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第2話 あのシスター、聞き上手です。



 どうもこんにちは、シスター見習いのルミナです。昨日はリード先輩の意外な一面を垣間見ることができました。今日も引き続き観察任務を行っていきます。


 今日の観察対象はシスター・アイリス。金色の長くて美しい髪、身体も細くてスタイル抜群、誰にでも優しくて笑顔を絶やさないシスターの鑑です。アイリス先輩はいつも相談室で住民たちの懺悔や願いを聞き、心から寄り添って神様にお祈りをしています。私の勉強にも付き合ってくれたりと、同僚にも優しいです。『神ってるシスターランキング10年連続No.1』の実績は伊達じゃありません。


 今回も私が観察任務を行っていると聞いて、特別に礼拝堂でのお祈りに参加させてもらえました。アイリス先輩はお祈りに集中するためにいつも1人で礼拝堂を使い、その間誰も中には入れません。私は内心ウキウキしながら礼拝堂の扉を開けます。


「ルミナちゃん、来ましたね」

「はい!今日はよろしくお願いします!」

「ふふっ、元気ね。さぁ、お祈りを始めましょう」


 アイリス先輩はそう言って微笑みます。みなさん見てください。あれが本物のアルカイックスマイルです。なんて神々しいのでしょう。あの笑顔を独り占めできるなんて、アイリスしか勝たん同好会の皆様に知られたら八つ裂きでは済まされませんね。


 私と先輩は神像の前で両膝を地面につけて、胸の前で手を組み、静かに祈りを捧げます。お祈りは人々から受け取った願いを神様に届けるシスターにとって最も大事な仕事です。

 と言っても、私はまだ相談室には入れませんので、人々の健康と幸福をお祈りすることしかできません。


 アイリス先輩が真剣にお祈りしていることが、目を閉じていてもわかります。先輩の口から人々の願いが漏れ出ているからです。


「どうかトーマスさんの就職先が決まりますように」

(相談室で聞いたお願いかな?さすがアイリス先輩。無職の人にも親身に寄り添ってくれる……)

「どうかスミスさんのへそくりが見つかりませんように」

(さ、さすがアイリス先輩。家庭の懐事情にまで気を配れるなんて)

「どうかフランクが酒場で飲み過ぎてゲロ吐きませんように」

(……ん?)

「どうかピョートルの馬鹿野郎が仕事でヘマしませんように」

(……んん?)


 気のせいでしょうか。段々と口調が変わってきているような。


「どうかおじいちゃんがけんこうにいきていけますよーに!!」

(こ、今度は口調が子どもっぽく!?)

「どうか婆さんや……わしよりも長生きしておくれ……」

(おじいちゃん!死なないで!)

「どうか転生してハーレム生活が送れますように」

(おいクソジジィ、まだ懲りてねぇのか)

「なぁ、聞いてくれよ。俺は昔冒険者をやっててな。バックパックと短刀だけ持って街から飛び出して、世界中を旅したんだ。旅の途中、物資を補給するためにとある村に寄ったんだが、そのとき出会った村娘に一目惚れしちまったんだ。俺はあの手この手でそいつにアプローチしたんだが、結局振り向いてくれなかった。俺も旅を続けなくちゃなんないから、惜しみつつ村を出ようとしたんだ。その時、その村娘が俺に言ったんだ。『私はシスターになりたいんです。だからあなたの誘いを断り続けました。もしそれでも会いたいと言うなら、聖都に来てください。私はそこで、必ずシスターとしてあなたを待ってます。だからあなたも、しっかりと旅を終わらせて来てください』ってな。だからちゃんと終わらせてきたぜ。……そういや、ここではお願いも聞いてくれるんだよな?うーん、そうだなぁ、やっぱこれしかないよな。またお前とこうして話しができますように。っと」

(長い……!!けど、このお願いってもしかして———)


 私は思わず目を開けて隣のアイリス先輩の方を見ます。するとアイリス先輩はまるでこちらを向くことが分かっていたかのように微笑みながら、私の眼を見つめていました。


「ルミナちゃん、お祈りに集中しなくちゃだめよ?」

「す、すいません!け、けど先輩の呟きが気になって……」

「言い訳をするような子に育てた覚えはありません」

「う……ご、ごめんなさい……」

「……ふふっ、冗談よ」

「じょ、冗談?あの呟きも全部冗談だったんですか?」

「いいえ、違うわ。全て私が聞いたお願いよ。私はいつも彼らのお願いを"そのまま"神様に伝えるようにしているの。たとえどのようなお願いだろうと、神様の耳に届く権利はあるはず。叶うか叶わないかは、神様次第だけどね」

「……さすがです先輩。そのような深いお考えがあったんですね。だとすると、最後の呟きってやっぱり——」

「さてと、それじゃあルミナちゃん、これからあなたのお部屋に行きましょうか。今日は一日中つきっきりで勉強を教えてあげますよ」

「え!?」


 私は結局、そのあとずっと机に向かって筆を動かす羽目になりました。ですが心なしかアイリス先輩は機嫌がよかったように思います。それに、やっぱり先輩は尊敬に値する人物だということを再認識することができたので、私は大満足です。


P.S. 私もアイリスしか勝たん同好会に入会しよっかな……。


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