決戦の夜―― いきなり開戦!七人の眷属と1人の誓約の一族
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。(*˘︶˘*).。.:*
いよいよ物語は決戦へと動き出しました。
八人の眷属それぞれの想いがぶつかる戦いになります。
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それでは――
決戦の夜をお楽しみいただけたら嬉しいです。
―――
縁は皆を見渡しながら、静かに言った。
縁
「それじゃあ……行こうか」
その声に、縁班の面々が小さく頷く。
だが、紡がふと手を挙げた。
紡
「縁さま……ひとついいですか?」
突入を前に、紡が真剣な表情で問いかけた。
紡
「僕たちの班が中から入るとして、屋上まではどうやって行くんですか? あの場所は……」
縁
「本来なら閉ざされているけれど、紡くんたちが雫さんに逃がしてもらった“あの場所”からなら繋げられるよ」
縁は懐から主神の加護が宿るお守りを取り出した。
その小さな布袋から、
周囲の空気を震わせるほどの神気が溢れ出す。
縁
「このお守りで僕の神気を底上げして、
扉を強引にこじ開ける。
……その代わり、中に入ったら細心の注意を払うんだよ。
特に葵くんの幻術。あれに心を呑まれたら、二度と戻ってこれない」
縁の眼差しが鋭さを増す。
縁
「葵くんと雫さんの居場所は、紡くんと真白くんの探知能力に頼るしかない。
けれど、ある程度まで近づけば君たち自身の魂が感じ取るはずだ。」
縁はにこりと笑って続けた。
縁
「……頑張ってね。それじゃあ、行くよ!」
全員
「「「はい!!」」」
全員の声が、力強く重なり、
作戦が開始された。
―――
縁班の面々は影のように素早く移動する。
かつて紡がバイトで通った見慣れた廊下も、今は異界の空気に侵食され、
一歩進むごとに肌を刺すような悪寒が走る。
澪斗
「……ここでバイトしてて良かったなんて、思う日が来るとはな」
澪斗がボソリと呟きながら、例の階段へと一気にたどり着いた。
紡が、くすっと笑う。
紡
「ほんとですね!」
縁は、閉ざされた扉の前に立つと、
深く、静かに息を吸った。
張り詰めた沈黙が廊下を支配する。
そして――
縁
「――結界展開」
縁の凛とした声が響くと同時に、
金色の神気が彼の足元から波紋のように広がっていった。
縁が指先で鮮やかに印を結ぶたび、
虚空に細い光の線が刻まれていく。
薄い光の線が空間に刻まれ、
閉ざされていたはずの境界が、
陽炎のように、
ゆっくりと浮かび上がった。
だが、次の瞬間。
――ギリッ、ギギィ……ッ!
嫌な音が鼓膜を突き刺す。
見えない巨大な力が、
内側から凄まじい勢いで押し返してきたのだ。
葵の神域が、
侵入者を拒絶するように空間そのものを軋ませ、悲鳴を上げさせている。
縁
「……くっ」
空気が爆ぜるように震え、
浮かび上がった扉の輪郭が、
飴細工のようにぐにゃりと歪む。
強大な拒絶の力。
その神圧だけで精神を砕かれかねない衝撃。
それでも、
縁の瞳は一点の曇りもなく、
正面を見据え続けていた。
彼は静かに、
懐から主神のお守りを取り出す。
指先が白くなるほど、
それを強く握り込んだ。
縁
「主神様……お貸しください」
刹那――
握りしめた御守りが太陽のような輝きを放った。
溢れ出した膨大な神気が、
濁流となって縁の全身を包み込み、
その存在感を何倍にも膨れ上がらせる。
底上げされた神気が、
縁の指先を通じて一気に結界の術式へと流れ込んだ。
縁
「…………開け」
縁が低く、
断罪のごとき響きで呟いた瞬間――。
――バンッ!!!
空間そのものが破裂したような衝撃音が轟いた。
歪んでいた景色に幾千もの亀裂が走り、
絶対の拒絶を誇っていた『扉』が、強引にこじ開けられた。
澪斗は震える拳を握りしめ、
その扉を見つめる。
その背中に、紡が明るく、
けれど確かな温かさを持った声を投げた。
紡
「大丈夫です、澪斗さん。
僕たちみんなが一緒に戦いますから!」
澪斗
「……ありがとう」
澪斗は一瞬驚き、けれど力強く答え、
光の渦巻く扉の向こうへと足を踏み入れた。
全員が消え、
静寂が戻った廊下で、
縁は独り静かに頭を垂れる。
縁
(主神様……どうか彼らに、最大のご加護を)
―――真白班――建物の外
真白率いる班は、
非常階段を風のような速さで駆け上がる、
鉄の階段を踏みしめる音が、
夜の空に響く。
火の童子
「もうすぐや!」
最後の踊り場を抜け――
屋上へ飛び出した、その瞬間。
ヒュンッ!!
黒い槍が、空気を裂いた。
邪悪な雫
「させないわ……!」
邪悪な気配を纏った雫が、
その手から漆黒の槍を放った。
音を置き去りにする速度で迫る死の刺。
真白
「――いきなり過ぎます!」
真白は瞬時に結界を展開する。
真白が瞬時に展開した多重結界が、
黒い槍を正面から受け止める。
ドォォン!
と爆鳴が轟き、砕け散った槍の破片が
火花のように散りながら、
屋上のコンクリートに深く突き刺さった。
その中央に――
邪悪な雫が立っていた。
静音
「……雫」
そして、真白が叫ぶ、
真白
「みなさん……! 開戦のようです!」
その声を合図に――
大和の術が発動する。
大和
「掛けまくも畏き天津神、国津神の御名をもって命ず。
その穢れ、ここに縛り鎮め給え!」
雫の足元に、巨大な五芒星が浮かび上がった。
大和が放った五芒星の陣が雫の足元で爆ぜ、
ガシャァァァッ!!
熱に熱せられた鉄のような焔の鎖が、地面から飛び出し、
その四肢を絡め取った。
勝機――
そう見えた瞬間、
雫の口角が吊り上がる。
邪悪な雫
「そんな軟な神気……喰らってあげるわ」
雫の周囲から黒い神気が噴き出した。
鎖に触れた雫の肌から、
黒い泥のような穢れが溢れ出し、
大和の鎖をじわじわと侵食していく。
そして――
バキン。
鎖は砕け、黒い霧となって、
雫の中へと吸収された。
雫の神気がさらに膨れ上がった。
大和
「なっ……吸収した!?」
パワーアップした雫が、
次々ととんでもない威力の黒い槍を生成し、雨あられと降らせる。
だが、真白も引かない。
真白
「僕の結界を、ただの結界だと思わないでください!」
真白が加護を上書きすると、
結界に触れた黒い槍が、
まるで砂のようにサラサラと霧散していく。
邪悪な雫
「な……なぜ消える!? 私の力が……!」
驚愕に目を見開く雫。
真白の結界には、
浄化の権能そのものが織り込まれていた。
その隙を、静音が見逃さなかった。
静音
「逃がしません……!」
静音の操る水流が巨大な箱を形成し、
雫を閉じ込める。
静音
「封水結界の理――沈みなさい!」
雫は箱の中で黒い神気を爆発させて抗うが、まるで手応えがない。
おかしい――そう気づいた時にはもう遅かった。
真白
「……気づかれましたね」
真白が静かに告げる。
この水の箱には、
真白の浄化の神気が溶け込んでいた。
悪鬼の神気が威力を失い、
封印の陣へと引きずり込まれていく。
邪悪な雫
「くっ……だったら! 悪鬼じゃなきゃいいんでしょ!」
黒い神気が揺れ、
神気が入れ替わる。
そして――
邪悪な人格が奥へと沈み、
入れ替わるように現れたのは――
透明感のある、『善良な雫』だった。
そして、
その瞳が悲しげに開き、
真っ直ぐに静音を見つめる。
雫
「お久しぶりですね……静音さま」
そう静かに告げた。
――建物内部、澪斗班
侵入した澪斗たちの前に立ちはだかったのは、かつての面影を闇で塗りつぶした葵だった。
葵の視線が澪斗へ向く。
葵
「久しぶりだな……澪斗」
その声を聞いた瞬間、
澪斗の足が止まった。
会えた喜び、
禁忌に堕ちた兄への怒り、
そして悲しみ。
複雑な感情が渦巻き、
声が出ない。
葵の周囲には邪悪な雫の分霊が漂い、
蠢いていた。
葵
「行け」
葵が指先をわずかに動かす。
それだけで、
黒い影が床も壁も這うように広がり、
四人を包囲した。
そして、
黒い影は蒼、優羽、紡へと一斉に襲いかかった。
蒼
「……来る!」
葵
「立派になったな澪斗……嬉しいよ。」
澪斗の瞳が揺れる。
葵
「覚えているか? 術の訓練の後に二人で食べた、あの山苺の味を」
澪斗
「……兄、様……」
紡
「澪斗さん! 聞いちゃダメです!」
葵
「助けてくれ、澪斗。……私を、ここから出してくれ」
蒼
「澪斗! 惑わされないで!戦って!」
紡と蒼の叫びが響くが、
葵の言葉は冷酷に澪斗の精神を削っていく。
そして、
懇願するような葵の瞳に、澪斗の心が大きく揺らぐ。
澪斗
(っ……僕には……やっぱり、兄様を……)
その時、だった。
鋭い罵声が静寂を切り裂いた。
優羽
「いい加減に兄離れしなさいよ!!
あんたが "今" 守ると決めたのは誰?!」
横から飛んできた優羽の激しい一喝。
優羽
「あんたがあたしに言ったのよ!
"足、引っ張らないでね" ってっ!」
「なのに、あんたが足引っ張ってどうすんのよ! 自分の発言には責任持ちなさいよ! バカ澪斗!!」
澪斗
「はぁっ!べ、別に兄離れ出来てないわけじゃっ!」
反射的に言い返したことで、
澪斗の心から、動揺が消え、
瞳に光が戻る。
そして――
澪斗
「拘束の理――動くな!」
澪斗は葵に向けて、
青い光を放つ水の鎖を放った。
葵
「おっと……」
葵はひらりとそれを避けると、
やれやれと首を振る。
葵
「会わない間に、良くない友達ができたようだな」
澪斗・優羽
「「友達じゃないし!!」」
澪斗と優羽の声が完璧にシンクロする。
優羽は近くに迫った悪鬼を豪快に蹴り飛ばしながら、澪斗の背中を叩いた。
優羽
「ぼーっとしてんじゃないわよ! これからはあんたが静音様を支えるんでしょ!」
澪斗は目を見開いた後、
ふっと憑き物が落ちたように微笑んだ。
澪斗
「……言われなくても。でも、ありがとう」
優羽は一瞬驚き、ぽかんとして、
目を瞬かせる。
優羽
(えっ……あの澪斗が……ありがとう?
私に?)
まるで信じられない言葉を聞いたかのように
優羽
「……初めてお礼言われたかも」
だがすぐに気を取り直し、背後の悪鬼を剣で突き立てた。
優羽
「どういたしまして!」
蒼
「……喋ってないでっ!まずはこの数をどうにかして!」
蒼の叫びとともに、
戦場は混迷を極める。
無数の悪鬼に囲まれ、
二手に分断される形となった。
その隙に葵が屋上へ向かう。
優羽
「澪斗! 蒼さん! あなたたちは葵さんを追いかけて!」
優羽が叫ぶ。
優羽
「私と紡でこっちを掃除してから、すぐに合流するから! だから、行って!」
澪斗
「だけど……!」
蒼
「大丈夫……優羽凄く強いから。」
蒼の言葉に、
澪斗は一度だけ強く頷いた。
澪斗
「分かった……紡!優羽!二人に武運を!」
蒼
「……優羽に武運はいらないかもね」
そう言って澪斗と蒼は葵を追い、
屋上へと駆け出した。
背後で激しい戦闘音が響く。
それでも澪斗は、
もう振り返らなかった。
兄と決着をつけるために。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
いよいよ戦いが始まりました。
ここからそれぞれの想いがぶつかる、激しい戦いになっていきます。
もし少しでも面白いと思っていただけましたら、
ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります。
これからも物語を楽しんでいただけたら幸いです。
いつも読んでくださる皆さまに、心から感謝しています。(人´∀`).☆.。.:*・゜




