……イケメンは嫌いだが、バカで自分勝手なオッサンはもっと嫌いだねッ!


 シャク男はレイフェちゃんの言った内容を考えているのか、少し黙っていたが……言葉の反芻が終わったのか、再度口を開いた。もうずっと閉じとけばいいと思うよッ!


「んなこたぁ、どうでもいいんだよ……とりあえずそこの嬢ちゃんが酒場と宿屋で一晩(・・)、オレ達の相手してくれるんなら、勘弁してやっても良いぜ?」


 鼻の下を伸ばしたシャク男が、こちら側に目線を向けている。見ているのは……エルネたんの『神』か。

 ……くそう、その気持ちも分からんでもない。が、キサマは論外だ! ただでさえ長いアゴなのに、鼻の下を伸ばしたら顔面の長さ変わってんだろうが! 鏡見て出直してこいッ! もちろん、出直してきても門前払いの上に通報だッ!


 立ち位置を変えて、シャク男の目線がエルネたんに届かないように遮る。

 すぐに不満そうな顔になったシャク男に、後ろから別の男。軽装の長髪が声を掛けていた。


「(お、おい、ガーリー! まだやるのかよ?)」

「(良いから黙って見てろよ。お前らだって、良い目がみたいだろ?)」


「(そりゃあ……そうだが……)」


 小声でろくでもない相談をする男共だが。さっきから内容が全部丸聞こえ(・・・・・・)なんだよな……チラリと横目でレイフェちゃんの様子を伺うが……ん? 特に反応しては……いないな?

 ……昨日から、もしかしてとは思ってたが……これは連中の小声が無駄にデカイ訳じゃなくて、『メルカ()』の『耳』が異常に良くなってる……っぽいか? いや、まだ確定ではないか。


 と、一瞬メルカ(自分)の能力に関して気になる事を考えた時に。


「(──お、じゃあ、どうせだからそこのドワーフの姉ちゃんも混ぜちまうか)」


 こ、コイツ……レイフェちゃんまで手を出す気かよッ!?

 YESロリータ、NOタッチッ! の紳士協定を知らんのかッ!? 男の風上にも置けんヤツめ……物理的に破砕して、もがねばならん類の連中であったか……お巡りさんを呼んで来ないとッ! あ、いや〈異世界(こっち)〉だと『衛兵』さんか。さっきも外を巡回してたし、探せば見つかるだろ。


 ……あ、でも下手にこの場を離れるのもマズイか? 俺が探しにこの場を離れてる間に、二人が連れ去られでもしたら……後悔してもしきれん。レイフェちゃんをぺろぺろするのも、エルネたんをもみもみするのも、俺が最初だ! ……ったらいいなッ!


 とりあえず、汚らわしいケダモノ共の視線から二人を守るべく、俺は前に進み出た。すると──


「……チビのクセに、さっきから邪魔なヤロウだな? 後、いい加減その鬱陶しいフードを外し(・・・・・・・・・・)て喋ったらどうなんだ(・・・・・・・・・・)?」


 意外と素早い動きで、俺の頭付近に手を伸ばしてきたシャク男に対して。動きが見えていた俺は、触れられてたまるかと上半身を後ろにスウェーして汚い手をかわした……のだが。


 バサリ


 自分自身の動作で、かぶっていたフードが外れてしまったのは計算外だった。

 フードで若干暗い視界に慣れていた俺は、天窓から差し込む光に少しだけ目が眩む。


 僅かな明順応の時間を経て、元に戻った俺の視界では。

 見える範囲の人間全てが、概ね目を丸くして口を大きく開いて停止しているのが分かった。


 ……フ、『メルカ()』があまりにも美しすぎるからか。仕方ないねッ!


 俺が自画自賛していると、いち早く停止(フリーズ)がとけたのかシャク男が口を開きながら近付いてきた。


「(……へ、へへッ! なんだよ……こんな上等なのまで居たのかよ……ツイてるぜ)」


 表情といい、口調といい、かなり気持ち悪かったので、俺も思わず手を前に出して身構える。


「……なんだぁ? か弱い『エルフ』のネーチャンが、まさか『体術』の真似事か? だったら、俺が手取り足取り指導してやるよ!」


 俺の構えを見たシャク男は、無造作にこちらの手を掴もうと腕を伸ばしてきやがった……これ、もう『正当防衛』って事で良いよな? 良いよね? ……オッケー! 俺議会の満場一致で可決されました! 汚ねぇ手で触ろうとしてんじゃねぇぞ、っと!


 シャク男が伸ばしてきた手の外側から、腕に装備してる〈鉤手甲〉の外側を肩と肘の回転で弾くように──


 パシンッ


「──オイオイ、穏やかじゃあねぇなぁ?」

「イデデデデデッ!?」


 ──ブチ当ててやろうとしたんだが……『誰か』に、受け止められた?


 格闘技オタのミツグくんから教えて貰った、護身術の一環の知識だとか言う『回し受けモドキ』で、手痛く弾いてやろうと思った俺の動きを止めていたのは。

 俺の横合いから伸ばされた、『褐色のぶっとい腕』だった。


 腕は2本で、片方は俺の腕を〈鉤手甲〉の上から掴んで止め、もう一本はシャク男の腕を掴んで捻り上げていた。シャク男が悲鳴を上げているのは、捻られた腕が痛いかららしい……まぁ、結果的にザマァミロ、と言う事で。


 それはさておき、この『腕』の持ち主は誰だ?


 『腕』に沿って視線を動かしていくと、段々と上に……って、あるぇ? 何か、俺のすぐ横にでっかい『褐色の壁』が……あるんですけど?

 あ、いや、『壁』……もとい、デカイ図体の『人間』だとは思うんだが……デカすぎね? そして近過ぎね? 割と本気で目と鼻の先……なんですけどぉ?


「アイダダダッ!?」

「オメェよぉ? カワイイ『女』ってのは、大事な『宝物』なんだぜぇ? みんな、オレ様のガキを産んでくれる相手なんだからよ」


 ……何言ってんだコイツ?


 俺が戸惑っている間にも、『褐色の壁』が動いてシャク男がうずくまった。

 もう一段掴んだ腕に捻りを加えて、制圧しちゃったらしい。だが、やっぱり顔が見えない。

 どんだけデカイんだ……2m超えてるんじゃないか?


「それを、泣かせるわ怒らせるわ……いっぺん死んどくか? ああん?」

「イッ!? イデッ!? ち、ちが、ちがうッ!」


 ……そして。

 のたうち回ってるシャク男はともかく、俺の腕はいつまで握ってるつもりなんですかねぇ?


 別に捻られて痛い訳じゃないが、見知らぬデカイ図体の相手に、いつまでも腕を握られているのは愉快な事ではない。と言うか鬱陶しい。

 これで相手が鍛えられた『女性』と言うのであれば、まだ一考の余地はあるかもしれないが、声といい目の前の筋肉の付き方といい、何と言うかイっちゃった言動といい、どこからどう見ても男だ。だが、でもなんでもなく、普通に男だ。


 一応、状況から鑑みるに、俺は助けられた……んだとは思うから、下手に出てお願いしておく。


「あの……そろそろ、腕を離して頂いてもよろしいでしょうか?」


「なーにがちがうってんだ? ぁ?」

「う、うで、うでがぁぁッ……」


 だが俺の下手に出た完璧なお願いに、目の前の『褐色の男』が反応してくれない。

 そしてシャク男がうるさい。


「……あの? もしもーし?」


「腕がどうしたって? ああ、調子が良くなってきたか? なに、礼にはおよばねぇぜ?」

「ぁぁぁぁぁッ!?」


 ……ガン無視である。

 ええい、とりあえず……離せッ!!


「ん?」


「──フッ!」

「な、にッ!?」


 素手で触りたくないので、動かせる左手の〈鉤手甲〉をローブ越しに相手に押し付け、掴まれている右手を捻りながら強引に引き抜く。

 それなりに強く握られていたが、腕も痛くならない程度の握り方だった為、外せたのだろう。


 右手を軽く振りながら、『褐色の壁』から距離を取る。


 近過ぎる距離ではまともに顔すら見えなかったが、一歩二歩と離れればようやく相手の顔が……顔がッ!?


 その瞬間に、叫ばなかった自分を正直褒めてやりたい。っていうか、驚き過ぎて叫べなかった様なもんなんだけど……結果的に叫んでないから、いいよな?



 何せそこには、『褐色の壁』にのった──『ライオンの頭』が、在ったのだから。



  ◇◇◇



 いや、もちろんここに来るまでとか、中に入ってからも色々な顔形の人々を見てきた訳だが。


 流石に、かなりの至近距離に厳つい『猛獣』の顔面がある事を認識すると、イヤな冷や汗がダバッと出てしまうのは仕方が無い事だと思うんだよ、うんッ! ムツ〇ロウさん、アナタはやっぱり凄かった!


 謎の称賛を思い浮かべつつ相手を刺激しないようにゆっくりと後ずさる俺に、目の前の『褐色の壁』もとい『ライオン頭』が、眼光強めマシマシでこちらに声を掛けてきた。


「……おい、そこのエルフの女」


 一縷の望みをかけて、後ろを振り返ってみる。が……街中では何人か見かけたのに、この場に居るエルフは俺だけっていうね。タイミングが悪いにも程があるッ! あ、レイフェちゃんだー、元気ー? エルネたんも居るー……ん? 何か驚いてるな……あ、『ライオン頭』の顔面にかな。確かに顔面凶器って、こう言うのかもしれな……顔面猛獣の方が良いか? ……いぇす、これが現実逃避ってヤツですよ!


 ……それはさておき、用件があるのは俺だって事だよな……はぁ、仕方ない。


「……はい? ワタシに何か?」


 後ずさるのを諦め、立ち止まりながら『ライオン頭』に返事をする。


 ついでに、離れた事で見えた相手の恰好も観察してみる。


 首から下は、筋骨隆々ではあるがよく日に焼けた褐色の一応『人間』の体で。くすんだ薄い黄色の、(タテガミ)と体毛の『ライオン』なのは頭だけだ。多分『獣人』のバリエーションなのだろう。


 俺が最初に『褐色の壁』だと思ったのは、目の前の『男』の分厚そうな『腹筋』という訳で……しかも『褐色の壁』だったのは、この『ライオン頭』の上半身が『半裸』だからだ。肩にちょっとだけ、〈小さなポンチョ〉みたいな物を羽織っているが……あれ、正直意味無いよな?

 下半身は、一応〈異世界(こっち)〉で一般的なのかよく見かける〈ズボン〉の上に、要所要所に『装甲』が施された物を穿いているが……上半身で台無しだ。


 俺の頭の中で、『怪奇! 半裸変態『ライオン頭』!』みたいなテロップが流れる。一昔前の秘境探検隊か何かでしょうか。


 

「──『偉大なる獅子』の血を継ぐ、強きオレ様の名は【ウェルマスフェルテ】ッ!」


 あ、何か急に言い始めたぞー。


 はい、何か凄そうッスねー。


 でも、凄くどうでもいいッスー。



 と、半分『ウェルマ──』……『ライオン頭』の発言内容をスルーしていたのだが。


 次に『ライオン頭』が言い出した謎の宣言に、一瞬俺の思考が停止した。



「──喜べッ! おめぇには、オレ様の血を継ぐガキを作る機会をくれてやる!」




 ……は?



 …………。



 ……あ、『一難去ってまた一難』って、こう言う時に使うんだなー、あははははははー。



 …………いや、何でだよぉッ!?



よろこべッ!(喜べない

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[良い点] 定期更新たすかる。 来週が待ち遠しい。 [一言] 鬣を刈り取ってやろう( ˘ω˘ )
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