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片倉トーリの日常なる非日常  作者: 十ノ口八幸
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非日常・恐れの意志

目の前、真っ暗だった。

思い出す直前の事を。そう扉に近づいてノブに手を掛けると爆発に巻き込まれたのだ。 五体は満足していたが背中が痛いだけであるものの原因究明せずに進むのも危険極まりない。

と足踏み自体が時間稼ぎの一種だと考えると腹が立ってきたので勢いで穴へと突入する。

何もなく、外へと出ることが。

「出来ないのかいっ。」

口から出るツッコミ。空しく霞のように散っていく。

扉が吹き飛び大きな穴の先には同じような構造の空間。

諦めろと暗に提示しているようで。

「そうかい。そうなのかね。まあ止まれたなら正直うれしいな。」

そう進むしかない。

退くということも簡単にできようもないのだ。

あの、約束のため。

「はは。そうか。約束な。」

頬を一筋の液体が落ちていく。

「ま、しゃあない。行くか。と、そうだ。ふむふむ。なぁるへそ。」

何かを納得し。

「位置は。」

振り返り振り戻す。

「んじゃ、さよなら、だ。」

崩壊していく。何もないはずの空間が崩壊していくのだ。全てを崩し壊していく。それはつまるところ、何かを排除するということである。

全てが、白紙のように消えていく。


「ん、んんん。ホントに下らない事に悉く巻き込むなよ。俺もさぁ一つに拘ることはしないのよ。何せ忙しく、そして終わらないことを終わらせるように動いてんだから。後始末てのは案外、大変なんだぞ。その辺りを理解してるのか。いやしてたらこんな事を起こすことなんてないよな。考えもつかない。なら誰が何をもって望み失い壊れたのかね。おや過程なんて知らんよ。知りたくもないが。でもよ普通に考えて普通に生きていたらこんなことはしないよな。でもした、ならその根幹たる根底には何が横たわって根ざしんてだろうね知らんけど。」

ここまでの言葉に対しての返答がない。

「まあ答えられんわな。」

足下より遠い先に倒れている体。動くともなく気配もない。

「あれだけで昇天ならぬ消転かね。そんな言葉はないけど。」

消えて転がる。というのはまるで人生落伍者の顛末であろうか。

しかしそれではないようで合っているのかもしれない。なぜなら当事者たる者達は人生の底を味わってきたのだから。

どんな手を使おうとも何を差し置いても自身を絶対たる地位へと。

「なんてのを切望したんだろうな。あぁ。」

小さく屈んで振るえた。 笑ったのだが。

「んじゃ始末して進むか。」

倒れているその体に触れると解けて消えていった。

別の壁である以外何もない。

だが、その壁すら無意味と成ることを後々に全てが知ってしまう。

後々のことだが。


今度は二桁前半である。その全てが動かず気配なく倒れていた。

「んで、この人数を用意して足止めに成らなかった。その感想を聞きたいんだけど。」

相対するは菓子を貪り食い降す女性。

「はよ喋れ。」

「あふうぶぇあうん。」

持っていた菓子はぶちまけられ、短い悲鳴をあげる。

「話を進めたいんで喋れ。」

「くヴぇあだ。」

「無限ループ突入は阻止。」

頭を抑え意識を読み取ろうとして。

弾かれた。

「この「時間さえ無駄すぎるからもう、死のうか。」あえ。」

女性の意志とは無関係に身体は動き、そして自身で命を果てさせる。

無用に無耶に止めである。


続いた空間には永遠とも数える道。自身を中心に多方向へと伸びた無限とも呼べる道が果てなく続いていた。

「むむ。今度はこれか。迷いの道。」

頭を振りながら傾げてみる。

「ふははは。なんて、笑ってる場合でもないか。でこれを用意できるてのは相当な資金と影響と人員を持ってるということ。なら遠慮はいらないな。」

屈伸運動をして。何度もして。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。して消えた。

と上方から大きな音が鳴り穴が空けられていた。

「ヒャッッッッアァァァァァッ」

逞しくも異様なテンションな声が木霊していて更なる穴が造り出されていった。

その数分しか経っていないにも係わらず、数百という倒れている人と怯えを張り付けた者と冷めた目線で眠気を晴らそうとしている者とが合っていた。

「質問、いいかな。」

「あ、あい。」

「これはまあ個人的な事なんで気にしないでもらいたいんだけど。そうだな。1つだけだ。何の目的でこうなったのかな。」

「さ、さあ。判りません何がなんだか。」

「ふうん。じゃあさ。」

「ひっ。」

「どうしてこんなに人が転がるなかで生き残れたのかな。運が、良かったの一言では片付かないよねどう考えても。」

「そ、それはその、はは、どうしてでしょう。解らないです。運でしょうかね。」

「ふむ。そうか、ならこれで最後だと宣言しよう。答えたら終わりにしてあげようか。」

「な、なな、なんでしょうか。」

「いや、その、な。」

「何が。」

「そうだな、時間の浪費は無駄なこと。だったか。んん。どうしてその様に()()()()()()をしているのかな。」

全身の力を抜き硬直していたように見えていた身体から僅かな余力すら残さず抜かれていく。

「なんだ。気づいていたのか。少しは騙せると思ってたのに。」

「それは無理さ、入った瞬間に君という悍ましく、そして醜い存在は隠せるものでない。そうだろ。」

「そうか気づいてたなら役をする必要はなかったのね。残念。」

「で、君は何者だ。」

「その質問に答える義務なし。なぜなら先程貴殿方言ったろ、最後だと宣言しよう。と、なら答える事はない。」

「む、失策だったか。まあいいさ、君を捉えそして自ら吐き出させれば済むことだ。」

「おお、怖いねぇ。そんな涼しい表情で恐ろしいことを平然と言えるなんて随分と渡ってきたのね。」

「ふふ。そうだね。まあ、力量差を認めたなら大人しく捕まってくれないかな。悪いようにはしないよ。」

「嫌だねぇほんと。胸糞しかない。」

「そうだ。諦め処を見極めるのも人生を長く生きるコツさ。」

「いや胸糞しかない、てのはこの瞬間じゃなく、あの回りに対してのかのあり得ないようなのめり込みと執着さに対してだっつうの。別段、俺の人生に対して悲観しても傍観しても定款だろうと関係なく生きていくよこの先もずっとただただ無意味に無情に過ごしたいだけだよ。と、話が長くなったな。ではお別れだ。」

「何を言っているのか理解し難いが確かに時間は有限無駄なことだ。 そして今ので理解したよ。君は違う貴様は捉えるに値せずこの場で処分させてもらう。」

「あ、もうその必要はないかな、言ったよねお別れだと。もう終わってるんだよ。」

「はえ、ぶえっがはっ。な、にかし。」

「悪いね。答える義務はないと言ったろ。遅いぞ。」

「ヒヒュッ。」

その者の胴体を貫くように血塗れの頭を揺らしながら返事する蛇。

「ど、こか、やめ。」

その目に映るは脈打つ拳ほどの筋肉の塊。

「あまり命を軽んじると、跳ね返りが来るぞ。」

「フュウゥゥゥ。ガパアァァァクジュッ。」

破裂と共に内に溜まっていた血が爆ぜた。

持ち主たる者は口を開きながら仰向けに倒れようとするも蛇の身体が貫いていたのであり得ない姿勢で息絶えていく。その目に何かの感情を浮かべて。

「まあこれも彼方は覚悟のことだろ。なら、まあ、問題はないだろうな。でだこの次が最後だと良いけどどうよ。」

鎌首を小さく傾げ舌を出し入れする。

「答えずかよ。まあ終わりだろうとなんだろうと、後悔するのは誰なんだろうね。」

足取りが重いその横を這う蛇の尻尾は軽やかに激しく振られていた。


次の空間には無数もの映像が表示されていた。

この数日間の何処から撮ったのかと疑いたくなるような角度のものまであったが。それを別段問題としていない現在では無視に徹するというより視界よりも意識に入れたくはなかった。

一つの映像の真下に台座に眠っている少女と。

「やっぱ、あなたですか。どうしてこの様なことをしたのかを聞いたらまあ二つだわな。其の力を欲するか俺への恨み事か。さてどっちですか。」

向けられた言葉に反応なく眠っている彼女の側で慈しむその眼差しは、しかしトーリへと向けるころには剥き出しの、隠そうともしない満々た悪意を向けていた。

「でどっちですか。前者なら幾つか処置して終わらせます。後者ならまあ追々考えながら対処します。」

「黙っていてお前は何をする。」

「何も答えによっては、安心して刈り取られます。無理なら、苦痛と後悔とかなにかに苛まれながら少しずつ同じ場所で死んでいくだけです。」

「そうか。」

「解放しませんか。何があなたを駆り立てるのか。」

「すまないな。これも、約束なんだ。」

背後に気配が突如として出現し同時に痛みに抉られた。

「へえ声を挙げないなんて、ね。」

引き抜かれる凶器と流れる血。

「そ、れ、で、も。表情は隠せないわね。」

チリカが覗き込んでくる。表情は軽く逝っていた。

「うえへへへへ。」

「んくぐ。なんで、」

「うん。君が。」

「憎悪ですか。」

「いぃえ、違うわよ。」

「違う。ではなんで。」

「うん。君が好きだから。そして憎いから。」

「それでどうする気ですか。」

「あら、驚かないのね。少しは驚くと思っていたのだけど。」

「いえ、正直、驚いてますよ。貴女が俺に好意を持っていたことに。後、後者の憎しみは知ってますし。」

「ふぅん。ならそれ以外は検討がついていたと。」

「ええ。そうですね。この数日間で全ての事に対して不自然というより可笑しいとは考えてました。そこのがそう簡単に気を消失なんてありえないですよね。なら何かしらの力が働いている。と考えた方が自然。それでも中途半端な勢力なりだったら対処しようがありますけど、それがもし身内であった場合は別。そこのは仕事、特に今している仕事には強い思い入れがあるだろ。家に持ち込むほどだ。そうなれば同じ家に住む者なら誰でも簡単に情報を見れるというものだし、さらにそこのは貴女に対して少しは信頼していたが大部分は警戒していた。まあ根拠とするなら、あの時連れ出された屋敷でのやり取りだけだが。それ以外となると二人が親密に話し合うような場面に出くわしたことない。てのかね。」

「ええそうね。これは私に対して幾分警戒していたわ。だからといった露骨な態度には出さなかったけど。ね。でも、関係ないわ君に会えるのだもの。ふふ。」

トーリの表情は誰が見たとしても嫌な顔をしていた。

「ふふふ。いいわあぁ、そうその顔よ。んんんやっぱり君はその顔が良いっわね。」

「それであなたはどうしてこの様なことをしたのでまさか。」

「ふふふ。言っただろ約束だよ。そう単純な約束なんだ。」

「それは何処の誰ですか。単純と言いますか。ふふ虚実を交ぜて一つへと渡るための、賃金ですか。」

答えず言葉にせず行動にすることなく立っていた。

「なんだ反応しないのか。そんじゃチリカさんに聞きたいんだけど、てどうしたんですか。その表情は。」

「ねえ、どうして倒れないの。だってこれで刺したのよ。十全に万全を期して猛毒まで塗ってあったのよ。」

「ふむ。そこまでして何をしたいのか理解し難いですけどしたくはないな。残念ながら血なんぞ止まってるし傷も塞がってる。あと毒物には耐性あるんで無駄ですよ。」

言葉とおりに血は止まり傷は塞がっていた。毒物に対する症状もない。

「な、なんでなのキいていたのと違うわよ。」

「きいていた、と宣うか。なら仕掛けた張本人は誰かを問い質したとて無意味に終わるな。で、そこの寝こけてる奴を連れ帰ってもいいかね。仕事を終らせにゃ俺が困る。」

指していた奴。もとい萌香は動かず眠っている。

「それは私が困る。この仕事は失敗してもらわないと。」

「その場合は大きな損失を被るが、あぁそれが狙いてことはふむ。そうなるのか。で、チリカさんは俺をどうにかして手込めにした後どうするんですか。」

「ど、どうする、て決まってるじゃない。君をずっと、側に置いて、愛でたり眺めたり、うへへ。」

「はあ、それが対価ですか。馬鹿ですね。口車に簡単にのって。」

「ねえその口振りからすると判ったの私の依頼主を。」

「ええ、そこの人と貴女に依頼した人は同一にして最も俺を憎み蔑みそんでどうしてか恐れている。たった1人。ああ諦めきれないのか。しかたない後でお礼参りに行くかな、ふふ楽しみが。増えた。」

「ひっ。」

短い悲鳴が二人から聞こえた。

「ん、おと危ない。漏れてたか。隠さないと。ふうぅ。んで返してくれるかなそこのを。」

返事がない。

困ったことに。

「えぇ二人とも立ったまま気絶してる。んわ、どうしようかね。あれで気絶て脆いなぁ。」

考える振りをして萌香を揺り起こすがなかなか起きない。再度考える素振りで。

「ん、起きないなしかたない。引きずって出るか、抱えると重いんだよな。傷は後でどうとでもなるし。うん仕方ないしかたない。」

足首を握り持ち上げそのまま出口へと向かおうと一歩を踏み出すも挫かれ原因を特定するため振り返ると。

寝かされていた台座の縁を掴んでいた。

が関係なく引きずり落とす。

「うヴぇっ。」

苦悶の声を漏らしながら尚も引きずられていく。

「ちょちょちょ、待って待って。」

無言で引きずっていく。出口まで。

痛みに対する言葉とか恥辱の言葉とか謝罪の言葉とかを並べていたが無視する。

出口の直前で一旦止まると振り返り悩んだ。

安堵の顔を浮かべるがその無言で語る背後に不穏な気配を察知した。

「ちょ」

このまま戻ったとしてあの道を逆走なのだ。面倒この上なく、なればと片腕に力を集結させる。

「ん、この辺りかね多分確定するでしょ。」

と持っていた方の腕を回転と同時に振り抜き同時にその先へと反対の手を縦へと振り切る。

裂け目が出きると開きその中へと吸い込まれるように入っていた。

短い悲鳴は無視する。

「ん。完成したな。さて残りも放り込むか。気絶してこのままとか正直、面白いから放置でいき」

「この、薄情者か。」

「うべっ。」

不意の一撃に避けられることはなく、痛みを堪えながら当事者を見ると。

「いつつ、起きてたんですね。残念。」

「ぐ、、本当に。」

「置いていこうかと考えてましたよ。どうせ、貴殿方は捨て石ですから。反論は止めていただきたい、時間も差し迫っているので。では、行って下さい、止めませんよ、起きたんですから。次いでに未だ気絶してるそこの人も一緒にお願いします。」

深々と頭を下げて足許を鳴らす。

「ひっぐ。クソッ。」

足しか見えていないが急ぐように裂目へ入っていった。

「これで全てか。ね。」

頭を上げると裂目は綺麗に消えていた。

「お、そうか。時間もそんなに固定してなかったな。仕方ない。」

振り向くと出口も消えていた。

「あらま、消えてる。はは。あぁ。」

膝を折り頭を抱えてしまう。

足の間に数滴の溜まりができる。

何かを悔やむように漏らす声は何時までも何時までも続いていた。

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