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第3話 最戦の序曲

 俺達は未だに試合の余韻に包まれた客席を縫うようリングの反対側に周り、通路に出た。通路の奥には、いかにも屈強そうなガードマンが2人、通路を塞ぐように立っていたが、屋敷土さんが2,3度言葉を掛けると、すぐに道を空けてくれた。どうやら屋敷土さんは顔パスらしい。

「このファイとクラブのオーナーは昔からの顔なじみでな。色々と持ちつ持たれずの関係を続けてる。まあ、腐れ縁みたいなもんだ。ララを紹介したしな」

 そう言って俺達に説明してくれた。しかしガードマンまで付けるなんて…… まるで芸能人並だな……

「最近は何かと物騒だろ? 訳のわからん連中も多いからってんでクラブ側が用意したんだそうだ。特にララはこのクラブ始まって以来のドル箱選手だし、彼女に至っては熱狂的なファンも多いから、その辺りを考慮したんだろう。現にララが試合にで始めてから、チケットの売り上げが倍増。立ち観まで出る始末だしよ」

 なるほどね。まあ確かにそう言う連中もいるかもしれない。でも、あんなに強い女の子にちょっかい出したら、間違いなく病院送りになりそうだけど……

 そうこしているウチに、俺達は『選手控え室』と書かれたドアの前にやってきた。屋敷土さんはそのドアをノックした。すると中から『だれ~?』と声がした。

「ララ、俺だ。オウルだ! ちょっと良いか?」

 その屋敷土さんの声に『オウル!? 久しぶりじゃ~んっ!』と声が返ってきて、程なくしてドアが開き中からさっき見たアニメヒロインのような美貌が顔を出した。

「やっほ~オウル、ひっさしぶり~!」

 ララは若干軽いノリで屋敷土さんに笑いかけた。まだ着替えてなかったようで、未だに試合の時に見たシスター姿で戸口に立っていた。

 いやもう間近で見るとさらにその美貌がハッキリとして、目が点になりそうだ。たぶん唇にルージュを引いただけのすっぴん状態だろうが、もう此処まで整っていると化粧なんて必要ないのかもしれないな。

「俺はララの試合は欠かさず見に来てるから、あまり久しぶりな感じはしないけどな。お、そうだ、カーニバル優勝おめでとう。2回連続優勝なんて、史上初だぜ! もうお前さんに勝てる奴は、女子じゃいないんじゃないか?」

 と屋敷土さんはさりげなく優勝を祝した。ええもう俺もホントそう思います。つーか男でも現役の格闘家じゃなきゃ勝てない気がするケド……

「ははは、まあ私は男でもOKだけどね。セラフィンゲインじゃ良くキラーの男子狩ってるし♪」

 およそ女の子の台詞じゃないな……

「あれ? オウルの友達? にしちゃちょっと歳が離れてる気がするけど……」

 ララは後ろ手に束ねてあった髪をほどきながら屋敷土さんに聞いた。

「歳だけ余計だコノヤロ。コイツらはアッチでの知り合いだ。実はコイツらの事でお前さんに相談したいことがあってな。ちょっと良いか?」

 屋敷土さんがそう言うと、ララは後ろの俺達2人に視線を移した。

「セラフィンゲインの? ふ~ん…… 別にこの後何もないからいいよ。でも此処じゃ何だし…… あ、そうだ。じゃあ駅前の『BBS』に行かない?」

 『BBS』? な、なんだそれ!?

「お、良いねぇ。優勝祝いも兼ねてパァ~とやるか!」

 と屋敷土さんも意気投合。何かよくわからないところで、よくわからない何かが決まっているんですが……

「ちょ、ちょっと待ってください。な、なんすか、その『BBS』って?」

 俺はなんか嫌な予感がして慌てて屋敷土さんに聞いた。すると屋敷土さんは意外そうな顔で答えた。

「秋葉原のコスプレ居酒屋だよ。なんだ、知らないのか? 店員の女の子がみんなコスプレしてるんだ。『小悪魔の食卓 LittleBBS』略して『BBS』…… 結構有名だぜ?」

 コスプレ居酒屋!? そんなのあるの!? しかもなんだその『小悪魔の食卓』って!? つーかそもそも俺、ノーマル居酒屋自体行ったことねぇってまじで!

「コスプレ居酒屋!? 流石秋葉だ! うっはー♪ 行きます飲みます! てかララさんと飲めるなんてもうウルトラ感激ですよ~♪ 志朗も行くよな? な? てかぜってー行くぞ!!」

 戸惑ってる俺の横で、婁人が妙なハイテンションで余計な口を挟んだ。また余計な事を……っ!

「なかなか面白い連中のようね。じゃあそっこーで着替えるから、表の受付のトコで待っててよ」

「了解だ。ほいじゃ後でな」

 ララの言葉に屋敷土さんはそう答え。俺達を伴って控え室を後にした。俺は複雑な心境でその後に続いた。なんか嫌なんだよね、こう言うの…… 


☆ ☆ ☆ ☆


 クラブの受付までララと合流した俺達は早速その『BBS』に向かった。駅前の中央通りと銀座線末広町駅の入り口がある蔵前橋通りの交差点を左に折れ、路地を2つほど行って左に曲がるとそのお店はあった。4階で受付をすまし、ブ○ーチのコスプレをしたおねーさんに案内されて、俺達は店に入った。

 店内は割と明るめな感じの普通のお店なのだが、テーブルを縫うように歩く女性店員さんが、みんな思い思いのアニメやゲームの女の子の衣装で歩き回っている。婁人は目を輝かせ、俺に至っては目が点になっていた。最初はもうちょっとノーマルな居酒屋でデビューしたかったです……

 とりあえず俺達は席に着くと、中ジョッキでビールを頼み、続けて料理を頼んだのだが……

「えっと、『闇スープ』2人前、『ニクキュウピザ』2枚、『闇串』3つに『ニュータイプ豚キムチ』2人前でしょぉ~? あとね、『ささみチーズ揚げ』と『ソーセージの盛り合わせ』2個づつ…… うふふ、今日は『闇丼』も行っちゃおうかなぁ~」

 次々と謎なネーミングの料理を頼むララ。あの…… とりあえずそんなところで良いんじゃないですか……?

 するとララが不思議そうな顔をして俺達に言った言葉に、俺は度肝を抜かれた。

「あれ? あんた達も何か頼まないの? もしかして男のくせにダイエットとかしてんの?」

 ……

 全部一人で食う気カヨあんたっ!?

 ちょっ、ちょっと待ってくれっ! みんなでつつくつもりで頼んでいたんじゃないのか!? どう考えても3~4人前はあるだろ今のっっ!!

「相変わらず食欲旺盛だね~ 俺は最近胃に来ちゃって全然ダメだよ」

 と屋敷土さんは感心したようにララにそう声を掛けた。いやいや、食欲旺盛とか言うレベルじゃないだろこれ……

「うふふ、ま~ね~ とりあえず第1陣はこんなもんかな? あんた達も好きなもん頼みなよ。賞金入ったし、今日は奢ってあげちゃうよん」

 と言ってにっこり微笑むララ。もうその表情で普通男はお腹一杯になっちゃいます。でもホントに全部一人で食べる気なんだコノヒト…… しかも第1陣っておい……

 つーかそもそも今の注文の後で、俺らの食い物、何処に置く気ですか?

 俺は呆れながら横の婁人を見ると、婁人はメニューを持ちながら、行き過ぎる店員に見とれていた。

「あ、初音○クだぁ~ おおっ、コッチは朝比○みくる~! みくるんるん~♪」

 ……ダメだ、コイツはトリップ中だ。当分帰ってこねぇ…… ホント何しに来たんだお前。

 そうしているうちに最初に頼んだ中ジョッキが運ばれてきて、自己紹介もそこそこに『乾杯』となった。そして続けて運ばれてくるララの料理は片っ端から消えていく…… まるでマジックを見ているようだった。だってさ、俺なんかまだ『にゃんこのニクキュウ』とかいう大きめの肉団子を食べ終わらないのに4品が皿から消えるんだぜ? どう考えたって普通じゃないってマジで!?

「流石は『魔界の胃袋』って言われるだけの事はあるね~」

 屋敷土さんは2敗目のジョッキを煽りながら、ララの食いっぷりを惚れ惚れするようなまなざしで眺めていた。

 ま、魔界の胃袋っ!? なんだそれ!?

「ま~ね~(もぐもぐ) ところで(もぐもぐ) 相談って(もぐもぐ) 何だったの?(もぐもぐ)」

 そう質問する間でも食べる行為は止まらないし、少しもスピードが衰えないよこの人……

「おうそうだ、実はな? 先日コイツらのチームが『ハニー・ビー』のスカウター達の引き抜きにあって解散しちまってよ、今2人で新メンバー集めをしてるんだが…… で、お前さんをメンバーにって俺が紹介を頼まれたんだよ」

 と屋敷土さんは食べ続けるララに事の経緯を簡単に説明した。

「掲示板とかに(もぐもぐ) カキコすれば(もぐもぐ) 良いんじゃない?(もぐもぐ)……」

 ララは食べながらそう答え、ジョッキに残ったビールを空けた。

「ふ~っ! 大分落ち着いたぁ~ あ、ライムちゃん、今度は青林檎サワーね~ 

 ……どうせ集まるのはティーンズ【レベル10代】だろうけど、ワイワイコミニュティーチームならそれで十分っしょ?」

 そう言いながらララは空いた皿を重ねて次の皿に箸を付けた。

「コミニュティーチームじゃないですケド……」

 俺はそう呟くように言った。まあ最近のセラフィンゲインはギルドの派閥争いなどで本来のクエストに重点を置いたチームは少なく、彼女が言ったように仲間内だけのワイガヤ的なチーム多いのも確かだから、そう思うのも無理はない。そこそこレベルが上がっちゃえば、あとはアクセス分プラスアルファで経験値が手に入ればOKと考えるお友達サークル的な連中が現実沢山いる。

 でも俺達は違う。目標はあくまで聖櫃でやってきたし、これから作るチームもその目標を変えるつもりはない。横で未だにトリップしてる婁人だって、それは同じ気持ちのハズ…… だよなぁ?

「コイツらさ、未だに『聖櫃』目指してるんだよ。『足を踏み入れたチームがいるなら、行けるはずだ』って真剣に言うもんだからよ……」

 その屋敷土さんの言葉に、ララの箸が止まった。

「……本気で言ってるの?」

 ララはそう言いながら、箸を止めて俺の目を見つめていた。特に怒ってる様子もない。俺を嫌がってるわけでもない。ララはただ俺を静かに見つめていた。なんつーかその…… かつて不可能とまで言われた場所に到達した者だけが持つ風格というか、圧力みたいな物を感じて、俺は唾を飲み込んだ。

「ええ、マジです…… いつか絶対たどり着く。かつてのあなた達、『ラグナロク』の様に…… それが俺が、毎晩あの世界に行く理由ですから」

 俺はそのララの視線を受け止めながら、自分の言葉を確かめるように静かに答えた。

「あんた…… 名前なんだっけ?」

 不意にララは箸を置いて俺にそう聞いた。確か乾杯前に一応自己紹介をしたはずなのだが、俺は改めて名乗った。

「仲御 志朗。HNも同じく『シロウ』で、レベル24の戦士っす……」

 するとララはふっと微笑を浮かべて視線を外した。

「昔ね…… あたしと一緒に戦った奴のことを思い出したわ…… あの時のアイツも、今のあんたみたいな目をしてたっけ……」

 そしてまた思い出したように「うふふっ」と笑った。その笑いの意味が全く判らなかったが、俺は何となくちょっと誇らしげな気分を味わった。そしてこのとき、この神懸かり的な美貌で普通なら近寄りがたい雰囲気を醸し出すララという女性が、ちょっとだけ近く感じた。

「シロウ…… あそこに行くにはね、確かにそれ相応の強さも必要だけど、むしろその動機が重要なの、チームとしてのね。そういうチームだけが、あの聖櫃の扉をくぐる事が出来る…… それが、あの世界を管理する者の『願い』なのかもしれない……」

 そうしてララは次に、その右手を俺の目の前に差し出した。

「良いよ、メンバー入り。あたしは兵藤 マリア。レベル32のモンクでアッチでのHNはララ。リングネームと同じね」

 そう言うララの右手を、俺は立ち上がって握った。今まで女の子の手など、小学校のフォークダンスの時以外握った事がない俺だったが、何故か不思議と自然に握ることが出来た。

「一緒に作ろうか、後々まで語り継がれるような伝説のチームをさ?」

 俺はララ…… いや、マリアの言葉に握る手を堅くして頷いた。

「ええ、あなたがかつて居た『ラグナロク』に負けないくらいのチームを」

 すると横でトリップから帰還した婁人が慌てて口を挟んだ。

「お、俺も忘れんなよ。あ、俺は壷浜 婁人。レベル25の僧侶やってます。HNはスエゾウ。志朗とは幼なじみなんです。いやもうこれが幼稚園からの腐れ縁で……」

「へ~、幼稚園からって凄いね~ ねえ志朗、他にメンバーは?」

 婁人を見ながらマリアはそう聞いた。

「俺と婁人以外全員引っこ抜かれちゃって…… マリアさんが3人目です……」

「って事は最初はメンバー集めか…… 志朗とあたしが前衛で、回復担当の婁人はビショップだから後衛…… 少なくとも前衛キャラをあと1人乃至2人、後衛に魔導士とガンナーが欲しいところね」

 マリアは『ニクキュウピザ』を口に放り込みならがらそう呟いた。俺もその意見に納得しながら頷いた。

 セラフィンゲインのチーム編成は至って自由だ。何人でチームを組んでも構わない。極端な話し、100人で組もうが、はたまた1ソロで戦おうが一切規制がない。

 一見とても大雑把なルールのように思えるが、実際にチーム編成を行っていくと実はこれがとても巧妙に仕組まれていることに気づく。セラフィンゲインはセラフを狩り、経験を重ねる事によって成長するRPG特有の経験値システムを採用している。この経験値は『個人または集団』に一括して支払われる。つまり、人数が少なければ当然1人当たりの獲得経験値は多くなる。だが、単純に手数が少なくなることによって攻撃力が減るわけで、強力なセラフを狩る事は困難になって来るというわけだ。確かにレベルの高いキャラならばソロで活動も出来ないわけではないし、実際ソロでクエストをこなしているプレイヤーも存在するが、その数はほんの一握りだ。セラフィンゲインはそう簡単にソロプレイをこなせるようなゲームじゃない。常に敵であるセラフのパラメーターや数などが変化するようになっている。レベル30を越える上級キャラ、『サーティーオーバー』でさえ、ソロでプレイ出来るのは精々レベル4乃至5クエストくらい。それを越えてくるとクエスト不首尾どころか生還まで危うい。それにいかなる状況でもフレキシブルに対応できるよう、多種にわたる『役割』が必要になってくると言うのもポイントの一つだ。よって一般的に戦士、僧侶、魔導士、砲撃手の役割を織り交ぜた6~7人のチーム編成が一般的だった。

 少し前に、この『チーム人数に制限無し』と言うルールを逆手に取り、採算を度外視して総勢60人でワンメイクチームを組み、あの難攻不落のクエストである『マビノの聖櫃』に挑んだアホなギルドがあった。ルールに当てはめ、何ら違反がないと認めた運営側とシステムは、この大チームの参戦を正式に認め、フィールドに転送した。で、この大チームの顛末が最高に笑えるんだよ。どうなったと思う?

 高位術者20数名を含む、総勢60人のこの大チームは意気揚々と隊伍を組んで突き進み、れいの通路に突入した。しかしそこで待っていたのは、最強セラフと呼び声の高い『バルンガモーフ』の『群れ』だった。

 そう、セラフの数が『常に一定』とは、ルールブックのどのページにも書いていなかった事を思い出すのが遅すぎたって訳。

 バルンガモーフ数十体から放たれる高位魔法で前衛戦力が半分持って行かれ、さらに続くハンマーの物理攻撃に前線は壊滅。後衛の高位術者の必死の詠唱で放たれる高位魔法も、属性防御の前に弾かれ為す術がなかったらしい。その光景を見た後続のメンバーが恐怖に駆られ次々とリセットを宣言し、リセットが間に合わず、さらにデッド判定を運悪く免れて仕舞ったプレイヤーは、襲いかかるバルンガモーフ達になぶり殺しにされたそうだ。

 こうして、『セラフィンゲイン始まって以来の大遠征』と呼ばれた行為は、大量のデット者とリセット者を出し『セラフィンゲイン始まって以来の愚挙』として記録されることとなった。まあ極めつけにアホな話しだが、このセラフィンゲインがそう言った、半ば反則的な行為が出来ない、極めて完成度の高いゲームであることが立証されたわけだ。

 ちょっと話が横道に逸れたが、そう言う観点から考えて、俺達のチームも6,7人で編成する。となると、少なくともあと3人はメンバーを集めなければならない。

「屋敷土さん、入りませんか?」

 俺はそれとなく、向かいの席でビールを飲んでいる屋敷土さんに話を振ってみた。この人もマリアと同じくサーティーオーバーのプレイヤーだ。しかも丁度欲しかったガンナーだし、入ってくれたら戦力も相当アップされるだろう。

「いや、俺は遠慮するわ。ハッキリ言ってもう歳だしよ~ それに傭兵のが性に合ってるしな」

 う~ん残念だ。そういやオウルって、あまりハイレベルなチームと組まないよな。

「じゃあいっそ、引退記念でチーム入りってのはどう? ぱーっと散り花咲かせようよ!」

 マリアさん…… 結構えぐるようなコメント吐くよね。

「なんだその散り花って、縁起でもねぇっ! 俺はまだまだ現役だ。でもな、初級者のガイドか中級チームの助っ人で十分だよ」

 そう言って屋敷土さんは笑った。もったいないよなぁ、マジで。

「じゃあサービスでもう一人、ガンナー紹介してやろうか?」

 屋敷土さんの言葉にマリアが聞き返す。

「さっすがオウル! で、だれだれ? あたし知ってるかな?」

「ああ、『ゼロシキ』だよ。レベルも確か26だし、奴の予測射撃はなかなかの物だぞ?」

 その屋敷土さんの言葉に、マリアは少しその形の良い眉を寄せた。

「アイツかぁ…… う~ん……」

 あれ? 何だろ、マリアさん仲悪いのかな、そのゼロシキって人と。

「ガンナーで26じゃそこそこじゃん。いいんじゃね?」

 と婁人が俺に同意を求めた。けど俺は即答しなかった。ちょっとマリアさんの表情が気になったからだった。

「なんか気に入らない事でもあるんですか?」

 俺の言葉にマリアさんは渋々と言った様子で応えた。

「う~ん、確かに腕は良いのよ。それはあたしも認めてる。それになかなか状況判断も的確だし…… でもなんつーか、やる気が全然感じられないのよアイツ。何聞いても『興味ないな』でそっぽ向いちゃうし…… 何かイラっと来るのよね」

 マリアさんはそう言って運ばれてきた青林檎サワーを一口飲んでため息を吐いた。

「結構古いつき合いでさ…… 昔はあんな奴じゃなかったんだけどなぁ……」

 するとその言葉に屋敷土さんも同意して頷いた。

「確かに、ちょっと変わったかもしれねぇな…… でも悪い奴じゃねぇ。それはマリアもわかってるだろ?」

「そりゃね。だけどそれが尚更イラっと来るのよ。前を知ってるから余計に腹が立つって言うかさぁ……」

 マリアはそう言いながら、ニクキュウピザの最後の欠片を口に放り込んだ。これで最初に彼女が注文した料理は全て無くなった。すげえ、結局全部一人で食っちゃったよ……

 あ、いや、話しもそうだけど何かスゲー人だな、マリアって。いろんな意味で。

「アイツもチームを組まないようになってずいぶん起つ。久しぶりに『本気で聖櫃を目指す』チームに入れば、また少しは変わるんじゃねぇか?」

 そう言う屋敷土さんの言葉にマリアは苦笑して頷いた。

「まあ良いわ、声掛けてみるよ。よ~し、何か久しぶりに燃えてきた~! 第2陣注文行ってみようか~!」

 少し予想はしてたけど、やっぱりまだ食うのカヨっ!?

「ここからは新チーム結成会よっ! ほら、2人ともジョッキ空じゃん。やっほ~っ! ユキちゃ~ん! 中ジョッキ2つ追加ネ~! あと『魔界グラタン』2つと『萌え萌え焼きそば』同じく2つ。それと……」

 マリアの声に、ニコニコしながらやってきた長○ユキ(眼鏡バージョン)のおねーさんに、再び大量の料理を注文するマリア。もう此処まで来るとハッキリ判る。

 たぶん人間の胃袋とは別の物を持ってますよ、コノヒト……

 俺はその注文される料理の量に目眩を憶えながら、光に透ける綺麗な栗毛を掻き上げる美貌の格闘家を眺めていたのだった。


初めて読んでくださった方、ありがとうございます。

毎度読んでくださる方々、心から感謝しております。

第3話更新いたしました。

今回出てくるコスプレ居酒屋は、アレです。ええもう秋葉のあそこです。前に一度行ったことがありますが、なかなか面白かったんで入れてみました。流石に実名はアレかなって思ってニアピンにしましたがw

さてお次はまたまた新キャラ『ゼロシキ』の登場です。私的に結構気に入っているキャラなんですが、このメンバーに馴染んでくれるか心配です。さらにその他2名も登場…… できるかな?(オイ!

鋏屋でした。


次回予告

ララを迎え、新メンバー獲得に動き出した3人は、セラフィンゲインで再会、そしてレストラン沢庵で今後の動きを検討する。するとララはシロウが持つ太刀に興味を示した。その紅い刀身を見つめるララは、昔自分が見た太刀である事を思い出した。果たして、シロウが持つその太刀は、ララがかつて見た太刀なのだろうか?


次回 セラフィンゲインAct2 エンジェル・デザイア第4話 『紅い太刀』 こうご期待!

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