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【第八章】 因果の果て ③

2026年3月20日に完結します。

おそらく、個人的な理由で、この小説の公開は2026年4月1日から一時的に非公開にします。


☆暗殺予定日時


――アクア暗殺の日


◆場所は中央コロニー広場


【星間平和協定10周年記念式典】


各コロニー代表が集まり、未来協定の再締結を宣言する象徴的な日。


アクアは主賓。

民衆の期待を一身に集める存在。


広場は人で埋め尽くされている。

花束を持つ子ども。旗を振る群衆。

報道ドローンが空を舞う。


アナウンスが響く。

「これより、特別顧問アクア氏が会場入りします!」


歓声。


車列が到着。ドアが開く。

アクアが姿を現し、笑顔で手を振る。

壇上へ向かう赤い導線。


その“途中”。群衆との距離が最も近い瞬間。


空は雲ひとつない。

それが、不吉だった。


アクアはフェザーを腕に抱き、ゆっくりとコロニー広場へ向かって歩く。

人々は距離を保ち、祝福と敬意の視線を向けている。


14時17分、暗殺予定3分前。


高所、4カ所。

レオ、結依、ルビィ、ダイヤ。

それぞれが配置につく。


『対象エリア、異常なし』

アストラの声は冷静だ。

しかし――

『……待ってください。変です』

『容疑者2名、所在不明。顔認証、動体解析ともに該当なし』


全員の息が止まる。視界の外、予想外の位置からの射撃の気配。


レオが低く言う。

「見落としはないのか?」


『ありません。ですが、私のセンサーの外にいると推測されます』


つまり、視界の外。

――想定外。残り、1分。 


アクアは暗殺のスポットへ向かう。フェザーが小さく鳴いた。

その瞬間。


《上空、高速移動体を検出》

アストラの声が一段低くなる。

『武装ドローン――狙撃型』


結依が即座にスコープを上げる。

「え?ドローン……あれに違いない」

ドローンは音を抑え、死角から滑り込む。


そして――『さらに上方』

アストラの報告が重なる。


『高層軌道塔、最上部。熱源反応。狙撃手、もう1名確認しました』


全員の呼吸が止まる。 


4カ所の高所より、さらに上。

完全な盲点。


「二重構えか……」

レオの声が低くなる。


『歴史通りの入射角なら、ドローンからの零間二射と想定されます』……その時間が来る。

14時20分……風が止んだ。


アクアは足を止めない。

フェザーを抱いたまま、予定地点へ踏み込む。


結依の指が引き金に触れる。

ルビィが息を整える。

ダイヤが視線を上げる。

レオが通信を絞る。


『アクアさん、ドローンのスナイパーに気をつけて』

アストラの声。


一瞬。


みんなに緊張が走る。


『発射予兆――きます!』

アストラの声と同時。

閃光。


ドローンからの衝撃波が2つ――零間二射だ!!


フェザーが、跳んだ。

アクアの腕から滑るように宙へ。

白い軌跡が交差する弾道へ割り込む。

硬い金属痕に似た音。


1発はフェザーが防ぐ。

もう1発は、わずかに軌道が逸れる。


アクアは倒れる。

群衆から悲鳴が上がった。


上空、ドローン上のノア。

『……手応えがない』

舌打ちする。

『標的、倒れたが貫通感なし。追射したいが、あの動物が邪魔だ』

ノアとエリオが無線で会話する。


高層塔の狙撃手が照準を合わせ直す。

『俺がやる』エリオが静かに言った。


そのときだった。

結依は瞬時にスコープを上げ、瞳が細くなる。

「――よし」

心拍は落ち着き、指先は冷たく硬い。全神経が標的へ吸い込まれる。

息を整え、狙いを定める。

1発の閃光と小さな反動。


高層塔のエリオの肩へ正確に弾丸が当たり、ライフルが傾く。

もう1発、ドローン側スナイパーの肩を貫く。


「両名の利き腕を潰した」

結依の声は小さいが、冷徹。動揺も恐怖もない。


焦りを見せるエリオの肩越しに、結依は、更に弾丸を連続で送り込む。

銃身、照準、トリガーガード――すべて正確に破壊され、エリオはほぼ丸腰に。


それでも抵抗するエリオ。

左腕で撃とうとするが、またしても結依の1撃で止められる。

金属が弾け、武器は落下。


「まだ抵抗するのか……?」

結依は目を細め、呼吸1つ乱さず次の攻撃を見据える。


その時、エリオの背後からレオが近づく。

影が差した刹那。

振り向くより早く、顎に重い一撃。


妻のアクアを殺そうとしたエリオに容赦なし。

エリオは抵抗しつつも、レオの連撃でバランスを崩す。

ジャブ、フック、膝蹴り。レオの体がしなやかに流れる。


最後に、エリオの視界の外から跳んできた左ハイキック。

――閃光が、エリオのテンプルを直撃……意識を奪われる。


レオは無言で拘束具をかけ、エリオを確保。


『レオさんがエリオを確保しました。ノアも右肩損傷確認』

アストラが淡々と報告。


上空ドローンのノアは、肩を撃たれながらも高度を下げる。

半自動モードへ移行。機体は暴走気味に旋回する。

「エリオが……確保? くそ……だが、まだ終わってねぇ!」


結依が、静かに呼吸を整える。

スコープの中で世界が止まる。

そして――3発。


もはや零間三射だった。


1発目、エンジン。

2発目、センサー。

3発目、推進部。


乾いた衝撃が連なり、機体が痙攣する。

バランスを失ったドローンは火花を散らしながら高度を失い、

そのまま中央広場脇へと墜落した。

爆ぜる音。煙が噴き上がる。


ルビィとダイヤはすでに走り出していた。

少年姿のダイヤが先行し、ルビィがわずか後ろを取る。


煙の中――倒れたはずのノアが、ゆらりと立ち上がる。

左手で拳銃を引き抜き、発砲。


ルビィは横へ流れるように弾丸を外す。

その隙に、少年姿のダイヤがあえて一歩、ノアへ近づいた。

銃口が、迷いなくダイヤへ向く。

引き金が引かれる。

ダイヤは体を、わずかに横へ滑らせる。

弾丸は空を裂くだけ。


次の瞬間――

ルビィの1発。

乾いた銃声。


ノアの拳銃が、火花を散らして弾き飛ばされた。


「終わりよ」ルビィ。


しかしノアは懐からレーザーブレードを展開し、突進。

ブレードが伸びる。

細長い刀身へ変形。


ノアはダイヤへ突進。

だが――

ダイヤは全く慌てない。

体を半歩ずらし、刃を紙一重でかわす。

2撃、3撃、4撃。

すべて空を切る。


ダイヤは落ち着いて一歩を引き、ブレードを更に紙一重でかわす。


「遅いよ」ダイヤ


何度も振り下ろされる左腕を、軽く右腕で払い、瞬時に左手で関節を押さえる。

続いて、ノアの左脚を払って重心を崩し、合気道のように宙を舞わせ、地面に叩きつけた。


そのとき、アストラが駆けつけ、すぐに光の拘束具で確保。


息が詰まる音。


その首元に、光の拘束具。

アストラが到着。

『ノアの確保完了』



時間は少し戻り。

――その数分前。


空は、雲ひとつなかった。


ノアの零間二射…


フェザーが弾道を防いだ直後。

アクアは倒れ、胸元が――赤く、弾ける。

血が飛ぶ。

白い衣装が一瞬で染まる。


群衆の悲鳴。

誰かが叫ぶ。

「アクアさんが撃たれた!」

アクアの体が崩れ落ちる。


フェザーが鳴き声を上げる。


混乱。

パニック。

人波が崩れる。


医療班突入「道を空けろ!」

担架が滑り込む。


白衣姿のサイモンとアリエス。

完璧な手際。

「意識なし! 出血多量!」

わざと聞こえるように叫ぶ。


アリエスが胸元を押さえる。

手袋が、真っ赤に染まる。

血糊。

事前に仕込んだ衝撃反応パックが、倒れたのと同時に作動した。


サイモンが小声で。

「呼吸、安定。パルス正常」

「声、抑えて」

アリエスが低く返す。

担架が持ち上げられる。

アクアはぐったりと動かない。

完璧な“死にかけ”の演技。


群衆は泣き崩れる者、怒号。

通信網が一斉に騒ぎ出す。


速報が走る。

《アクア博士、狙撃され重体》

空気が凍る。世界が揺れる。


アンビュランス内部――

ドアが閉まる。

音が遮断される。


数秒の沈黙。


すこしして。

アクアが、薄く目を開ける。

「……成功?」


サイモンがニヤリとした。

「大成功だ。今ごろ黒幕は祝杯だろうな」


アリエスが小さく言う。

「本当に……心臓止まるかと思った」

そして

「二度とこんな作戦やらないで」


アクアはアリエスを見つめて小さく頷いた。


アリエスはモニターを確認しながら言う。

「通信が跳ね上がってるわ。内部リーク網が動いてる」


フェザーが胸元に戻り、小さく鳴く。

外ではサイレン。

車内では静かな笑み。


世界は今、

“アクアは撃たれた”と信じている。


そして、それは――

黒幕を引きずり出すための、最高の餌。


アクア緊急速報が流れた。

《アクア、搬送先で死亡確認》

その一文が、全コロニーを貫いた。


広場は沈黙。

泣き崩れる人々。

祈る者。


アクアが倒れた映像が繰り返し流れる。

誰かの嗚咽。

平和の象徴は、撃ち落とされた。

世界は、そう信じた。


◆別のコロニー・上層区画


薄暗い部屋。

巨大な窓の向こう、都市の光。


そこに立つ男。

首謀者、カストル・ヘルナンデス。


彼の前のホロ画面に、死亡速報。


数秒の沈黙。


そして――

「――終わりだ」

口元が、ゆっくり歪む。


グラスを持ち上げる。

「脆い理想だったな、アクア」

「理想はいつも、血に弱い」


控えていた側近が頭を下げる。

「計画、成功です」


カストルは笑う。低く、満足げに。

「これで議会は空席だ。混乱は長引く。我々の“安定案”が通る」


彼はホロ通信を開く。

「第二段階へ移行しろ」



◆秘匿区画


その通信――アストラが、掴む。


「釣れたな」レオが短く言う。


ホロ画面に映るのは――


暗号通信の解析ログ。発信源。資金移動。ドローン購入履歴。狙撃手への送金。


すべて、一本の線で繋がる。


ルビィが冷静に告げる。

「完璧ね。死亡確認後、即座に資金送金」


アストラが続ける。

『カストルの個人認証キーと一致。証拠、確定です』


レオの目が冷える。

「表に出す」


緊急ニュースが流れている。


黒い背景。アクアの写真。

司会者が沈痛な面持ちで語る。

「未来を照らした光は、凶弾によって――」


その瞬間。


画面がノイズを走らせる。

映像が切り替わる。


緊急ニュース番組に突然の割り込み。


無機質な室内。

中央に立つのは――

アリエス・ミラノ。


左右に、拘束された2人の狙撃手。

そしてその隣には、ルビィとアストラ。


『放送回線、掌握完了』

アストラの電子音声が響く。

スタジオが騒然となる。


アリエス・ミラノの声明。

「この放送は緊急割り込みです」

静かで、揺るがない声。

「私の義理の姉。アクア・ミラノ暗殺事件は、単独犯ではありません」


背後のホロスクリーンに映し出されるのは――


資金移動記録。


ルビィが、一歩前に出る。

「その資金ログ、撃たれる直前に押さえたものです」


画面が切り替わる。


ルビィの端末から吸い上げられたリアルタイム記録。

「あなたは、死亡確認から3秒後に送金した」


一拍。


ルビィがはっきりと言う。

「黒幕は――カストル・ヘルナンデス」

世界中の通信網が一斉にざわめく。


アリエスが静かに、だが強く続けた。

「正義を語る資格なんてない」

前髪から覗く瞳。

「アクアは、あなたたちにとって邪魔だっただけです」


その声に、怒りと悲しみが滲む。

だが涙はない。


世界は今、“本当に失った”と思っているのだから。


アストラが追撃した。

『証拠は全議会および報道機関へ同時送信済み』

『改ざんは不可能』

『逃走経路、予測完了』

冷徹な宣告。


ルビィが言う。

「包囲は、もう始まっています」


最後の画面で、アリエスが一礼する。

「これは復讐ではありません」

「事実の公開です」


映像が暗転。そして表示される一文。


《真実は消せない》


放送終了。


そして――

ダイヤ、結依、サイモンは拘束した狙撃手を移送する。


カストルのもとへ、警察の包囲網が迫る。

世界は怒りに震え、希望を失ったまま、真実だけを手にする。



◆カストルの私室


――数分前


巨大な窓の向こうに広がる都市の光。

追悼特番を眺めながら、カストルは静かにグラスを回していた。

「民衆は単純だ」

だが――

画面が乱れる。割り込み。

アリエスの姿。


拘束された狙撃手。資金ログ。

自分の認証キー。


数秒、理解が追いつかない。

「……何だ、これは」

側近が青ざめる。

「閣下……認証コードが、公開されています」


ルビィの声が響く。

『黒幕は――カストル・ヘルナンデス』

グラスが、止まる。


アストラの機械音声。

『証拠は全コロニーへ同時送信済み』


カストルの顔から血の気が引く。

「消せ。今すぐ回線を止めろ!」

「止まりません! 全域分散送信です!」


ホロ画面に、警備艇の接近映像。


「閣下……包囲網、形成中です」

「馬鹿な……!」

カストルは机を叩く。

「私は議員だぞ! 私を逮捕する権限など――」


扉が爆音とともに開く。


武装治安部隊。

「カストル。暗殺教唆、共謀、国家転覆未遂の容疑で拘束する」


「ふざけるな!! 罠だ! 捏造だ!!」

カストルは抵抗しようとするが、腕を押さえられる。

床に膝をつく。


その瞬間――


緊急生中継で、画面が再び切り替わる。


《特別速報》

治安部隊に拘束されるカストルの姿。

両腕を押さえられ、叫んでいる。

「私は嵌められた! アクアは死んだ! それで終わりだ!」


その言葉に、世界中の視聴者が息を呑んだ。

その言葉が、決定打となった。


司会者が震える声で言う。

「……現在、カストル議員が拘束されました」


カストルは最後に振り返る。

「民衆はまた騙されるぞ!! 理想など――」

その声は、拘束音でかき消される。

手錠が閉まる音。

重い金属音。


画面が固定。

画面下に、赤い速報テロップが走る。

《カストル議員、逮捕》


都市の光は変わらない。

だが、支配者は崩れた。


アクアは“死んだ”まま。


世界は、

希望を撃った者の正体を知った。


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