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一度すべてを失った私が、「選ばない」という選択で世界を壊すまで  作者: 優雨セレス


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第17話 選べない戦い

 ――“選べない状況が来る”。


 その言葉は、ただの予測ではなかった。


 警告だ。


 だから。


 私は、すぐに動いた。


「全員、分かれてください」


 短く言う。


 迷いなく。


「え?」


 リディアが戸惑う。


 当然だ。


 さっきまで“集まる”ことで対処していた。


 それを、今度は逆にする。


「理由は?」


 男が聞く。


 試すように。


「選択を分散させます」


 即答する。


「一箇所に集中すると、“選べない状態”にまとめて落とされる」


「……なるほど」


 アルベルトが低く言う。


「分ければ」


「全滅は避けられます」


 私は頷く。


「ただし」


 視線を全員に向ける。


「孤立します」


 沈黙。


 それはつまり。


 助けは来ない。


 ということだ。


「……いいでしょう」


 リディアが、先に頷いた。


 迷いはある。


 でも。


 理解している。


「私は、東の廊下を確認します」


「私は上階だ」


 アルベルトが続く。


 短く。


 的確に。


「じゃあ僕は」


 男が笑う。


「適当に動くよ」


「……信用できませんね」


「だろうね」


 軽く返す。


 でも。


 止めない。


 今は、それでいい。


「ミレイユ」


 私は、彼女を見る。


「あなたは」


 少しだけ、間を置く。


「私と来てください」


「……はい」


 彼女は、小さく頷く。


 不安そうに。


 でも、拒否しない。


 いい。


 そのままでいい。


「では」


 私は、全員を見る。


「生き残ってください」


 それだけ言って。


 背を向ける。


 躊躇しない。


 振り返らない。


 ――ここからは、個人戦だ。


 ◇


 廊下を進む。


 静かだ。


 さっきまでの騒がしさが、嘘のように。


「……怖いです」


 ミレイユが、ぽつりと呟く。


 正直な声。


「ええ」


 私は頷く。


「正しい感情です」


 そのまま進む。


 足音が響く。


 それだけが、現実を繋いでいる。


「……セレスティア様」


「はい」


「本当に……大丈夫でしょうか」


 いい質問だ。


 でも。


「大丈夫ではありません」


 私は答える。


 そのまま。


「え……」


「ですが」


 一歩進む。


「大丈夫にするのが、私たちの役目です」


 ミレイユが、少しだけ黙る。


 その後。


「……はい」


 小さく。


 でも、確かに。


 応える。


 その瞬間。


 空気が、変わった。


 来る。


 予感ではない。


 確信だ。


「止まらないでください」


 私は言う。


「考え続けて」


「……はい」


 彼女は、頷く。


 そのまま、歩く。


 ゆっくりと。


 でも、止まらずに。


 その時。


 足元の床が、わずかに歪んだ。


「――!」


 反応する。


 でも。


 違う。


 これは、切断ではない。


 もっと。


 広い。


「……来た」


 男の声が、遠くで聞こえた気がした。


 違う場所から。


 でも。


 同時に。


 廊下の先。


 扉が、開く。


 ひとり。


 人影が出てくる。


 ゆっくりと。


 不自然に。


「……また」


 ミレイユが、息を呑む。


 倒れていた者と、同じ。


 戻ってきた存在。


 でも。


 違う。


 今度は。


 二人。


 さらに。


 三人。


 増える。


「……多い」


 私は、呟く。


 これは。


 単体ではない。


 群れだ。


「……どうすれば」


 ミレイユが、震える。


 私は答える。


「選びます」


「え?」


「全部は無理です」


 視線を動かす。


 三人。


 どれも、同じ。


 でも。


 わずかに違う。


「……左です」


 私は言う。


「え?」


「左の個体が、最も“繋がりが強い”」


 説明はしない。


 時間がない。


「そこだけ止めます」


 私は、踏み込む。


 一直線に。


 左の個体へ。


 他は、無視する。


 それが、選択。


 個体が、反応する。


 腕を振る。


 遅い。


 読める。


 私は、躱す。


 そのまま、距離を詰める。


「止まりなさい」


 低く言う。


 目を見る。


 焦点は合っていない。


 でも。


 “奥”に何かがある。


「……戻りなさい」


 言葉を重ねる。


 選び続けながら。


 その瞬間。


 個体の動きが、止まる。


 ほんの一瞬。


 でも。


 十分だ。


 私は、手を伸ばす。


 触れる。


「――今です」


 ミレイユが、動く。


 彼女は、迷わない。


 私を信じて。


 言葉を、重ねる。


「あなたは、ここにいます」


 同じ言葉。


 でも。


 少し違う。


 彼女の声は。


 柔らかい。


 その瞬間。


 個体が、崩れる。


 完全に。


 静止する。


「……できた」


 ミレイユが、呟く。


 驚きと。


 安堵と。


 少しの誇り。


「ええ」


 私は頷く。


「正解です」


 だが。


 その瞬間。


 背後で、音がした。


 振り返る。


 残りの二体。


 消えていない。


 むしろ。


 変わっている。


「……」


 形が、歪む。


 動きが、揃う。


 そして。


 同時に。


 こちらを向く。


「……なるほど」


 私は、静かに言う。


「“選ばれなかったもの”が、強化される」


 ミレイユの顔が、青ざめる。


「そんな……」


 当然だ。


 これは。


 選択の代償。


 そして。


「……来ます」


 私は言う。


 二体が、同時に動く。


 さっきよりも速い。


 重い。


 そして。


 逃げ場が、ない。


 私は、息を吸う。


 そして。


 理解する。


 ――次は。


 “選ばない”という選択が必要になる。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


「選べば助かる」ではなく、

「選べば別の何かが強くなる」


この構造が見えたことで、戦いはさらに一段階進みました。


そして次は、

“選ばない”という矛盾した選択が必要になります。


もし少しでも続きが気になったら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次は「選ばない選択」です。

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