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☆半世紀分の科学



―ルミエール・帰艦後



ルミエールのハッチが閉じ、微かな振動とともに船が静寂に包まれる。



「はぁ〜……」ダイヤはその場で伸びをした。 「やっぱ宇宙船が一番落ち着くね」 その言葉に、空気が少しだけ緩む。



アストラが一歩前に出た。 「では、改めて説明します」 「皆さんの認識と、現在の時間軸の差について」




レオが腕を組む。 「……何年だ?」





「正確には」 アストラは淡々と告げる。 「50年です」



一拍。



「……50年?」 ダイヤが瞬きをする。 次の瞬間、目が輝いた。


「え、ちょっと待って」 「50年分の科学進歩が丸ごとあるってこと?」 レオも、珍しく前のめりになる。



「基礎理論は?」



「ワープ、重力制御、量子通信はどこまで?」



アストラは、左右に視線を振りながら説明を始める。 「ワープ理論は二系統に分岐しました」 「重力制御は――」 「え、そっち採用したの!?」 ダイヤが割り込む。


「いや、あれは理論値が――」 レオも食いつく。



サイモンはそれを見て、のんびり言った。 「……あとでまとめて聞くわ」 「今聞いても、頭パンクする」 結依は、少し居心地悪そうにその様子を見ていた。



しばらくして、アストラが話題を切り替える。 「次に、血縁関係について説明します」



結依が小さく息を呑む。



「出港前」 アストラはダイヤを見る。

「あなた方の時代では、長期航行に備え、遺伝子細胞の提出が義務付けられていました」


ダイヤは軽く頷く。 「うん、知ってる」



「その遺伝子から」 アストラは続ける。 「アリエス・ミラノ博士により、あなたの子宮が人工生成されました」



一瞬、沈黙。



「……あ、そっか」 ダイヤはあっさり言った。 「アリエスかぁ」



レオが思わず声を上げる。 「ちょ、ちょっと待て!?」



アストラは続ける。 「その結果、生まれたのが」 「サファイア・ミラノ・デズモンド」


ルビィが一歩前に出る。 「私の母です」



空気が固まる。



「え?」 サイモンが間の抜けた声を出す。


アストラは、容赦なく追撃した。 「そして」 「ルビィ・デービスという名は仮名です」


「本名は」 ルビィは静かに言う。



「ルビィ・デズモンド」



「つまり」 アストラが締める。



「ダイヤ・デズモンドの孫にあたります」


「…………」 数秒後。 「えええええ!?」 サイモンが叫んだ。


レオも目を見開く。 「ま、孫!?」



ダイヤは――数秒考えてから、ニコっと笑った。



「へぇ〜」 「私、もうおばあちゃんなんだ」


一拍。


「軽すぎません!?」 結依が思わずツッコむ。


「いや、でも」 ダイヤはルビィを見る。



ルビィは視線を落とす。 「……正直、私たちも予想外でした」



その頃、レオは聞き耳を立てながら別の資料を見ていた。

「……アストラの」 「設計図、これ…?」


「はい」


「この部分」 レオの声が、明らかに楽しそうだった。


「関節が外れても、遠隔で制御できる構造」



「信号媒体が明記されてない」



アストラは首を振る。 「私自身も、仕組みを完全には理解していません」 ダイヤが近づき、設計図を覗く。 一、二分ほど、黙って眺めていた。



アストラが補足する。 「設計者は、オリオン・ミラノ博士」



「そうレオさん…あなたの息子さんです」 「現在60歳」 「アンドロイド研究では、異才として非常に有名です」



ダイヤ「……これ設計したやつ」 「バカだね」



レオが即座に反応する。 「おい」



「いや褒めてるよ?」 ダイヤは笑う。 「バカと天才は紙一重って言うけど」 「オリオンは完全に大バカ側」



「やっぱり」 ダイヤがケラケラ笑う。 「首チョンパ人形で遊んでたオリオンがさ〜」



「首チョンパ(笑)」 結依が思わず大爆笑する



「出港前に買ってあげた人形か…」 レオが苦笑する。 「頭部を飛ばして遊ぶ人形があったんだ」



その瞬間。 「はははは!」 サイモンが吹き出した。


ルビィも、堪えきれず笑う。 結依は相変わらず大爆笑する



そして少し時間が流れ……



相変わらず、ダイヤとレオは半世紀分の科学に釘付けだった。



結依は、レオをちらっと見る。設計図に食い入るように視線を走らせ、 矢継ぎ早にアストラへ質問を投げるレオ。 (……こんな顔、初めて見る) 胸が、少しだけ高鳴る。


やがて、結依は意を決して言った。 「……ごめんなさい」 全員が見る。 「黙ってた」 「時間のことも、血縁のことも」



ダイヤはあっさり言った。

「いいよ」 「結果オーライだし」


レオも、視線を上げずに言う。 「今、同じ船にいる」 「それで十分だ」


「つまりさ」 「ややこしいけど、面白いってことだろ?」 ダイヤがモフモフを抱き上げる。 「そうそう」 「で、これからが本番」



50年の時間差。 血のつながり。 未発表の科学。 全部を抱えたまま―― 彼らは、同じ未来を見始めていた。



そして2時間後――



ルミエールの中央解析室。 静かに流れるデータの光の中で、ダイヤは端末をいじりながら、ふっと手を止めた。


ダイヤ 「ねぇ、ルビィ」 呼ばれて、ルビィが顔を上げる。



ダイヤ 「この ルミナール ……誰が作ったの?」



軽い調子なのに、目は完全に研究者のそれだった。 端末をくるっと回しながら、楽しそうに続ける。


ダイヤ 「正直ね、50年も経ってる割にはさ、 基本構造はそこまで変わってないんだよね〜」 指で空間に回路図をなぞる。


ダイヤ 「部品がちっちゃくなったとか、素材が洗練されたとか、 そのへんは“まあ進歩したね〜”って感じなんだけどさ」

一瞬、言葉を切って、ニヤっと笑う。 ダイヤ 「でもね」 声のトーンが少しだけ下がる。



ダイヤ 「このワープ理論、ぜんっぜん違う」



レオが顔を上げ、サイモンも興味深そうにこちらを見る。



ダイヤ 「発想がさ、もう“常識を一回バラしてから組み直してる”感じ。 これ、絶対一発成功じゃないよ」 クスっと笑って、どこか嬉しそうに。



ダイヤ 「何回も失敗して、何回も事故って、 『あ、これダメだ』って言いながら、 それでも諦めなかった人の考え方」 そして、素直な感嘆を込めて。


ダイヤ 「……いやぁ、すごいよ。 よくこんなの思いついたなぁって、本気で思う」



その言葉を受けて、ルビィは一瞬だけ視線を伏せ、 そして静かに、はっきりと答えた。


ルビィ「ルミナールを設計・建造した総責任者は――」 少し間を置いて。



「あなたの娘。 サファイア・ミラノ・デズモンドです」



誰も言葉を挟めなかった。



ルビィ「そして……私の母です」




――静寂。




次の瞬間。 ダイヤ 「……あー」 間の抜けた、でも納得したような声。


ダイヤ 「あ、やっぱり?」 ポン、と手を叩く。


ダイヤ 「うん、そうだと思った! ……このクセ、私みたいだもん」



その一言に、空気が一瞬ふわっと緩む。 ――が。


レオ 「待て待て待て待て待て待て」 全員が同時に振り向く。 明らかに、スイッチが入ったレオの声だった。 レオ 「今の一言、流したらダメだ。 重要な前提が、いくつも隠れてる」



アストラが、すっと一歩前に出る。 アストラ 「補足します」 淡々と、しかしどこか誇らしげに。


アストラ 「ルミナールのワープ理論の基盤には



ダイヤ・デズモンドさんが10歳の時に提出した論文が使用されています」




一瞬の沈黙。




ダイヤ 「……え? あの落書きみたいなやつ?」


アストラ 「はい。 その論文をサファイア・ミラノ・デズモンド博士が読み、 理論を再構築し、実験を繰り返しました」



レオの目が見開く。 レオ 「10歳……だと……」



アストラは続ける。 アストラ 「さらに補足します。 ダイヤ・デズモンドさんが当時提出した論文は、 ワープ理論に限らず、多方面の分野に及んでいます」



少し間を置いて。 アストラ 「しかし、当時の博士たちには理解されず、 “子供の突飛な発想”として笑われていました」


ダイヤは肩をすくめる。 ダイヤ 「ひどいよね〜。 ちゃんと考えたんだけどな〜」


アストラ 「現在、50年が経過した時点での再検証結果では、 その論文群の84%が理論的に正しいと確認されています」


結依が息をのむ。 アストラ 「残りの16%については、 “現代科学ではまだ理解不能”とされていますが――」



ほんのわずか、声のトーンが上がる。



アストラ 「より未来の科学であれば、 理解に至る可能性が高いと推測されています」



沈黙。



次の瞬間。 レオ 「……待て」 今度は、低く、真剣な声。 レオ 「それはつまり、サファイアは―― “未来で正解になる前提”を信じて、 実験を続けたってことか」


ルビィが、少し誇らしげに、でも葛藤をにじませながら答える。

「はい。 母はよく言っていました。 “理解されるまで待つ必要はない。動いた者が未来を作る”って」



サイモン 「……天才一家、怖いな」 どこか他人事。



ダイヤは、少しだけ目を細めて、楽しそうに言う。ダイヤ 「ふーん…… 私の落書き、ちゃんと育ててくれたんだ」 そして、くるっと振り返る。


ダイヤ 「ねぇレオ。 面白いでしょ?」 レオ 「……ああ」 完全に研究者の顔。



レオ 「50年分の科学の進歩どころじゃない。 これは―― “同じ未来を見ていた人間が、時代を越えて繋がってる”」



結依は、その横顔を見て、思わず胸の奥がきゅっとなる。 (……なに、この人) (普段クールなのに、今めちゃくちゃ楽しそう)



ダイヤは無邪気に笑う。

ダイヤ 「じゃあさ」

「この続き、全部見ようよ。 未来がどこまで行ったのか」 「そうだな」レオ



――深夜/ルミエール研究区画



時刻はとっくに深夜を回っている。 ホログラムと実体スクリーンが入り乱れ、 ダイヤとレオは完全に科学オタクモードに突入していた。


レオ 「この素材合成、50年前は理論止まりだったはずだぞ…… なぜ安定している?」



ダイヤ 「ここ、ここ。 計算式を三次元じゃなくて、時間軸を一回ねじってる」



レオ 「……ああ、なるほど。 狂ってるが、理にかなってる」


アストラが、二人の間を忙しく行き来する。 アストラ 「補足します。 この技術はオリオン・ミラノ博士が主導で――」


ダイヤ 「オリオンの名前、さっきから出るよね」 一瞬、アストラの動きが止まる。


アストラ 「……はい。 オリオン博士については、技術以外にも特記事項があります」




レオが嫌な予感を覚えた顔をする。 レオ 「……待て」 ダイヤ 「え、なに? まさか……」




アストラは、感情を挟まない声で告げる。

「オリオン・ミラノ博士は、 過去に――三度、拘束歴があります」




一瞬の静寂。




サイモン 「……え?」 結依 「拘束……って、逮捕?」


アストラ 「正確には、


・未認可実験による宇宙条約違反


・軍事転用禁止技術の個人研究


・自作アンドロイドによる公共施設侵入 です」



サイモン 「フルコースじゃん」 ダイヤは、なぜか懐かしそうに笑う。


ダイヤ 「あ〜……やっぱり」


レオ 「やっぱりって言うな!! 俺の息子だぞ!!」


ダイヤ 「だってさ〜 首チョンパ人形で遊んでた子だよ?」

そのワードに、空気が一気に緩む。

ダイヤ「頭と胴体が外れる人形。 “分離したまま動かせたら面白くない?”って 出港の時ずっとイジってた」


サイモン 「今それが、 銀河最先端のアンドロイド技術になってるんだろ?」



アストラ 「はい。 アストラの“分離遠隔制御システム”は、 オリオン博士の独自理論です」



レオが頭を抱える。 レオ 「……未発表? 論文にも、申請にもない?」 アストラ 「はい。 博士は“理解されないから出さない”と」



ダイヤ 「うわ〜 完全にやばい方向に育ったね」


そして、アストラを数秒見て


――ダイヤ 「……これ設計したやつ、やっぱり大バカだよ」


レオ 「何度目だ、それ」


ダイヤ 「何度でも言うよ、褒め言葉だし、オリオンは完全に“大バカ天才”」 ニコッと無邪気に。


ダイヤ 「でも、嫌いじゃない」


サイモン 「むしろ好きだろ、それ」


結依 (……この人たち、レベルが違いすぎる)


ルビィは少し複雑な表情で俯く。



ルビィ「母も…… “オリオンは危険だけど、未来を一番早く見てる”って」

レオ 「……まったく」 でも、設計図から目を離さない。


レオ 「……50年分の科学、 一晩じゃ足りないな」 ダイヤ 「でしょ?」 二人は、ほぼ同時に言う。



――翌朝



仮眠室。 ドアが開く。 サイモン 「おは――」 言葉が止まる。


そこには。 目の下に立派なクマを作り、 眠そうにフラフラ歩く二人。


サイモン 「……徹夜?」 ダイヤ 「うん……楽しかった」 レオ 「……50年分、だいたい把握した」



結依 「把握したってレベルじゃないでしょ……」


アストラが淡々と。 アストラ 「記録によると、 お二人は一睡もしていません」


ダイヤが欠伸をしながら言う。 ダイヤ 「さて…… 今日は忙しくなるね」



☆ルビィーの葛藤



――ルミナール・居住区ラウンジ


レオはソファで完全に沈没している。 腕を組み、規則正しい寝息。 昨夜の代償だ。


その少し離れた場所で―― ルビィは、マグカップを両手で包んだまま黙っていた。 結依とサイモンが視線を向ける。



ルビィ「……ねえ」 声が、珍しく弱い。 ルビィ「私、船長なんだよね。  この船の……リーダー」


サイモン 「そうだけど?」


ルビィは苦く笑う。

「でもさ。  ダイヤが前に出ると……何も言えなくなる」


結依は黙って聞いている。


ルビィ「判断も、決断も、全部正しい。  迷いがない。  しかも……楽しそうにやる」 指先が、カップを強く握る。


ルビィ「私は“役割”として船長をやってるだけで……  あの人は、“存在”で場を支配する」



サイモンが、少しだけ真面目な顔になる。 サイモン 「比較する相手が悪い」


ルビィー 「わかってるよ。  祖母だもん――血の繋がりも、歴史も……全部」



結依が、静かに口を開く。 結依 「でも、ルビィがいなきゃ  この船はここまで来てない」 ルビィは驚いて結依を見る。



結依 「ダイヤは“答え”を出す人。  あなたは“守る”人」



一拍。



結依 「役割が違うだけ」 ルビィは、少しだけ息を吐いた。



その時。 ワープシステム区画から、 モフモフを抱えたダイヤとアストラが姿を現した。



ダイヤ 「ねえねえ」 全く空気を読まない、明るい声。 ダイヤ 「21億人、どうやって運ぶと思う?」 一同、即座に切り替わる。



サイモン 「急だな!」



ダイヤ 「急じゃないよ。  考えなきゃ、もう時間ない」


ダイヤは指をくるくる回しながら続ける。「ルビィの時代でも、  物資とか船のワープは安定してるでしょ?」


ルビィ「……うん。  無人、もしくは非生体なら成功率は高い」


ダイヤ 「生身は?」


ルビィは少しだけ言葉を選ぶ。 ルビィ「母……サファイアが、何度か成功させてる。  でも――」


「一度に大量は、無理」 ルビィ即答だった。


ルビィ「危険すぎる」 結依 「何が起きるの?」


ルビィは、苦い顔で答える。 ルビィ「生体のワープは、  “情報”として分解して再構築する」



サイモン 「……要するに、一回バラす?」


ルビィ「そう。  人数が増えれば増えるほど――  個体情報が干渉する」


ダイヤ 「上書き、混線、欠損……」


ルビィー 「最悪、人格崩壊。  肉体は無事でも、中身が壊れる」



沈黙…



サイモン 「……それは、ちょっと嫌だな」 ダイヤは、顎に指を当てて考え込む。



ダイヤ 「じゃあさ」 顔を上げる。 ダイヤ 「“一斉”がダメなら、  分ければいいんだよね?」 ルビィー 「……人数を?」 ダイヤ 「それだけじゃない」 ダイヤの目が、楽しそうに光る。



ダイヤ 「ワープってさ、  宇宙座標だけ指定して飛ばしてるでしょ?」


アストラ 「はい。  現在の主流理論です」


ダイヤ 「それがダメなんだと思う」 全員がダイヤを見る。


ダイヤ 「“どこへ行くか”だけじゃ足りない」


サイモン 「……何がいる?」


ダイヤ 「“行く場所”そのもの」


アストラが即座に反応する。 アストラ 「……着地点の固定化?」


ダイヤ 「そう!」 パチン、と指を鳴らす。 ダイヤ 「スタート地点と、  着地点の両方に  “ワープ専用構造体”を作る」



結依 「ゲート……?」


ダイヤ 「うん、ほぼそれ」 ダイヤは、何もない空間に指で図を描く。


ダイヤ 「生体情報を、  一瞬“宙づり”にするんじゃなくて――」 「道を作って、  そこを歩かせる感じ」


アストラが少し間を置いて答える。 アストラ 「……理論上は、可能です」 全員が息を呑む。


アストラ 「ただし」 視線をダイヤに向ける。 アストラ 「大規模実験が必要です。  前例は、存在しません」



ダイヤ 「前例は、今から作るんでしょ?」 迷いがない。



アストラ 「……成功すれば、  一度に数千万単位の移送も  視野に入ります」


サイモン 「21億……現実味出てきたな」


その時。 ソファから、低い声。 レオ 「……待て……」 全員が振り向く。

レオ 「今の話……  夢の中でも聞こえてた」

目をこすりながら、半分起きる。



レオ 「……面白すぎるだろ」



ダイヤがニヤッと笑う。 ダイヤ 「起きた?」

レオ 「寝てられるか」



☆ワープ理論――壁



――ルミナール・戦術解析室


立体ホログラムが空間いっぱいに広がる。



二つの巨大な円環――ワープゲートA / ゲートB。 その間に、見えない“何か”が存在している。 ダイヤが腕を組んで言った。



ダイヤ 「ねえ、ルビィ。結依。  あんたたち、科学得意なんでしょ?」


不意打ち。


ルビィ「え……一応」


結依 「宇宙探索訓練校では……  科学、ルビィが1位、私が2位」


一瞬、空気が止まる。


サイモン 「……上位すぎない?」


ダイヤ 「ふーん」 興味深そうにニヤッとする。



ダイヤ 「じゃあ大丈夫だね。  この先、私とレオとサイモンと、  それからアンドロイドの会話について来れないと困るから」



ルビィと結依、内心ヒヤッとする。 (正直、心配……) (この人たち、思考速度がおかしい……)



☆ワープゲート理論・初期構築



レオ 「ゲート間の“空間”が問題だ」 即、本題。 レオ 「単なる距離ゼロの折り畳みじゃない。  情報保存領域が発生する」



アストラ 「はい。  現在の想定では――  ゲート間は“半位相空間”になります」 ホログラムが歪む。


結依 「……そこに、人間は存在できるの?」


ダイヤ 「たぶん、できない」 即答。


ルビィー 「たぶんって……」


ダイヤ 「“存在”としては無理。  でも、“状態”ならいけるかも」



――1時間後 床に座り込むサイモン。 サイモン 「どう俺の案は?」



ダイヤ「再構築時に神経信号がズレる」

アストラ 「補足します。  記憶欠損、人格の断絶が起こります」


結依 「……ダメじゃん」

ルビィ「うん、ダメだね」



――3時間後 ホログラムには、赤い警告表示が増えている。



ルビィ「ゲート間で時間の流れが不均一だと……  細胞分裂がバラバラになる」


レオ 「……肉体年齢がズレるな」


サイモン 「赤ちゃんになったり?」


ダイヤ 「逆に一気に老化もあるね」


結依 「最悪……」


アストラ 「失敗確率、92%」 重い沈黙。



――7時間後



誰も喋らない。 ホログラムだけが静かに回転している。 ルビィは額に手を当てた。


ルビィ「……無理、なのかな」 結依も俯く。



ダイヤは、珍しく黙ったまま、宙を見つめている。 (ダメだなぁ……) (理屈は見えるのに、道がない)


その時。 サイモン 「あのさ」 全員が振り向く。 サイモン 「ルナストン市の人たちって、  化学すごいんでしょ?」



間。



サイモン 「化学の第一人者とかいるなら、  あそこの都市変わってたし“変な空間”の扱い、  得意な人いるんじゃない?」 一瞬の沈黙のあと


――


アストラ 「……その可能性は、高いです」 全員の視線が集まる。


アストラ 「地下都市の化学は、  エネルギー変換・空間安定分野において  我々より進んでいる箇所が複数ありました」


レオ 「全体の化学力では、こっちが上でも?」


アストラ 「はい。  ですが“局所的天才”の密度は、  ルナストン市の方が高い」


ダイヤの目が、キラッと光る。

ダイヤ 「……いるね、絶対」 立ち上がる。「こういうの、  世界に数人しか理解できないタイプのやつ」


ルビィ「誰か……紹介してもらいます?」


自然とダイヤに視線が集まる。


ダイヤは、ニッコリ笑った。

「決まってるじゃん」




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