表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
実は狐の眷属です! 真白と紡の神社日誌 ―600年前の巫女の願いから生まれました―  作者: 稲荷寿司
神無月―葵禁忌の葵と邪悪な雫―決戦編―【完結】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

126/164

厄介者と呼ばれた蒼、火の童子の言葉で目を覚ます

いつもお読みいただきありがとうございます!

評価や感想など励みになっております。

最後までお付き合いいただけたら幸いです。

(*˘︶˘*).。.:*

―――



あおいに追いついたあお澪斗みなとは、

荒れ狂う神域の回廊で再び激突していた。



蒼の焔が廊下を焼き尽くすように広がる。



「……邪魔どいて!」


蒼が放つ凄まじい火力の焔が、

葵を護る悪鬼たちを次々と灰へ変えていく。


その熱波の合間を縫い、

澪斗は鋭い印を結んだ。


澪斗

「拘束の理――捕らえろ!」


何本もの水の鎖が葵の四肢を狙うが、

葵は翻る衣のまま、

避けることさえせず薄く笑った。


「諦めろ、澪斗。その術を教えたのは私だぞ? 対処法など、すべて熟知している」


葵は軽く手を払っただけで水の鎖を弾き飛ばした。



澪斗の眉がわずかに揺れる。


その時――


最後の一体を焼き尽くした蒼が、

澪斗の隣に並び立つ。



二人がかりで攻勢に出ようとした、


その刹那――



葵の口元が僅かに歪む。


「拘束の理――捕らえろ」


皮肉にも、

澪斗の得意とする術と同じ言霊。

だがその威力は隔絶していた。


澪斗

「……っ!?」



水の鎖が、

一瞬で二人の体を絡め取る。



葵は動けない澪斗に近づくと、

その額に指を触れた。



「澪斗……お前には少し、眠ってもらおう」


抵抗する間もなく澪斗の意識が遠のき、

がくりと膝をつく。


続けて、

葵は矛先を蒼へと向けた。



「蒼……お前の噂は天界でも聞いていたよ。焔の力が強すぎて、同族からさえ忌み嫌われていた厄介者。……いつも、独りぼっちだったらしいな?」



「……黙れ……!」


言い返そうとする蒼の声を、 葵の冷徹な言葉が遮る。



「火の童子がお前を引き取ったのは、炎神に押し付けられたからだ。……」


「ちがう!そんなはずは……っ」


「ないと言い切れるか?

お前なら、天界で持て余されていた

"爆弾" を押し付けられて、本心から喜ぶか?

火の童子の優しさは、同情という名の義務ではないのか?」


蒼の心に、一瞬の疑念が生まれた。



その隙を葵は見逃さない。


「幻の理――」



蒼の視界が暗く沈む。




―――





気づけば、

蒼は天界の端に立っていた。



そこは冷たく白い天界の端だった。

幼い蒼が独りで座っている。



『蒼、あっち行けよ!』


『近寄るなよ、お前の焔に触れたら僕たちまで燃えちゃうだろ!』


同族の子供たちの心ない声が、

容赦なく降り注ぐ。


蒼は耐えきれずにその場から逃げる。

そして蒼はひとり、

天界の隅に座り込んでいた。



ぽたり。


頬を涙が伝う。


「……蒼だって……好きでこんな焔じゃない……」


声が震える。


「どうして……蒼だけ……」




その頃――



術に嵌めた葵は、

力なく項垂れた蒼を見下ろし、


「ふぅ、やっと大人しくなったか」


そう言って葵は、

軽く息を吐いていた。


だがその直後、

屋上から伝わる雫の神気の揺らぎに、

葵の顔色が険しく変わる。


「……まずいな。雫の様子がおかしい」


焦燥に駆られた葵は、

拘束された二人をその場に残し、

屋上へと姿を消した。



静まり返った回廊。

葵が去った直後、

眠っていたはずの澪斗が目を見開いた。


澪斗

「……はぁっ、はぁ……! 危なかった」



彼は術を警戒し、

密かに「解呪の呪符」を仕込んでいたのだ。



幻術に囚われ、

虚空を見つめる蒼の姿に澪斗は焦る。


澪斗

「あぁ、どうしよう蒼が……!どうすれば解ける?思い出せ……兄様との訓練の記憶を――」




澪斗は蒼の鎖を解きながら必死に思い出す。


兄との訓練の日々。

幼い頃の記憶が蘇る。





―――





澪斗

「兄様!もし幻術にかかってしまったらどうすれば?」



かつての兄の声が、

記憶の中で答える。


『いい質問だな、澪斗。幻術に嵌まった者がいたら、外側の人間が "会話" を試みるんだ。


幻術は心の傷を見せて精神を壊す術。


だから外から声をかけ続け、会話が成立したら、闇から引き上げてやる言葉を紡げ。


帰ってこれるかは、対象者の心次第だがな』



かつての葵の教え。


澪斗は蒼の肩を掴み、

必死に呼びかけた。


澪斗

「蒼! 蒼、聞こえてる? 僕だ、澪斗だ!」


蒼は虚ろな瞳のまま力なく答える。



「……蒼は、厄介者だから……とと様やかか様さえ手に負えなくて……炎神様に僕を預けたんだ……」


うわ言のように繰り返す蒼に、


澪斗は衝撃に言葉を失った。


蒼はいつも僕の隣で戦ってくれていた。


澪斗

「だったら……今度は僕が……! それだけじゃない、違うだろ!」



澪斗の懸命な呼びかけにも、

蒼は虚ろに同じ言葉を繰り返すだけで、


会話が成立しない。

 

もう何度目かも分からない否定の言葉。

同じやりとりと、会話にならない焦りと苛立ち。


「……違うことなんてない。こんな蒼のこと、好きな眷属なんて……」


また同じこたえ。

澪斗はつい反射的に、


澪斗

「火の童子かのこどうじ様がいるじゃないか!!」


澪斗の叫びに、

蒼の指先がぴくりと動いた。



そして――


「……でも、火の童子は、炎神様に押し付けられただけで……本当は天界に返したいって……」



会話が成立し始めた――


澪斗の胸に安堵と希望が灯る。


澪斗

「そんなわけないだろ!幾ら主神様でも、

本人の意思を無視して


そんな役目を押し付けたりしない!思い出せ!


火の童子様は一度でも、お前を面倒だと言ったのか?」



澪斗の問いに、蒼は言葉に詰まる。



その時だった。


頭上から、声が落ちた。



火の童子

『なんや! こんなところで一人で泣いて!』


顔を上げると、そこには出会った日と同じ、眩しい笑顔の火の童子が立っていた。


「……みんなが、焔が強すぎるから、あっち行けって……」



火の童子

「なんやそれ! 強いんはええことやないか! そんな言葉に負けんと、

気が合う奴探して一緒におったらええ!」



「……蒼に優しくしてくれる人なんて、天界にはいない……」


(これ……初めて火の童子に会った日だ……間違いない、そうだこの後……。火の童子は、なんて言ってくれたんだっけ……?)


目の前の火の眷属は、

胸を張って言い放った。


火の童子

『ほんなら現世に一緒に来たらええ! アタイがアンタの気の合う仲間になるわ! 強い焔は大好きなんや!』


(……蒼は……馬鹿だ……火の童子のこと疑っちゃうなんて……火の童子はいつだって……)



火の童子は、

一度だって蒼を否定した事はなかった。



現世で加護を間違えて巨大な火柱を上げた時――


火の童子

『こりゃええ勢いや! 蒼がおればこの地の悪鬼もどっかいくわな!』


大和とイタズラが過ぎて、

燈真に怒られて感情が昂り、

日の粉で髪を燃やしてしまった時も――


火の童子

『なんや、燈真パーマみたいでええやないか!』


そうだった。


初めて自分を認めてくれた。

その笑顔が眩しくて、温かくて、

思わずその手を取ったんだ。


蒼は幻術の中の火の童子をみあげた。



火の童子

『なんや! ぼーっとしとらんで名前くらい名乗らんかい!』


「あ、……えっと、蒼……蒼、です」



火の童子

『蒼か、ええ名前や! ほんなら今日からアタイの弟子や。炎神様の所に許しもらいにいくで!』


そう言って火の童子が蒼へと手を差し出す。

その手を見つめながら蒼は思い出す。



火の童子は、

どんな時も褒めてくれて、

蒼を信じてくれていた。


そして、この戦いの前夜。



火の童子

『アタイがピンチになる前に、さっさと合流して、一緒に戦ってくれな!』


『うん……任せて!』



(――っ!約束!)



蒼は火の童子の手を掴む。


その瞬間――


蒼の視界が弾け、

目を見開いた。


視界が切り替わり、

目の前には涙目の澪斗がいた。


「……澪、斗……?」


澪斗

「良かった……! 戻ってきてくれた!」


蒼は、澪斗の疲弊した様子に、

必死に自分を闇から引き上げてくれたのだと悟り、


静かに微笑んだ。


「……ありがとう……澪斗。助かった……」




だがその時。


余韻に浸る暇もなく、

頭上から、

凄まじく神気が膨れ上がるのを感じ、


二人は同時に顔を上げた。


そして――


ドォォォン!!


爆発音――


天井から砂がぱらぱらと落ちてくる。

蒼と澪斗は顔を見合わせた。


「……火の童子……!」


澪斗

「急ごう」



今は――



再会の言葉は、

あとでいい。


二人は同時に地を蹴り、

階段を駆け上がった。


大切な仲間の元へ。


そして――


決戦の屋上へ。



最後までお付き合いいただき、

ほんとうにありがとうございます!

ブックマークなど応援していただけたら嬉しいです!

次回もお付き合いいただけたら幸いです。

(人´∀`).☆.。.:*・゜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ