【第五章】 ジュラシックアース ④
2026年3月20日に完結します。
おそらく、個人的な理由で、この小説の公開は2026年4月1日から一時的に非公開にします。
☆規格外、来襲
砂煙の荒野で、群れが逃げ惑う中、超巨大恐竜の巨体が、空そのものを塞ぐように視界を覆った。
地面を踏み鳴らし、その振動がルミナール号まで伝わる。
尾を振るたび砂煙が舞い、小型恐竜たちは逃げ惑う。
結依は指示を出す。
「全員、配置につけ!超大型だ、油断するな!」
しかし、クルーたちの動きが追いつかない。恐竜の圧力は圧倒的で、誘導作戦だけでは制御しきれず、群れの一部が前線に押し寄せてくる。
超巨大恐竜に気がついたカイトとエアロが前に出る。エアロは肩を貸しながら、カイトを支える形で立つ。
「みんなが危ない……」エアロが心配そうに言う。
「大丈夫、任せろ」
カイトの声は静かだが、目は鋭い。
2人の意志が重なり、空間が歪む。
見えない衝撃が放たれる――
だが、超巨大恐竜の巨体にはほんのわずかの影響しか与えられない。
カイト
「……大きすぎる」
尾を振り、牙をむき出しにして襲いかかる超巨大恐竜。
圧倒的な力で、誘導作戦で築いた前線が一気に崩される。
小型・中型恐竜も巻き込まれ、ルミナール号の周囲は混乱の渦に包まれた。
踏み鳴らすたび、船内に衝撃が走る。
音に反応したルビィが目を覚ます。
「……何ごと!?」
目をこすり仮眠室を飛び出すと、アストラの左手首が、ルビィの腕に絡みつく。
ルビィ「アストラ、後にして!」
そして、アストラには目もくれず、外に飛び出した。
船内に残ったアストラの左手首はホログラムで文字を出した。
《ダイヤからの連絡》
ホログラムの文字が静かに点滅していた…。
ルビィがハッチから出て、視界に映ったのは、1匹の超巨大恐竜が群れごと前線を押し潰す光景だった。
ルミナール号の外壁がきしみ、クルーたちは散開して耐える。
「ヤバイ…この1匹で、壊滅寸前だ」結依の低い声が緊張を帯びる。
カイトとエアロは必死に力を振るうが、超巨大恐竜を吹き飛ばすまでには至らない……。
荒野には砂煙と恐竜の咆哮、そして2人の超能力が放つかすかな衝撃波だけが、戦場の不安定な空気を震わせていた。
ルビィはカイトとエアロのもとへ駆け寄った。2人の息があがっていた。
「2人とも、少し休んで…ここは私たちで何とかする!」
慌てふためくクルーたちの声が飛び交う。
アンデルが大声で指示を叫び、
ガストは無鉄砲に突っ込み、
グリムは冷静に構える、
シロッコは恐竜の動きを確認しつつ距離を保つ。
ルビィは無線を取り、結依に状況を確認する。
「結依、副長!状況は?!」
「前線が押されてます!超巨大恐竜が、もう…!」
結依の返事は、少し諦めが混じる。
ルビィ
「クルー全員に命令します。被害を最小にするため、一度撤退しなさい。安全な場所で態勢を立て直します」
結依たちは息を呑むが、仕方なく撤退の指示を受け入れる。
視界の端で、恐竜の咆哮が大地を震わせる。前線は崩れ、絶望感が戦場を包む。
そのときだった。
空に銀色の影が現れた。
ノヴァ中型戦艦が現れた。
ジュラシックアースの戦場に、突如姿を現す。
中型戦艦から人影が飛び出した。
それは、飛行用装備とバトルスーツを纏った200人の精鋭軍人たちだった。
武器を構え、超巨大恐竜に向かって突進する。
軍人たちの一斉攻撃で、超巨大恐竜は初めて後退し、力を削がれていく。地面を蹴る足も、咆哮も次第に鈍る。
その隙に、カイトが前に出た。エアロが肩を貸し、支えながら力を集中させる。
カイト「いけーーー!!」
エアロ「うぅぅっ」
空気が裂けるような振動、見えない衝撃が超巨大恐竜の腹部に直撃。
轟音と共に、巨体が宙を舞い、地面に転がった。
戦場に、堰を切ったような歓声が湧いた。ついに超巨大恐竜は押され、後退していく。
前線の恐竜たちも、混乱の中で散開。
ジュラシックアースの荒野には、一瞬の静寂が戻った。
☆再会と増援
超巨大恐竜を撤退させた後、ノヴァ中型戦艦の影が、灼ける大地の上に静かに降り立った。
着陸後、最初に中型戦艦から降りてきたのは、アストラ本体だった。
ルミナールのハッチから、左手首がアストラ本体へと戻る。そしてアストラの左手首がカチャカチャと音を立てた。
アストラ
『ダイヤさんにこう言われました』
『「アストラはルミナール号のクルーです。君の真のクルー、ルビィと結依はジュラシックアースにいます。だから、君も向かいなさい。2人があなたを持っています」と』
無機質に言った。
アストラ『最後に…「通信用の右手首は置いて行け」、と言われました』
ルビィと結依は目を見開き、少し身を乗り出す。
ルビィ「アストラ…久しぶり!会えて嬉しい!」
結依「やっと会えた…でも、やっぱりアンドロイド感、満載ね」
アストラの目が光り、無表情のまま答える。
『感情表現:不要。感動:記録済み』
ルビィ
「…え?感動してるのに?」
結依
「そこは、もっと、喜んでよ」
アストラ
『感情反応:検出。再会による感動:確認。しかし適切な表現方法が見つかりません』
ルビィは小さく息を吐き、結依は苦笑する。
その時、戦艦の扉が開き、1人の男が現れ、ルビィと結依に話しかけた。
「初めましてぇ〜、船長、副長。私はクラウドォォ〜。ルミナール号クルーとは初対面ですねぇ〜」
クラウドの背後には、惑星アークス各国から集められたエリート軍人200名がずらりと整列している。
ルビィ
「え…こんなにたくさん!」
クラウド
「持参物は多岐に渡りますぅ〜。物資もありますがぁ〜、注目すべきはこれですぅ〜」
クラウドは腕を広げ、組立式の出口用ワープゲートの部品とワープドア約500枚を示す。
結依
「えっ、500枚……?設置するの、私たち?」
クラウドは淡々と、でも少し得意げに話し始めた。
「基本的にはサポートだよぉ〜。でも設置手順は少し複雑でぇ〜、間違えるとゲートが使えないよぉ〜」
ルビィが近づき、アストラの肩に手を置く。
「アストラ、あの〜、無事に来てくれてありがとう」
アストラ
『喜び:理解しています。しかし私の行動プログラムには、笑う・泣く・抱きしめる等の表現がありません』
結依
「……やっぱり無機質」
ルビィ
「ええと……でも、そこがアストラらしいね」
アストラは、無表情のまま軽く肩を動かして、ルビィの手を受け止めた。
『言語応答:了解。再会できたことを、私は嬉しいと判断しています。しかし…温もりを感じる機能はありません』
ルビィ
「ちょっと面白いよ、アストラ」
クラウド
「注目ぅ〜、組立式ワープゲートの説明を始めますぅ。まずゲートフレームを水平に配置しぃ、ワープドアを順番に設置しまぁ〜すぅ」
ルビィと結依は説明を聞きつつ、久々に会えたアストラを時折見つめる。
結依
「あの無機質な感じなのに、やっぱり戻ってきてくれたことは嬉しいな」
ルビィ
「ええ。戦うだけじゃなくて、こうやって一緒にいるのが、やっぱり安心する」
アストラは無言のまま、肩の軽い揺れでルビィを支え続けていた。
感動とコミカルが入り混じる、ルミナールクルーらしい静かなひとときだった。
☆誘導作戦
◆ジュラシックアース前線、ルミナール号周辺
ルビィは3日間の不眠不休の疲れが取れず、また仮眠室で休んでいた。
劣勢だった陣地拡張作戦も、今日から動き出す。
中型戦艦で到着したクラウドとアストラが、現地で戦況を確認。ホログラム越しではなく、直接クルーに指示を送る。
アンとゼン、バルンの科学者チームの知識も加わり、恐竜の習性などを利用して、戦わずして誘導する作戦が再び実行された。
アストラが作戦を指示した。
『まず小型・中型はこっちの餌で誘導、超大型は地形制御で行動範囲を限定してください』
クラウドの声が響く。
「逃げ道をひとつにするんだよぉ〜!」
思わず叫ぶその声に、アンとゼンも思わず笑みを浮かべる。
バルンは器具を操作しながら群れの動きをモニタリングする。
グリムは冷静に陣頭指揮。
「撃退は必要最小限、誘導に徹する」
アンデルは大声で叫ぶ。
「さあ、動け!恐竜に休憩はないぞ!」
シロッコは地形を確認し、
「無駄な殺傷は避ける。誘導ルートを守れ」
ガストは少しおどけつつ。
「俺も誘導の手伝いだ、間違って攻撃しないようにな!」
数時間後
「だからぁ、違うってのぉ〜!」
大きな声でルビィは眠りから覚め、船外を見た。
目の前の騒動を見て、思わず心の中でツッコミ。
(クラウドさん、また絶叫してる…)
エアロも船の端から肩をもたれて見守る。
「あの人たちが来てから、戦闘が減って助かるわ。」
カイト「そうだな。」
作戦は続く。
恐竜たちは最初こそ混乱していたが、徐々に指定ルートへ誘導される。
軍人たちは飛行用装備とバトルスーツを駆使して群れを制御。
ルミナール号クルーと連携しつつ、指示が飛び交う。
「右の湿地へ!」
「こっちのルートに誘導!」
「逃げ道はひとつだけだってばよぉ〜!」
クラウドが叫ぶたび、緊迫感と共に現場は少し騒がしくも楽しい空気に包まれる。
ルビィは心の中でつぶやく。
(すごい勢いで進むけど……恐竜より、人間のほうが落ち着きないかも)
エアロも小さく笑いながら、
「おじいちゃん、あの人の叫び、どうにかして」
4日目、作戦は加速。
超大型恐竜も地形により進路を制限され、無理な衝突は避けられる。
エアロとカイトは船外で見張りを続け、必要に応じて力を使い作戦を補助する。
ノヴァ中型戦艦到着から7日目。
誘導作戦は無事に完了を迎える。
恐竜は殺さず、安全に指定区域へ移動。陣地は順調に拡大され、疲労困憊のクルーたちも安堵の表情を浮かべる。
「ふぅ、やっと平和な顔ができるだすな」アンが呟けば。
ゼンが「クラウドさん、また絶叫してたっす……」と笑い。
現場にはわずかな余韻の笑いが残った。
ルビィは肩で息をしながら、エアロと目を合わせる。
「まあ、無事に終わりそうね」
エアロも小さくうなずき、2人で肩を並べて深呼吸する。
心の中で、ほんの少しだけ戦場の騒動が愛おしく思えた。
☆ミッション達成
明るすぎる空の下。
恐竜の気配は遠のいていた。
アストラ
『ミッション進捗:陸地確保率50%。――ルミナール号の任務条件、達成』
一瞬の静寂。
結依「終わった?」
ルビィ「終わった、って言っていいね」
アンデルが大声で叫ぶ。
「よっしゃぁぁぁ!!ミッション成功だ!!」
その声に、あちこちから小さな安堵の息が漏れる。
ガスト
「いやー、生きてるって最高っすね。地面が揺れてないのがこんなに幸せだとは」
グリム「同感だ」
その横で、シロッコが急に饒舌になり声のトーンもいつもより高めで早口で話を始めた。
シロッコ
「しかし、今回の布陣は理想的でしたね。前線と後衛の距離感、火力配分、誰が見ても――」
ガスト「ちょ、ちょっと待て」
結依「……シロッコ?」
ガスト「急にどうした? さっきまで寡黙キャラだったよな?」
アンデル「誰だお前!!」
シロッコ
「え? あ、いえ……任務が終わると、こう、緊張が抜けるというか……」
グリム「……素が出たな」
ルビィ「ふふ、意外とおしゃべりなのね」
シロッコは少し照れたように咳払いをした。
そのとき。
結依「……ガスト?」
ガスト「はい?」
結依「……あんた、顔どうした?」
ガスト「え?」
ルビィがじっとガストの顔を見る。
ルビィ「……あれ?ガスト、ヒゲなくない?」
ガスト「は?」
慌てて頬を触る。
ガスト「……ない!!
俺の立派なヒゲが!!」
アンデル「剃ったのか!?似合ってるぞ!!」
ガスト「剃ってねぇよ!!昨日まで確実にあったんだよ!!」
結依「じゃあ、自然に?」
ガスト「……抜け落ちた?」
一瞬の沈黙。
グリム「……薬の副作用、だな」
バルン「ひ、ひげが自然脱落…?」
ルビィ「それ、人体的にセーフなの?」
ガスト「俺が一番聞きたい!!」
そこで、グリムが静かに口を開く。
「……実は、俺も」
そう言って、グローブを外す。
次の瞬間。
ルビィ「…え?」
結依「……光ってる?」
グリムの爪が、淡くキラキラと光を反射していた。
アンデル「宝石か!?」
ガスト「ちょっと待て、なんでそんなファンタジー副作用なんだよ!!俺はヒゲ消失だぞ!?」
グリム「触感は、特に変わらない…ただ、光る」
シロッコ「夜間作業に便利そうですね」
ガスト「フォローになってねぇ!」
視線がルビィに集まる。
ルビィ「……なに?」
結依「あなたは?」
ルビィ「……まだ、何も」
無意識に、自分の手を見つめる。
ルビィ「……それが、逆に不安なんだけど」
バルン「副作用が“遅れて出る”可能性もありますからね」
ガスト「やめろ!!その言い方一番怖ぇ!!」
アンデル「次は何だ!?角が生えるのか!?」
ルビィ「それだけはやめてください」
アストラ『補足情報。薬の副作用は個体差が大きい。予測不能』
ガスト「一番言っちゃダメなやつ!!」
皆がどっと笑う。
結依は小さく息を吐いた。
結依「でも、全員動けてる。
それでいい」
ルビィ「うん。ミッション、ちゃんと成功したしね」
恐竜の咆哮は聞こえない。今は、確かに“終わった”空気があった。
ガスト「なぁ、ヒゲ……そのうち戻るよな?」
グリム「……戻らなかったら、俺の爪で慰めてやる」
ガスト「慰めにならねぇよ!!」
笑い声が、静かな大地に広がっていった。
――ただ1人、ルビィだけが、
まだ出ていない“自分の副作用”を、少しだけ気にしていた。
ジュラシックアース編終了です。
色々と個性あるキャラが登場して、書いてて楽しかった。




