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片倉トーリの日常なる非日常  作者: 十ノ口八幸
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不条理と条理の日常~少年~情報収集

学園を擁するこの国。レセンシア。

大陸南東部に位置するこの国は周囲を山に囲まれ他国との交易には物理的な移動が難しく、定置に設けられたゲートを通ることが唯一の移動手段となっている。

空の移動方法も確立し世界に浸透しているが囲む山は飛行高度限界以上の高さであり更に海から吹き込む風が上空で暖気や寒気と打つかり気流を乱すように厚い雲を形成し常時山頂付近は雲に覆われている。

覆われていない場所も存在するが先に述べたように(そび)える高さは生身で越える事は不可能である。

それ故にこの国に学園は造られたと言っても過言ではない。

なぜなら説明した通りに移動にはゲートしかなく、国を出るには上層部の許可複数が無ければならず、ゲート使用にも規則があり簡単には無理である。

ならばと徒歩による山の踏破も在るのだが、そもそも山は幾つもの異なる生態系が形成され盛衰を繰り返しながらを変化を繰り返してきた。そのサイクルは非常にして異常に速く。在る地点では1日にして生態系が変わっていたという記録まで残っている。最長であっても五年持てば良い方である。

その栄枯盛衰が激しく、何時なんどき変化するかも予測できないために徒歩での移動自体が国から禁止されているのだ。だがそれを抜きにしても未だに踏破しようとする者は後を絶たない。何故なら希少に貴重な万能に近い物が数種類生息しているのだ。

中でも太古より続き、現在であっても年に数種類の新種が発見され最も種類の多い種。マゴリカ。

そして幻のと呼ばれる種には完全万能を司るとして古来より珍重されていたが、近代においては乱獲のため本当に幻想書籍にしか記述はない絶滅種とされている。

だが極希に近縁種としてだが、カルマードリカという種に似た効用が見つかり各国は乱獲を阻止するための条約を発布した。

数年前である。

発布してから数年しか経過していないということはまだまだ抜け穴があるということ。

関連した違法もまた年に数件は存在する。

ならばと人工的に栽培しようとするが、これまで一度たりとも成功した事はなく、確立どころか目処すら立っていないのが現状である。


重苦しい空の下。項垂れる一人とキラキラ輝かせる瞳を向ける一人。

その反対には一人の。いやこの場合は一人ではないかもしれない。

人では無いのだから。

「さて長々と説明したが君達が採取しようとしていたカルマードリカだけどね、この一帯では全て取りつくされてもう無いよ。近隣も同じだ。何せ発布するのに数年要して今でも違法採取が後を絶たないんだ。規制の穴を突かれたら我々ではどうしようもない。それに、彼らには大きな後ろ楯がいるから簡単には手出しできない。諦めるんだね。」

「だっはー。此処も全滅かよ。クソッ。一体なんだ。何者だよ囲ってる奴は。」

「へえ、でもさそれは朗報だよね。俺達の目的は種、じゃなく。精製した油を更にろ過したもの。なら交渉の余地はあるかもな。」

「ああ。もしかして精薬剤を求めてるのかい。なら本当に諦めなさい。あれには法外な値を附けられて簡単には買えるものじゃないよ。ましてや君達のような子供には特に。」

「ふうん。そうですか。なら交渉は不可能ですね。さ、長居はできない。出ようか。」

「おいおい。そう簡単に。」

頭を掻きながら。諦めたように返答して支度する。

「すまないね。力になれなくて。」

「いえいえ、仕方ないですよ。簡単に手に入るものじゃ無いですから。では。」

「ああ、道中気をつけて。」

別れの挨拶をしてその地区を出た。


暫く歩いて森に入ると二人は少し歩くと、姿勢を低くしながら移動して、俯せになり一本の枯れ草を各々が取り出し適当な場所に投げる。

すると同じ姿勢の何かに変貌しそのまま立ち上がると左右を見るような仕草をしてから一気に離れるように走って森の奥へと姿を消していった。

息と気配を殺し、じっとしていると。

側を数人が掛けていった。その手には生易しい物ではない物が握られていた。

気配が遠ざかっていっても暫くは動かず。気配を関知して何もないと判断してから漸く肩の力を抜いた。

「ぶっっっふうぅ。何なんだ。簡単にはいかないけどよ。薬一つでどうしてこうも。」

「仕方ない。何か裏があるのでしょう。でないと此処までしつこくはないですし。まあ何であれ、これも僕達に課せられた罰の一つ。やれやれ、先が面倒ですね。」

そうこの二人は罪人。

学生という身分をもった子供の身でありながら罪を背負い罰として現在は一つの任務に赴いていた。


簡単にいうと1ヶ月程も前。あの件に伴う学園と森の全てが大小の傷を負わされ身動きできない状態に成ってしまった。だが学園側には国からの救援で回復も速く、再建は進んでいる。しかし魔獸はそうもいかない。なぜなら人の力ではどうしようもない程の深い見えない傷を負わされていたのだ。

主曰く。

「奪われし力を戻すこと叶わず、手段の一つとしてこの落トし前は二人Ni課す。」

内容は今回の負傷した森の者達の傷を癒すための霊薬を持ってくること。それを一つの代価として軽くする事を条件にした。もちろん二人に断る権限はなく了承するしかない。従って翌日には学園を離れその霊薬を探す旅へと出たのだが。


一月以上経っても手掛かりすら満足に入らず。やっと入った情報も面倒な事に成りえるだろうと考えた。

軽い伸びをしながら。

「簡単な仕事で無いことは判ってましたけど、なんですかこれは聞いてませんよまったく。漸く手にしたのがこれだと後がどんなものか想像したくありませんね。」

「はっ。簡単に手に入ってしまったら罰にならない。そういう事だろう。ふん。」

そう二人に課された罰はこれだけではない。卒業までに課された罰は八つ。それも期間を決められており同時並行として落第は即座に退学という大罰も負荷されていた。

が、一月経っても手掛かりさえ見つからない。薬の原料は知っていても現物が存在していないのだ。

手の打ちようがなく途方に暮れるしかない。

「と諦めたとして僕達には退くという選択はない。なので次へ行きますか。」

荷物を茂みから引き出して背負い直すと次の目的地へと歩を進める。


翌日。村境へ到着して早々に騒動に巻き込まれた。

騒動といっても二人にしてみれば簡単な事。

交渉のため村長へお目通りし情報と交換で締結。むろん口約束として逃げられないため紙での契約を結び、交換して二人で元凶へと向かった。

村人数人を引き連れて。


騒動の元凶。

盗賊の隠れアジトには教えられた以上の数が待っていた。

案の定、簡単に入ることはできないが、二人にとって何の障害にもなりはしない。

村人を問答無用で黙らせるために気絶させ。縛り挙げてからアジトへ正面から強襲する。


アジトは思ったより入り組んでいて盗賊を片付けるのに時間が掛かってしまったが、どうにか全滅させてリーダーを生け捕りにしながら宝物庫を漁っても何故か目的の物が見つからず落胆する二人。

問いただそうとするが興が乗りすぎてリーダーは喋ることが出来ない状態に。

部下達も動ける者はなく仕方なしに宝物庫の出入り口を崩落させて後にした。


村に戻るとその反応は二人の予想を越えないものだった。

実はアジト強襲の前に幾つかの近隣の村や町を調べてみたのだ。もちろん、着いてきていた村人の目を僅かに盗んで極秘に。

その結果として確かに被害が確認できたがその差は余りにも大きく、一つの仕掛けをしてみた。

着いてきた村人全員に隠匿の傍受を付加し、時間が掛かるかもと思っていたのだが直後に出てくる。

そうあの盗賊の後ろに何が居るのかを。

「さて、村長。いや、領主。この事が公になったらこの辺り一帯は取り潰しだろうな。しかし交渉の猶予はありますが。どうしますかね。此方としてはご自由に。」

「何を言っているの『はい。二人は問題なく調べております。ですが此のままだと何れ』『心配する必要はない。頭を倒せる者はなく居たとしてお前達が処理するであろう。何かあろうと何時ものように騙せば良いのだ馬鹿な兵士達をな。くかかかかか。』だ、は。」

「さて、これは物的証明なのですが、如何しますか。此方はどちらを選ばれても良いですけどね。」

睨み付ける領主。

「ですが、僕達はそれほど外道でもありません。そうですね。言い値で譲って差し上げます。こう見えて背負いたくないのでこんなものは処分に限ります。譲った後にどうするかはあなた次第ですよ。」

「くっ、幾らだ。」

「そうですね。本来なら此だけあれば。」

「な、ガキが。」

「ですが、そんな大金を持っていても大変なので此くらいに負けてさらに僕達の知りたい情報を合わせてくれるなら譲りましょう。」

「わか」

「ですが、もし、偽証していたとなったら報復しますから。ね。」

その笑顔は笑顔になく。胸部へ物質的に与えるには充分であった。

交渉は成立し二人は減額したとはいえ大金を手にし、さらに有益な情報を手に入れて村を後にした。

二人を見送る村長、いや領主以下はその目に負の感情を滾らせていた。


道中にて。

「おい、良いのか。」

「なにがです。」

「あのまま不正を見逃してもし、後で俺達との繋がり何てのを言われたら。」

「ああ、その事でしたら心配なく。もう数日と経たずにこの一帯である領地は全て没収され、さらにはあの領主や関係した方々も暗く湿った牢屋へ入るでしょうから。」

「まさか、お前。」

口を吊り上げて一つの箱を取り出す。

「あの繋がりが確定した時点で国の中枢に繋げました。あの会話は最初から全部、聴かれてましたよ。僕達にはおとがめは無いと思いますけどね。」

「かはははは。そうかよ。なら問題ねえな。」

「ええ、あの様な場所で足踏みしている時間は僕達にありませんから。後は大人に任せて子供である僕達は目的遂行のために捜索を続けましょう。」

二人は歩いていく。教えられた情報を元に目的の品を手に入れるためにこの国で結構危険な場所である山岳地帯へと。

道中はかなり険しい。

だが二人は知らない。

確かに領地は没収され領主や関連した人々は捕縛された後に処刑されるという末路を辿る。

その日数は。


1日として無かったのである。


はてさて誰の差し金であろうか。

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