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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章参】宝石(星)の系譜/別々の空の下で

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196/220

✮紅き異形の正体

更新


月曜〜土曜の朝6時に新エピソード1話


※日曜・祝日はお休みです。

 ――A班。

◆崩壊都市・昼区域

 赤いレヴロスト・ヴェイル二体は、地面へ崩れ落ちたまま動かない。


 静寂。


 砕けた道路に、砂煙だけが漂っていた。

 テストがゆっくり立ち上がる。  服についた瓦礫を払いながら、小さく息を吐いた。


 すると。

 拳銃を下ろしたケイトが、呆れた顔で口を開く。

「アンタ、さっき普通に死んでたわよ」

 一拍。


「大きな貸しが出来たわね、テスト隊長」


 だが。  テストは真顔で答えた。

「お前じゃない」

「助けたのは、アリスベルだ」


「はぁ!?」

 ケイトが眉を吊り上げる。


 その横で。

 アリスベルの蒼い瞳が、じっとテストを見る。

 そして。

「……老いたのか?」


 全員の空気が止まった。


 アリスベルは続ける。

「あんなところで躓くな」

「見ていて危なっかしい」


 サンチェスが吹き出しかける。

「ぶっ……」


 テストが無言で睨む。


 サンチェスは慌てて顔を逸らした。

「いや、何でもない」


 サイモンがニヤつく。

「隊長さん、怒られてんじゃん」


「黙れ」

 テストが低い声で返した。


 その様子を見ていたレオが、小さく息を吐く。

(この人、結構こういう立場に弱いんだな……)


 すると。

 アリスベルが視線を周囲へ向けた。

「……知らない人間が二人いる」

 一拍。


「誰だ?」


 レオが口を開こうとした瞬間。


「異星人だ!」

 サンチェスが勢いよく割り込んだ。

「六人来た異星人のうちの二人!」

「しかも、めちゃくちゃ強ぇ!」


 そのときだった。

「お姉ちゃん!!」

 声。


 全員の視線が動く。

 アシュリーだった。


「……え?」

 ケイトが目を見開く。


「アシュリー!?」

「何でテストの部隊にいるのよ!?」


 今度は逆に、A班側が固まった。

「……お姉ちゃん?」

 レオが呟く。


 サイモンも驚く。

「姉妹なのか!?」


 サンチェスがテストを見る。 「隊長、知ってました?」


「いや、初耳だ」

 テストも少し驚いていた。


 アシュリーは、泣きそうな顔でケイトへ駆け寄る。

「お姉ちゃん……!」

 そして。

「アレックス部隊長が……私を守ってくれて……」

「青いハウンドに殺されたの……!」

 空気が変わる。


 アシュリーは震える声で続けた。

「部隊もほぼ全滅になり……」

「〇七部隊は解隊になった」

 一拍。


「だから私……クレアさんにお願いして」

「アレックス部隊長と仲が良かった、テスト隊長の部隊へ志願したの」


 ケイトの表情が沈む。

「アレックスが……死んだのか」

 鋭い目つきが、わずかに和らぐ。

「世話焼きで、お人好しな奴だった」

 一瞬だけ視線を落とし。

 やがてテストを見た。

「おい、テスト――」


「……何だ」


「私の妹が隊にいるのに」

「死にかけてんじゃないわよ」


「…………」

 珍しく、テストが言い返せなかった。


 サンチェスが肩を震わせる。

「隊長、今日は立場弱ぇなぁ……」


テストがまた無言で睨む。


「はい、黙ります」

 サンチェスは目を逸らしながら小さく言った。


 すると。

 レオが前へ出た。

「俺はレオ」

「こっちはサイモンだ」


 サイモンが軽く手を上げる。 「どうも」


 レオは続けた。

「赤いレヴロストが、黒い個体とは別格だった」

「想定以上の速度だったせいで、テストとの連携が崩れた」

 一拍。


「すまない」


 ケイトは少しだけ目を細める。

「……レオ、だったかしら?」

 一拍。


「この件は異星人たちのせいじゃない」

 そして。

「全部、隊長のテストが悪い」


「何でだ」

 テストが、本気で理解できないという顔をした。


 サイモンが吹き出した。

「ははっ、隊長さん完全に怒られてるじゃねぇか!」


 その空気を変えるように。

 サンチェスが、地面へ転がる赤ヴェイルの残骸を見る。

「この赤いレヴロスト……何なんだ?」

「強すぎだろ」

 一拍。


「まぁ、それを簡単に倒したアンタらも化け物だけど」


 アリスベルが静かに答えた。

「あれは、ネメシス製のレヴロストだ」


 レオたちの表情が変わる。


「ネメシス製……?」

 アシュリーが呟く。


 アリスベルは続ける。

「アイオーンの黒いレヴロストを、ネメシスが回収」

「その後、サイボーグ化した」


「……改造兵か」

 レオが低く呟く。


 ケイトが腕を組む。

「私たち、赤いのと戦ったのは今ので三回目なのよ」

 一拍。


「しかも、毎回二体で行動してる」


 サンチェスが顔をしかめる。 「二体一組か、嫌な敵だな……」


 アリスベルが静かに言った。

「最近、ネメシス製サイボーグの質が上がっている」

「青いハウンドの中にも、強い個体が出始めている」


 ケイトが補足する。

「青でも、少し銀色の毛が混じってる個体よ」


 一瞬。

 サンチェスの顔色が変わった。

「……それ」

「前線基地で、婆さまと睨み合ってたヤツじゃねぇのか?」


 レオも思い出す。

 夜の廃墟。

 青い眼。

 異様な威圧感。

 まるで、普通のハウンドとは別物だった個体。


 すると。

 アリスベルの蒼い瞳が、わずかに細くなった。

「……遭遇したのか」

 一拍。


「ネメシス製は、力任せの個体が多い」

 静かな声が続く。

「だが、あの個体は違う。異常なほど頭が回る」


 アシュリーは、戦場を思い出したように表情を曇らせた。

「〇七部隊は……」

 かすれる声。

「アレックス隊長は、あの青いハウンドの群れに殺されました」

 一拍。


 握った拳が、小さく震える。

「最後まで、私たちを逃がそうとして……」


 崩壊都市を、冷たい風が吹き抜ける。


 そして――。

 誰も気づいていなかった。

 遠く離れた高層廃墟の陰から。

 銀色の体毛を持つ“青い怪物”が、静かにA班を見下ろしていたことを。

 まるで獲物を観察するように。

 ただ静かに、“夜”を待ちながら――。


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