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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼14万PV達成】【平日月曜と金曜の朝6時更新】  作者: 準
【第二章】宝石(星)の系譜/地下都市ルナストンと惑星アークス

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☆地下都市ルナストン(前編)

◆自然衛星地表

 武装解除は、静かに行われた。

 銃、刃物、補助装備。誰も不満を言わず、次々と船へ戻していく。


 最後まで残っていたのは、結依だった。腰のホルスターに手を置いたまま、ほんの一瞬だけ躊躇する。


 彼女にとって銃は、ただの道具じゃない。

「……置きに行ってくる」

 誰に言うでもなく小さく呟き、ホルスターを外す。


 それを船内に戻すと、結依は静かに戻ってきた。

 そして、みんなのいる場所へ一歩踏み出す。


 その先に、地下都市への扉がある。

 金属でも岩でもない、半透明の巨大な構造体。

 内部で淡い光が脈打つたび、扉そのものが生きているように見えた。

 扉が、音もなく開く。

 だが、すぐには中へ進めなかった。


 入口にいたのは、小さい毛むくじゃらが一体。

 体長三〇センチほどの小さな個体だった。


 これまで彼らを威圧してきた巨大な個体が、ゆっくりと近づいてくる。


 そして――交代作業が始まった。

 係員が現れ、小さな方に青色の液体が入った注射器を打つ。

 同時に、巨大な方には赤色の液体。


「……色、違うな」サイモンが呟く。


 ルビィが目を細める。

「……あの注射器、普通の医療器具じゃない」


 アストラが答える。

『調整された専用のものです。通常の針では、皮膚を通せません』


「え?、じゃあ……」


『はい、特殊素材です』


 赤色を打たれた巨大な番兵は、低く唸りながら体を伏せ、まるで圧縮されるように縮んでいく。


 逆に、青色を打たれた小さい方は、光を帯びながら急速に巨大化した。


 数秒後――役割は完全に入れ替わり、新たな巨大番兵が、入口を守る位置に立つ。


「……やっぱり一匹じゃなかったのか」

 レオが低く言った。


 しばらくすると、奥から一人の男性が現れた。

 背は低く、年配。少し前かがみで、服装は実務用。

 どこからどう見ても、役所のおじさんだ。


 その姿を見て、一呼吸おき。――ダイヤがぽつりと漏らす。

「……思ってたより、人間だな」


 アストラがすぐに翻訳する。

『ようこそ。地下都市管理局のカイトです。番兵管理と、来訪者対応を担当しています』

『大統領は忙しく、明日の朝あなた達とお話がしたいと申しております』


 巨大番兵の足元では、

 先ほど縮んだばかりのモコモコが、ぴょんぴょん跳ねながらカイトの足にまとわりついていた。


 ダイヤの目が、はっきりと輝く。

「……ねぇ、あの子……」


「ダイヤさんっ」ルビィが即座に声を低くする。


「見てるだけだよ?」


「その“だけ”が信用できないです」


 ダイヤは返事をせず、モコモコを目で追い続けていた。


 カイトは気にした様子もなく、奥を示す。

 アストラが訳す。

『中へ。ここからは地下通路になります』


 通路は、思った以上に長かった。

 しばらく歩いたあと、ルビィが前を歩くカイトに声をかけた。

「……ひとつ、聞いてもいいですか?」

 カイトが足を緩める。

「この衛星の地表には、どうして引力と空気があるんですか?」


 少しの間を置いて、カイトが答えた。

『入口前にモコルを“番兵”として配置するには、空気が必要だったそうです』

『あ、この子は“モコル種”という動物です』

 一同が足を止める。


『私はこの件にはあまり詳しくありませんが……』

『クセのある、ですが非常に優秀な化学屋がいまして、入口を中心に、半径およそ一キロ圏内だけ、引力と空気を安定して維持する方法を発明したとか』


 その言葉を聞きながら――

 ダイヤは心の中で、小さく呟いた。

(化学屋ね……)


 枝分かれの多い通路。

 壁や天井には、見慣れない地下都市語の表記が走っている。

 文字そのものが淡く光り、方向や区画を示しているらしい。


「これ、地図なしで来たら詰むね」

 結依が言う。


「初見殺しだな」

 サイモンも同意した。


 その直後。

「……あっ」

 ダイヤが足を止める。

 カイトの横を、例のモコルがぴょん、と大きく跳ねた。

「ほら、見て!今――」


「見ない、追わない」

 ルビィが被せる。


「……はい」

 納得していない声だった。


 通路を抜けた瞬間――

 視界が、急に開けた。


「……え?」

 結依が思わず声を漏らす。


 ――そこには、空があった。物理法則を無視した街並みと、見たこともない文明の喧騒。

 この巨大な箱庭を前に、彼女たちの好奇心を止める術は、もうどこにもなかった。

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― 新着の感想 ―
第零章で「伝説のダイヤ」を先に見せてから、五十年後のルビィへ繋ぐ構成が上手いなあと思いました。特にルビィが祖母の記録に憧れながらも、「ダイヤの孫」ではなく自分自身として進みたい気持ちを抱えている点が印…
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