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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章参】宝石(星)の系譜/別々の空の下で

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194/220

✮旧式と失敗作、そして紅き異形

更新


月曜〜土曜の朝6時に新エピソード1話


※日曜・祝日はお休みです。

 ――B班。

◆旧管理区域・崩壊ビル内部

 崩れたビルの一室。

 割れた窓から、わずかに夜の冷気が流れ込んでくる。


 ルビィたちは、瓦礫を寄せて簡易的な休憩場所を作っていた。

 遠くでは、時折ネメシスのサイボーグたちの咆哮が響く。

 だが、この部屋だけは不思議と静かだった。


 結依が壁へ背を預けながら、小さく呟く。

「……なんか、まだ信じられない」

「レヴロストと普通に会話してたんだけど」


 ルビィも苦笑した。

「しかも途中から共闘してたしね……」

 一拍。


「もっと完全な機械兵器みたいなの想像してたよ」


 すると。

 少し離れた場所へ腰を下ろしていたアイダが口を開いた。

「アイオーンが人間管理を始めた初期の頃のレヴロストは……」  一拍。


「確かに、今よりもっと喋ってた」


 ダイヤが首を傾げる。

「へぇー、そうなんだ?」


 アイダは続けた。

「最近のは無口だ」

「基本、必要最低限しか喋らないから」

「だから、私も気づかなかった」

 一拍。


「旧式だけだ。あそこまで会話するのは」


 アストラが静かに補足する。

『旧式個体は、現在のレヴロストより感情表現が多い傾向があります』

『個体差も確認されています』


 結依が少し驚く。

「個体差って……」

「じゃあ、本当に性格みたいなのあるんだ」


『はい』

 アストラは即答した。

『現在型は、感情制御が大幅に強化されていると思われます』


 ルビィが思い出したように聞く。

「アリスベルさんとレヴロストって、同じなんですか?」


 アイダは即座に首を横へ振った。

「全然違う」

 一拍。


「アリスベルは見た目は人間だ」 「目が異様に青いだけでな」


 アイダは続ける。

「でも、レヴロストは違う」

「人間以外の遺伝子を組み込まれた、人造生物だ」


 結依が少し顔をしかめる。

「だから、尻尾とかあったんだ……」


 ダイヤが興味深そうに聞いた。

「アリスベルって、レヴロストよりどれくらい強いの?」


 その質問に、アイダが少し笑った。

「アリスベルは、アイオーンが切り札として作った人造人間らしい」

「強くはした」

「だが、人間ベースで作ったせいか……」

 一拍。


「感情のコントロールが出来なかった」


 ルビィが小さく呟く。

「それが……離反した理由?」


「たぶんな」

 アイダは短く答えた。

 少し沈黙。


 結依が、ふと思い出したように聞く。

「アイオーンに、アリスベルさんより強い兵っているの?」


 アイダの表情が、少しだけ真面目になる。

「いる」

 一拍。


「……いや、同格か」


 ルビィたちの空気が変わった。


 アイダは指を三本立てる。

「三体いる」

「人間ベースで失敗したからな」

「見た目は、もう人間じゃない」


 結依が引き気味に呟く。

「うわぁ……絶対強いじゃん、それ……」


 アストラが静かに補足した。

『高位戦闘個体の存在は、ルミナス号側でも未確認情報です』

『危険度更新の必要があります』


 ダイヤが少し考え込み――そして聞く。

「ねぇ、アイオーン・ゼロって?」


 アイダは天井を見上げながら答えた。

「アイオーンの本体AIだよ」

「総合知性体」

「この星のアイオーン勢力、その中心だ」

 一拍。


「人間管理を宣言したとき、ホログラムで姿を現した事がある」


 ルビィが聞く。

「どんな姿だったんですか?」


 アイダは少しだけ目を細めた。

「少年だった」

「見た目だけなら、普通のガキみたいだったよ」

 静かな沈黙。


 だが、その空気を破るように。

 フェザーが「きゅう……」と鳴いた。


 ダイヤが笑う。

「フェザー、難しい話飽きた?」

「きゅっ」


 その瞬間。

 ――――ヴゥゥゥゥゥゥン……。

 都市全域へ、重いサイレンが鳴り響く。

 全員の視線が窓へ向く。


 そして、夜の闇に光が戻る。


『昼間への移行を確認しました』

 アストラが告げる。

『周辺ネメシス反応、減少しています』


 アイダが立ち上がった。

「……出発するぞ」


 全員が静かに武器を手に取る。


 だが、彼らはまだ知らない。

 この星のさらに深部で。


 総合知性体《アイオーン・ゼロ》そのものが、すでに“異星人たち”へ興味を示し始めている事を――。


 ――A班は外が明るくなり移動を始めていた。

◆崩壊都市・昼区域

 ――ブォォォォォン……。

 昼の崩壊都市を、A班のセグダが走り抜けていた。


 砕けた道路。崩れた高架。静まり返った廃墟。

 遠くでは、時折黒い影がビルの上を横切っていく。


 サンチェスが周囲を見回しながら言った。

「しかしまぁ……昼は昼で静か過ぎて嫌だな」


 サイモンが笑う。

「分かる」

「逆に何か来そうなんだよな」


 後方では、アシュリーが端末を確認していた。

「周辺反応は少なめです」

「このまま進めれば――」


 その瞬間だった。

 ――ギュンッ!!

 黒い影が、高速でテストの前を横切る。

「ッ!?」


 次の瞬間。

 ――ドゴォォォォンッ!!

 先頭のテストのセグダへ、凄まじい衝撃が叩き込まれた。

 車体が横転。

 アスファルトを削りながら吹き飛ぶ。


「テスト隊長ッ!!」

 サンチェスが叫ぶ。


 レオが即座に飛び降りる。


 同時に、サイモンも反応した。

「アシュリーちゃん、下がれ!」

 サイモンはアシュリーを庇うように前へ出る。


 砂煙。

 破片。

 そして。

 崩れた道路の中央へ、二つの黒い影が静かに降り立った。


 細身の機体。長い尾。青白いレーザー短剣。

 レヴロスト・レイス。


 テストが瓦礫を払いながら立ち上がる。

「……くそ」

「いきなり来やがった」


 レオが駆け寄る。

「大丈夫か?」


「問題ない」

 テストは短く答え、視線を前へ向けた。


 二体のレイス。

 どちらも微動だにせず、こちらを見据えている。


 サイモンが顔をしかめる。

「こいつ、速ぇやつだよな?」 「俺、速ぇのはあんま得意じゃねぇ」


 レオが冷静に言った。

「サイモンとサンチェスはアシュリーを守ってろ」


 そして。

 テストが低く言う。

「レオ」

「やるぞ」


「ああ」


 次の瞬間。

 ――ギュンッ!!

 レイス二体が同時に動いた。

 青白い軌跡。


 レオは即座に後退。

 レーザー短剣が目の前を掠める。


 同時に、テストが前蹴り。

 ――ドゴォッ!!

 一体のレイスが吹き飛ぶ。


 だが、もう一体が壁を蹴って背後へ回り込む。


「後ろだ!」

 サンチェスの叫び。


 レオが振り向きざまに腕で受ける。

 ――ギィィン!!

 衝撃。

 腕が痺れる。

「……速いっ」


 レイスは止まらない。

 壁。瓦礫。崩れた車両。

 全てを利用し、縦横無尽に高速機動を繰り返す。


 一方、テストは真正面から突っ込んでいた。

 拳撃。

 ――ドゴォォッ!!

 

 レイスが後退。

 だが、空中で体勢を立て直す。

 そのまま尾の刃が、テストの首元を狙う。

 テストは紙一重で回避。


 そして。

 互いに、一瞬だけ距離が開く。

 静かな睨み合い。


 そのときだった。

 ――ギュンッ。

「……?」


 何かが動いた。

 だが、誰も見えなかった。


 次の瞬間。

 ――ズバァァァッ!!

 一体目のレイスが、突然両断された。

「なっ!?」


 さらに。

 ――ガァァン!!

 二体目の頭部が吹き飛ぶ。

 レイス二体が、ほぼ同時に崩れ落ちた。


 静寂。


 全員が動きを止める。

 そして。

 黒いレイスの残骸の向こう。


 そこに、二つの“赤い影”が立っていた。


 赤い装甲。

 赤い尾。

 赤い光学眼。

 だが形状は、明らかにレヴロスト。


 サンチェスが呆然と呟く。

「……レヴロスト、だよな?」


 サイモンも目を細める。

「赤いぞ……?」

「仲間割れか?」


 アシュリーが即座に端末を確認する。

「該当データ無し……!」

「過去に赤いレヴロストの情報はありません!」


 すると。

 テストが低く言った。

「……ヴェイルだ」

 一拍。


「レヴロスト・ヴェイルの赤だ」


 その瞬間だった。

 ――ギュンッ!!

「ッ!?」

 一体の赤が、消えた。

 いや。

 速すぎて見えなかった。


 次の瞬間。

 レオの目前へ、赤いヴェイルが出現していた。


 尾が唸る。

 ――ドゴォォォッ!!


 レオは咄嗟に両腕で防御。

 だが。

「ぐっ……!?」

 凄まじい衝撃。

 身体が吹き飛ぶ。

 そのまま廃ビルへ激突した。

 ――ガァァァン!!

 壁が崩落。

 瓦礫が降り注ぐ。


「レオ!!」

 サイモンが叫ぶ。


 テストの表情が険しくなる。

「……速すぎるっ」


 アシュリーの声が震えた。

「黒のレヴロストより……遥かに強い……!」


 二体の赤いヴェイルは、静かにA班を見据えていた。

 まるで。

 獲物の強さを測るように――。


 黒きレヴロスト・レイスを瞬殺した、正体不明の赤きレヴロスト。

 その異形の兵器が、ついにA班へ牙を剥こうとしていた――。


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