【34】 2章の2 組合
※主人公は興奮すると古文『調』の妄想を垂れ流す時があります。
あなおかし、いとおかし! ……間違ってる? ニュアンスだニュアンス! こまけぇこたぁいいんだよッ!
一晩明けてみれば、街中は昨日とはまた違った顔を見せている。
何だかんだと人通りが多く、活気に満ち溢れていた大通りは。
まだ、活気を持つ前の静けさと、これから騒がしくなっていく前兆がそこかしこで感じられた。
……しかし、さっきレイフェちゃんに見繕ってもらった〈ローブ〉下の〈全身の装備〉に包まれてる関係で、俺的に安心感が凄い。
昔から仕事用の〈制服〉とかを着ると気分が変わるもんだが、今の『メルカ』ボディを包み込んだ物騒な物は全て『武器』だからな……男心をくすぐりまくりんぐですぜ。
だが、そんな俺の状態を差し引いても、比較的静かな街中をレイフェちゃんと二人でテクテク歩いているのは、ちょっとデートみたいで楽しいのである……まぁ、本当のデートはしたことが無いので、多分こんな感じと言う想像ではあるのだが……縁が無かったんだよッ! 俺だって、俺だってなぁ……出来るもんならカワイイ女の子とイチャラブデートしたかったわッ! でも、縁が……ご縁が無かったんですよぉッ! 神様の領分に一介のオッサンが介入出来る訳ないだろッ!? つまり、俺がデートできなかったのは、自然の摂理とかそういう──
「……メルカ?」
「ッはぁい!? ど、どうかしましたかレイフェさぁん?」
「前、見てなかったみたいだから。危ない」
「あ、す、すみません! 昨日とはまた違う街の様子に、思わず見とれてしまって」
「……そう」
つい言い訳がましく、レイフェちゃんに弁解したが。内容的にはそれほど間違ってないよな、うん。
実際、こう『文化祭』の準備をしているかのような……いや、俺もそこまで参加経験がある訳ではないんだが、街中で活動に向けて段々と熱量を上げていくかのような感覚は嫌いじゃない。
もっとも俺の『文化祭』の時は、当番だけこなした後に一人喧騒から離れて、人気の無い屋上とか体育館裏とかでニヒルぶってた訳なんだが……う、思い出すと頭痛が……誰だ、あんなぼっちムーヴをカッコイイとか思っていたアホは…………俺ですよッ!? イヤだぁぁぁッ! ソレ、カッコ良くないのぉぉぉッ! 気付いて俺ぇぇぇぇッ!?
「……メルカ?」
「はぁいッ!?」
ごめんねレイフェちゃん……過去の俺に殺されかけてたの……ぐふッ。
「注意力散漫……手、つないどく」
「え」
キュッ
レイフェちゃんのところどころ固くなりつつも、全体で見ればやはらかな手の感触に。俺の心は思わず小鳥のように羽ばたいてさえずった上にかすみ網で一網打尽にされて焼き鳥にされそう。そんな今日この頃……って、え?
「じゃあ、目的地の『総合ギルド』についても説明しておくから、しっかりと聞く」
「……ア、ハイ」
やべぇ、ちゃんと記憶出来るんじゃろうか、ワシ……い、いや、しっかりしろ! 聞いとかないとレイフェちゃんからの評価が落ちて、道端に転がるゴミを見るような目で見られ……それはそれで? だ、ダメだダメだ! それはまた今度のお楽しみにして、今は知識を蓄えるのだ!
FOOOOO!!
◇◇◇
そんな感じで(どんな感じだ)大通りを歩きつつ、色々見物しながらレイフェちゃんとてくてくウォークしてきた訳なんだが……しばらくして、どうやらここが『目的地』なのかな、ってとこに到着した。
大通りを歩いてきたら、途中からやたらとデカイ……4mくらいかな? の〈塀〉に囲まれたエリアが視界を塞いできたんですね。
最初は、お? これは『貴族』とかのお屋敷なのかな? 何て思ってたんですが。
「……メルカ、ここ」
「あ、はい」
レイフェちゃんに言われて目を向けた、〈塀〉の切れ目に『トンネル』みたいなアーチ型の空間が有って、その中にゴッツい〈鉄の門〉が有ったんです……両開きのデッカイの。
もっとも、今は外向きにガバガバ全開になってるから、閉まった時の様子は想像するしか無いんですが。
んで、〈塀〉が高いから中が全然見えてなかったんですが。トンネルと門を通り過ぎれてみれば中の『建物』も、もちろん見えてきた……訳でして。これもまた迫力が。
『建物』自体も〈あっち〉のどこぞの『城』って言われても、そんなに違和感無いような建物が目の前にデデンと聳え立っております……ひのふの……多分、3階建てか? 窓の配置が階層ごとなら多分そう。あ、ジャパニーズ『城』じゃなくて、ヨーロピアン『城』ね。
漆喰でも塗ってあるのか、建物の外見は結構綺麗な『白』だ。『城』だけに……ただ、全体的には中々年季が入っているのか、良い感じにくたびれてる所もある。
『世界遺産』とか『文化遺産』みたいな雰囲気だな。こう、趣があるんじゃあないでしょーか。
しかも、高さだけじゃなく横のサイズで言っても結構なデカさだ。
さっきまで通ってきた街の他の建物は、基本敷地とか無しに道に接するように建てられていたんだが。見た通りこの『城』は敷地の周りを高い〈塀〉で囲ってる上に、中央に3階建ての建物がデデンと居座ってる構造になってる
「ここが、『テイン』の『総合ギルド』」
「はー……大きいですね」
もちろん〈日本〉の建築物と比べたらそうでもないが、昨日から〈異世界〉のスケールに目が慣れている身としては、結構大きく感じるもんだ。
中央の『城』、もとい『総合ギルド』の建物に至るまでの道も50m位はあるんだが、道の左右に立ち並ぶ『屋台』やら立ち番してる『衛兵』やらで、今の街中に比べて人が多い……昨日のオッチャンと同じ感じの〈金属鎧〉だし、『衛兵』で間違っちゃいないだろう……多分。
後は少し遠くに目をやれば、〈塀〉の内側をてけてけ歩いてる巡回っぽい『衛兵』も居るし、メインの建物と渡り廊下でつながってる『離れ』みたいなのもあるし。いやはや、ゴチャゴチャした街中にあるとは思えない規模だね。
大体の目測だけど、ほぼ正方形の敷地で一辺が4、500mってとこ……か?
ああ、敷地の感覚的にも適当な地方都市の『学校』みたいなイメージだな。都会じゃなくてな? 都会の『学校』は、意外と狭いからな……いや、他意は無いぞ? 純粋に敷地面積で相当な?
それはさておき、道すがらレイフェちゃんに聞いてきたが……ここが複数の『組合』が軒を構える『総合ギルド』って訳か。
一応今日の目的は、『総合ギルド』までの経路を俺が覚える事と、街中の主要施設を何となく覚える事になるんだが。
ちょっと気がそれたりもしたが、『総合ギルド』に来るまでの経路は単純で、ほぼ大通りしか通ってないから多分もう大丈夫。
だから後は、街中の案内をしてもらう予定だが……その、もうちょっとこの『総合ギルド』を見物したいんじゃが……ダメじゃろか?
そんな俺の内心を見透かした訳では無いんだろうが、ぼーっと周りを眺めていた俺の手をレイフェちゃんに引っ張られた。
「メルカ、帰りに『屋台』に寄れるから、先に一度中に入ろう」
「あ、分かりました!」
よし、もうちょっと色々見て回れるぞ! ……ん? あれ、今のレイフェちゃんの反応って……俺が『屋台』に寄りたいと思われた、って事だろうか?
……いや、確かに準備してる『屋台』から、色々おいしそうな匂いはしてたけどッ! お肉の焼ける匂いとか、甘そうなお菓子っぽい匂いとか、気にはなっていたけどもッ!? 決して食い意地だけで色々見てた訳じゃないのよッ!?
チロッペたんの作ってくれた朝ごはんから、まだ1時間経ってないのにそんな反応したら、『メルカ』が食いしん坊みたいじゃあないか。『メルカ』はあくまで、『クールなお姉さんキャラ』なのだ……あれ、でもそんなキャラが『食いしん坊』と言うのも、それはそれでアリなのでは……悪くないな? ちょっとくらい属性盛ってもかまへんやろ……俺も美味しいし……よし、場合によっては食いしん坊と言う事で!
「……楽しみです!」
「ん」
……ニッコリと微笑んでくれるレイフェちゃんを間近で見れただけでも、とんだご褒美ですけどねッ! 目は見えてないけど……ハッ!? つまり、はーととぅはーとぅ、って事だなッ!? ……違う?
◇◇◇
レイフェちゃんの笑顔を心の中でぺろぺろぺろぺろペロリズムしつつ、二人で連れ立って中央の『城』みたいな建物に入ってきた訳ですが。
外観も結構インパクト凄かったが、内装も中々どうしてしっかりしておりました。
ある程度の距離をとって二つ並んでいる内の左側、全開にされたバカでかい両開きの頑丈そうな〈木の扉〉の入り口から入ってすぐは、かなり広いロビー状になっていたのだが。ここが何と『吹き抜け構造』なのだ。
3階までのど真ん中をぶち抜いているようで、まだお昼には早い時間だというのに差し込む光でかなり明るい。
吹き抜けの上には、アーチ状の構造物と切り取られたように『空』が見えている事を考えると、とんでもない技術な気がするんだが……まぁ元が『ゲーム』だから、と言う事にしておこう。
深く考えた所で、専門的な建築知識の無い俺にはサッパリわからんしな。
上はちょっと置いといて、目線を前に戻してみると。
1階には、どうやら各ギルドの受付が並んでいるようだ。
右手に3か所と、左手に3か所。受付で対応する部署を大きく分けているらしい。
右手の、それぞれの受付上に置かれた大きな看板には、
・剣と盾の絵に『冒険者』の文字。
・交差する槍の絵に『傭兵』の文字。
・ランタンの絵に『探索者』の文字。
左手の、それぞれの受付上に大きな看板には、
・何かを積み上げた絵に『商業』の文字。
・光る杖の絵に『魔術』の文字。
・歯車の絵に『工業』の文字。
と言った並びで、各ギルドが並んでいるようだった……うん? あれ、『文字』? あの奇妙な図形が?
あー……読めちゃった、な。
どうやら、『メルカ』の体は、こっちの『文字』にも自動対応のようだ。良く分からん単純図形の重なりみたいなのが、『文字』として認識できてしまう。
助かるっちゃ助かるが、違和感が凄いな……ま、便利な分には構わんか。読めなくて必死に勉強する羽目になるよりはよっぽど良いしな。
気を取り直して、更に周囲を見てみようとしたところで。
「──メルカ。ボクはちょっと『商業ギルド』と『魔術ギルド』に用事があるから、ここで少しだけ待っていて欲しい」
と、レイフェちゃんから声を掛けられた。
握りっぱなしだった手に、反対側の手を添えられて言われた言葉に、俺が否と言う訳も無く。
「分かりました! ここで、色々見させてもらっておきますね」
「ん、出来るだけすぐ戻ってくる」
そう言うと、レイフェちゃんは早足でスタタっと左手の受付に……って、あれ? 戻ってきた。
「メルカ」
「ど、どうかしました?」
問いかけてみると、前髪でこちらからは見えない目をしっかりと合わせながら。
「メルカ、絶対に、ここから動いちゃダメ。特に、向かって『右の受付』周りには、行っちゃダメ」
「は、はぁ……」
チラリと、その『右の受付』の方向に目線を向けながら言うレイフェちゃんにつられて、俺も目線を向けてみるが……まぁ、確かに。
広いロビーの右手では、さっき見た看板の区分でも分かるように、あまりガラの良く無さそうな連中がうろついている……まぁ、そこまで人数は居ないようだが。
ついでに反対の左手も見てみるが、こっちは比較的一般人のような見た目の連中が多い。あくまで、見た目基準だが。
俺が確認した事を見た上で、レイフェちゃんが言葉を続ける。
「……ここでトラブルを起こしたら、その後の様々な『仕事』に関わるから、滅多な事ではトラブルは起きない。でも、何処にでも『バカ』は居る」
なるほど、各種『組合』が集まってる『総合ギルド』で問題を起こせば、それは間違いなく影響が出る。そしてそれでも問題を起こすような『バカ』は存在しちゃうのが世の真理、って訳か……世知辛いねぇ……とは言え、だ。
そう言う事なら、この場でレイフェちゃんの忠告に従わない理由は無い。それでなくとも、レイフェちゃんの言う事に従わない理由は皆無だけどなッ!?
「はい、分かりました。大丈夫ですよ、このままここに居ますので」
『メルカ』がニコリと笑いながら伝えてみれば、少しだけ逡巡したような様子のレイフェちゃんだったが、一つ頷いてまた『商業ギルド』の方に駆け出して行った……しかし、走る姿もカワイイなりぃ……クフフ。
レイフェちゃんの後ろ姿を見送った俺は、もう一度周囲の観察に戻ることにしたのだが……このまま立ちっぱなしなのもどうかと思うんじゃよね。ロビーのど真ん中で一人ポツーンと突っ立ってるのは気が引けるし、あ、下手をするとナンパなんかもされちゃうかもしれない!
とりあえず、目立たないように〈ローブ〉のフードをかぶっておこう……後は、吹き抜けの中央付近にあるアーチを支える〈柱〉を背にして、っと。うん、これで景色に紛れただろ。どらどら。
立ち位置を変えて建物の中を行きかう人達も、もう一度観察していくが……やはり〈異世界〉ならではの方々が数多い。
右手の『探索者』の受付に並んでいるのは、腰の曲がった……たぶん『ヒューマン』の爺さんで、すぐ後ろには背中にデカイ〈ハンマー〉を背負った『ドワーフ』のオッサン。受付で応対をするのは『ヒューマン』のお姉さん……まぁ、美人だわぁ。胸は無いけど……それはそれで。
その隣の『傭兵』の受付を見てみれば、いかつい〈革鎧〉を着込んだ、あー『馬の獣人』か? 首が長めだし、耳がパタパタしとる……の、兄ちゃん。割と人間寄りの見た目だ。
まぁ、ヤローだからどうでも良いけ……いや、『馬の獣人』の『アレ』は馬並みなのかは気になるな。別にしっかり見たくは無いけど、知識として?
んで、その応対をしている……トカゲ? ……あ、いやもしかして『リザードマン』か? え、あー……『獣人』の一種なのか? これは違和感すげぇな。
座ってるからここからは見えないが、多分二足歩行の直立したトカゲって……見た目が強烈。耳とか尻尾だけの一部動物タイプ『獣人』とは、まるで違うインパクトだぁね。
……っていうか、さっきから男の獣人がほとんどで、女の獣人が居ないんだが? 『リアルウサミミ』とか『リアルネコミミ』は居ねぇのかと──
『──だからよぉッ! 無理だって言ってるだろうがッ!』
ガタンッ!
『ヒャッ!?』
……な、何だぁ? 揉め事か?
え、つまり……『バカ』が出ちゃった?
わざわざ『メルカ』が居る時に?
……何か、因果律でも歪めて無いだろうな、『メルカ』。
フ・ラ・グ♪




