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都市伝説と楓市のふつうの人たち ―華は何処へ―  作者: 野乃 隆之


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7.華は何処へ

 さらに時は過ぎ、さなえの好きな秋の味覚のシーズン到来だ。

 10月も半ばを過ぎたころ、おばあさんは笹尾神社に参詣していた。

 参詣するときは、いつもあの宝物を持っている。そのとき、ふっと季節外れの蓮華の香りがした。思わず振り返る。大きな樹の下に誰かが佇んでいた気がしたが、そこには誰の姿も見えなかった。

 おばあさんは絵馬にその思いを込めて笹尾神社を後にした。


 秋はやっぱり太刀魚釣りである。浜田は今夜、夜釣りを楽しむつもりだった。釣れた時のあのキラキラと光る姿を思い出しながら、入念に竿の手入れをしている。日中は由香里とデートの予定なのだが。

 浜田の自宅にやってきた由香里が「オレンジジュース買ってきたよ」と声をかけたものの、浜田は竿の手入れに夢中である。

 気を取り直して由香里は続ける。

「あの時のおばあさん、奈穂子さんと会えたのかな?奇跡って起きないものなのかな〜」

 生返事の浜田を見て、由香里はオレンジジュースを自分用の缶コーヒーとこっそり入れ替え、そっと差し出した。

 浜田はまたもや生返事で「ありがとう」と言い、竿から目も離さずにそれを口に運んだ。

 由香里はオレンジジュースを手に、浜田の反応を確かめるのだった。

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