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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼14万PV達成】【平日月曜と金曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章伍】ゼロとの交渉と奪われた光/宝石の系譜

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✮夜の回収者

 ――B班。

◆廃墟ビル・夜

 夜の闇が街を覆っていた。

 崩れた窓の前。

 アストラが外を監視している。

 そのときだった。

『反応を探知しました』

 静かな声。


 休憩していた全員が顔を上げる。

 アイダが聞いた。

「敵か?」


『判別中です』

 一拍。


『人型反応一〇』


 ロックが立ち上がる。

「接近方向は」


『北西』

『約八〇〇メートル』


 ヘルムズが欠伸をした。

「夜勤のお客様か」


 テリオスが笑う。

「歓迎する気満々だな」


『武装は確認できません』

 アストラの言葉に、全員が少しだけ顔を見合わせた。


 武装していない。

 ネメシスでは珍しい。


 アストラが続ける。

『移動速度一定』

『進路予測』

『赤いレヴロスト撃破地点』


 アイダが眉をひそめた。

「撃破地点?」


 メリーが窓へ近づく。

「見える?」


『あと二分で視認可能です』


 全員が窓際へ集まった。

 やがて。

 闇の中に影が現れる。

 一〇体。

 人間によく似た輪郭。

 だが動きは機械的だった。

 隊列も乱れない。

 まるで工場の生産ラインがそのまま歩いているようだった。


 ルビィが小さく呟く。

「人型……」


 結依も目を細める。

「アンドロイド?」


『解析中』

『はい、アンドロイドの可能性八九パーセント』

 アストラが答えた。


 影たちは戦闘地点へ到着した。

 そして。

 赤いレヴロストの残骸へ近づく。

 何の躊躇もなく作業を開始した。

 腕部を取り外す。

 脚部を切断する。

 装甲を分解する。

 全てが無駄なく正確だった。


 ディックが感心する。

「働き者だな」


 テリオスが吹き出す。

「感想それかよ」


 ダイヤも窓の外を眺める。

「へぇ……回収専門みたいだね」


 ロックが頷く。

「戦闘用には見えんな」


 アストラが答える。

『ネメシス製である可能性が高いです』

『回収専用アンドロイドと思われます』


 メリーが腕を組む。

「なるほどね」

「壊れた兵器や残骸を回収する係か」


 アイダが鼻を鳴らした。

「ネメシスらしい話だ」


 ルビィが首を傾げる。

「壊れたものも回収するんですね」


 アストラは頷く。

『資源再利用の可能性があります』

『さらに頭部記録媒体も回収対象と思われます』


 ロックの目が細くなる。

「戦闘データか」


『可能性は高いです』

 その場の空気が少しだけ重くなった。


 テリオスが苦笑いする。

「せっかく倒しても、向こうの経験値になるわけか」


 ディックが低く唸る。

「厄介だな」


 アイダも顔をしかめた。

「学習され続けるってことだからな」


 窓際にもたれていたヘルムズが口を開く。

「じゃあ今のうちに撃つか?」

 一拍。


「命令くれりゃ、あいつらごと吹っ飛ばすぞ」


 メリーが呆れた顔を向ける。

「本当に物騒ね」


 ヘルムズは笑う。

「褒めるなって」


「褒めてないわ」

 メリーは即答だった。


 結依がくすりと笑う。

「ヘルムズさんって、自分に都合のいいように聞こえるんですね」


 ヘルムズは真顔で頷く。

「俺の長所だ」


「短所です」

 ルビィが即座に訂正した。


 その瞬間、周囲から小さな笑いが漏れた。


 そのとき。

 アストラの瞳が僅かに光る。

『追加反応』


 全員が振り向いた。


 ロックが聞く。

「数は」


『四』


 アイダの表情が変わる。

「どこだ」


『高速接近中』


 次の瞬間。

 黒い影が瓦礫の上へ音もなく降り立った。

 気配も薄い。

 まるで闇そのものだった。


 結依が息を呑む。

「何……あれ」

 黒い装甲。

 黒いヘルメット。

 漆黒の機体。

 四体。

 赤いレヴロストとは対照的だった。


 アストラが即座に解析する。

『アイオーン製レヴロストを確認』

『識別名』

『レヴロスト・レイス』


 ロックが目を細めた。

「アイオーンか」


 ディックが低く唸る。

「あれ、レイスだよな?」


 ヘルムズが窓の外を見つめる。

「ああ」

「レイスだが――」


 その直後だった。

 レイスが動く。

 消えたように見えた。


 そして。

 ――ガシュッ!

 回収アンドロイドの首が宙を舞う。

 ガシャン。

 機械の身体が崩れ落ちた。

 さらに。

 ――ガガガッ!

 二体。

 三体。

 四体。

 回収アンドロイドたちは反応する暇すらない。


 テリオスが目を見開く。

「速っ!」


 メリーも驚いていた。

「今の見えた?」


 ディックが首を振る。

「いや」


 ヘルムズが苦笑する。

「俺も見失った」


 ロックが静かに言う。

「通常のレイスではないな」


 レイスは止まらない。

 まるで嵐だった。

 一〇体いた回収アンドロイドは、わずか数十秒で全滅した。


 しばらくして。

 レイスは血振りでもするように、青白く光るレーザー剣を払った。

 そして何事もなかったかのように立っていた。


 結依が息を吐く。

「強い……」


 アストラが続けた。

『私が以前観測したレヴロスト・レイスと比較した場合』

『総合性能がおよそ五〇パーセント向上しています』


 一瞬、その場が静かになる。

 結依が聞き返した。

「五〇パーセント?」


『はい』

『速度、反応速度、出力ともに向上を確認』


 ルビィも驚く。

「改良?」


 アストラは淡々と答えた。

『可能性が高いです』

『現在の性能は赤いレヴロストと、ほぼ同等と思われます』


 その言葉に空気が変わる。


 メリーが顔をしかめた。

「量産型じゃなくなってきてるわね」


 ディックも腕を組む。

「厄介だな」


 アイダが鼻を鳴らした。

「ネメシスだけじゃねぇ」

 全員の視線が向く。


 アイダは窓の外のレイスを見ながら続けた。

「アイオーンも進化を続けてるってことだ」

 一拍。


「この星は、どいつもこいつも強くなりやがる」


 ヘルムズが苦笑する。

「勘弁してほしい話だな」


 テリオスも頭を抱える。

「休んでる間に敵だけレベルアップしてるじゃねぇか」


 結依が小さく笑う。

「ゲームなら最悪の展開ですね」


 ロックは静かに窓の外を見つめていた。


 静寂。


 そして。

 レイスたちは赤いレヴロストの残骸へ近づいた。

 赤いレヴロストの残骸を持ち上げる。

 そして回収作業が始まった。

 さらに、破壊された回収アンドロイドの残骸まで運び始めた。


 ルビィが呟く。

「アンドロイドまで……」


『推測』

 アストラが言う。

『ネメシス技術の解析が目的と思われます』


 アイダが頷いた。

「アイオーンも調べてるってことか」


 ダイヤが静かに言う。

「三勢力とも忙しいねぇ」


 ディックが苦笑した。

「休む暇がないな」


 ヘルムズが窓枠に肘を乗せる。

「なぁ」

 一拍。


「あいつら放っといていいのか?」


 アイダは首を振った。

「追うな」


 ロックも同意する。

「今は休息だ」

「停戦交渉も控えている」

「今回は手を出さないほうがいい」


 ヘルムズが天井を見る。

「真面目だなぁ」


 ロックは即答した。

「真面目だから生きている」

 数秒の沈黙。


 そして。

 テリオスが吹き出した。

「また言った」


 ディックも笑う。

 メリーも苦笑した。

 アイダは呆れた顔になる。


 ヘルムズは大げさに頭を抱えた。

「隊長の口癖、そろそろ本にして売れそうだな」


 ロックは真顔だった。

「売れない」


 ヘルムズがロックの頭を軽く叩く。

「そこは否定するんだな」


 ロックが真顔で言う。

「頭を叩くな」

「俺は隊長だぞ」


 テリオスが吹き出した。

「気にするところ、そこかよ」


 再び笑いが起こる。


 だが。

 窓の外では。

 レヴロスト・レイスが赤いレヴロストと回収アンドロイドを運び去っていた。


 ネメシス。

 アイオーン。

 そしてラストライト。


 三つの勢力は、それぞれの思惑で動き続けている。

 静かな夜は続く。

 だが、その裏側では――新たな戦いが確実に近づいていた。



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