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撤退

「どうした?もう終わりか?」

「く…くそ…。こんなはずは…。俺は戦闘では最強なはずだ…」


 隼人はうずくまって何やらブツブツ言っています。どうやら喋っていたのは呪文だったみたいで、不意に立ち上がると光で出来た短剣を投げて来ました。

 俺は即座に同じサイズの短剣を生み出すと、隼人が投げた光の短剣にぶつけます。隼人の短剣は霧散して無くなり、俺の短剣はそのまま隼人の肩に突き刺ささりました。


「くぅ…。や…やはりさっきのは見間違いじゃないのか…。お前も…光属性が使えるんだな?」

「そうだな。他にも使える奴に会った事があるぞ?特別だとでも思っていたか?」


 まぁ、特別なんでしょうけどね。会ったのも人造勇者だったし…。


「ぐっ…」

「どうした暗殺者?」

「うるさい!第一この世界には暗殺者は普通にいるだろ?俺がやって何が悪い!」


 普通にいるから何だって言うんだ…。第一、お前とは背景が違うじゃないか。


「全員って訳じゃないが、暗殺者になる者は生きる為であったり産まれによるものが多いだろう。しかし、お前は違う。ただ()がしたいだけだ」

「うるさい!」


 勇者はとてもイライラしています。

 俺としてはこんな事で金稼ぎしてないで、クラスメイトを守って欲しいんだけど…。お前が殺そうとして追い出した俺の分まで…。

 そんな気持ちから、俺は隼人に忠告する発言をしました。


「そんな事じゃ大事な人がいたとしても守れやしないぞ(・・・・・・・)?」


 俺の言葉を聞いた隼人が…ビクンッと身体を震わせました。そして動きが止まります。

 隼人の目は視線が定まっていなくて、まるで白昼夢でも見ているかの様です。

 そして…隼人の雰囲気が一変しました。


「違う…。俺が守るはずだったんだ…。ビビってたんじゃない…。あいつが…あんな奴がしゃしゃり出てくるから…」

「おい。どうした?」

「白鳥さん…違うんだ…。違うんだよ!君を守る勇者は俺なんだ!そんな目で…愛しむ様な目であいつを見ないでくれ!!」


 いったいどうしたって言うんだ?意味がわからん…。そして、隼人は俺の事を見詰めました。


「はっ…ははっ…。なんでだろうな…お前を見てるとあいつ(高杉透)を思い出す…」


 何だ?光が隼人に集まっていく…。隼人の周りでは、フィラメントの電球が切れる時みたいに光が弾けていた。


「ライト!ヤバい!あいつの魔力量…この城が消し飛ぶ!」


 確かに凄まじい魔力だ…。このままだと巻き添えが酷くなる。


「ライトって言うのか。ムカつくよ…お前…」

「ここら辺でやめておけ。このままだと無関係な者を大勢殺す事になるぞ?」

「知るかよ!俺の極大魔法で仲間ごと消し飛びやがれ!!」


 話を聞ける状態じゃないか…。仕方がない…あまり使いたくないんだけど…。


「はははは!全てを飲み込め天照(アマテラス)!!」


 隼人が魔法を発動すると、光が部屋を包み込んだ。目の前が白で染まり何も見えなくなる。

 不幸中の幸いだな…この状態なら見られる心配も無さそうだ。できる限り魔力を抑えて…『虚無』。


 部屋を包んでいた光が消えていく。正確には、俺の手元に飲み込まれて行く。

 この魔法は封印しようと思ってたんだけど…今回くらい強力な魔法が相手ならギリギリ使っても大丈夫かな。最小で発動させたらだけどね…。


 そして、光が全て飲み込まれた後には、フラフラになって立つ隼人の姿があった。何が起きたのか理解ができず、目を見開いて周りを確認している。


「何が…起こったんだ?光に包まれて…全てが消滅するはずだったのに…」

「悪いがお前の魔法は潰させてもらった」

「何だよそれ…。俺の…最強の…魔法だった…のに…」


 ドサッ……。


 魔力が尽きたんだと思うけど、隼人はそのまま前のめりに倒れてしまいました。


 実際、隼人が使った天照とかいう魔法はかなり危険だったと思う。光に包まれたモノを段々と分解していく様な…そういう魔法だったみたいです。

 隼人周辺の床や家具はボロボロになっていました。


「兵士。その暗殺者を捕らえろ」

「ハルト。ちょっと待ってくれ。そいつは…」


 どうにか身柄を預かれないかな?と思ったんですが…そんな話を言い切る前に、倒れた隼人の影から見た事のある顔が現れました。


「おやおや…。勇者の魔力を追って来てみれば…もしかして負けちゃった感じですか?」

「そうだな。で、お前は何しに来たんだ?ヘルマン」


 まさか、魔族のヘルマンが勇者を助けに来たのか?凄く嫌ってた気がするんだけど…。


「それがですね。嫌で嫌で堪らないのですが、勇者を回収する様に言われまして」

「そうか。そんなに嫌なら置いてって良いんだぞ?」

「そういう訳にもいかないんですよ。雇われ者の切ない所ですね」


 イザベラ王女の命令か…。


「そう簡単に渡すと思っているのか?」

「そうですね。では、交換条件と言う訳では無いのですが朗報を1つ」

「何だ?」

「アクル王国ですけど、暫くの間は帝国にちょっかい掛けて来ないと思いますよ?」


 は?いま現在進行形でちょっかい掛けて来てるのに何を言ってるんだ?


「唐突だな。信用すると思うのか?」

「まぁどっちでも良いですけどね。準備が整ったので、帝国を虐めて遊ぶ暇が無くなったんですよ」


 遊び…。バルトロ帝国の人達から凄まじい怒気が溢れてきます。皇帝や王弟を殺されているんですから当然ですよね…。

 でも、俺にはもっと気になる言葉がありました。


「『準備』って何だ?」

「そうそう準備。私はその準備が完了した事を姫に伝えに来ただけなのに、こんな回収を依頼されるなんて…」

「だから、その準備は何なんだ?」

「知りたいですか?」

「そうだな」

「そうですか。それはですね…」

「それは?」

「もちろん…」

「………。」


 引っ張るな…。イライラしてくる…。


「秘密です♪」


 ふざけた発言をした瞬間、ヘルマンの姿は消えて無くなっていました。そして、勇者隼人様の姿も…。

 くそ…注意してたつもりなんだけど…。


「ハルト、悪い。逃げられた」

「いや、俺も反応出来なかった。すまない」


 2人とも反省ですね。すると、ゲートが開いて、また別の人間が部屋へと入ってきました。その人間はもの凄く汗だくになっています。


「ごめん。イザベラ王女に逃げられちゃったよ」


 サリオンはイザベラ王女と戦ってたみたいです。サリオンの方が強い気がするけど、何かあったのかな?


「そうか。魔族に邪魔されたのか?」

「よく分かったね。影から出てきた奴がいて鑑定で見てみたら魔族だったよ。部屋が酷い状態だけど、こっちにも来たのかな?」

「あぁ。戦闘せずに帰って行ったけどな。部屋を壊したのは別のやつで…どうやら勇者らしい」


 こういう時、知らない振りをするのは心が痛みますね…。


「勇者ですか…。やはりアクル王国の尖兵にされてるみたいですね」

「サリオン。俺もこの目で見たがヤバい魔力だった。注意した方が良い」

「ラインハルトがそこまで言いますか。了解です」


 隼人…。関係無い人を沢山巻き込む様な事をするなんて…。途中で雰囲気が変わったけど何だったんだろう…。


「とりあえず…アルバートを新しい部屋に連れて行って、3人とも反省会だな」

「はは…。そうだな…」


 さて、ヘルマンが『アクル王国は暫くちょっかい掛けて来ない』なんて言ってたけど…本当の所はどうなんでしょうね…。


「リル…何もしてない…」


 リルがちょっと拗ねてます。相手が1人しかいなかったからね…。

 戦闘ごっこしてあげたい所だけど、アルバートから離れる訳にはいかないから…もうちょっと我慢してね。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ライトさん。おはようございます!」

「あぁ、アルバートもおはよう」


 勇者様が暗殺に来てから2日が経過しています。結局、あれ以降は刺客が送られる事は無く、平和な時間を過ごしていました。

 今日が約束の3日目だけど、アルバートの安全確保は順調なんだろうか。


 しかし、そんな心配は無用だったみたいで、むしろ前倒しで終わったらしいです。携わってくれた人達がとても頑張ったみたいですね。


「ライト君、ありがとう。少し早いけど、これでクエスト完了だよ」

「サリオン。予定より早く終わったから褒賞を減らさなくて良いのか?」


 予定より束縛時間が減ったから、満額貰うのは悪いなぁ…と思ったんだけど、何故かサリオンから笑われてしまいました。


「はははは!まさか自分から減額の話を持ち出す冒険者がいるとはね。勿論そんな事はしないよ。護衛依頼とかもそうだけど、予定時間なだけで多少は前後するのが前提さ。これでライト君はAランクだよ」

「そうか。了解だ。では、俺はレイオスに戻ろう」


 確かに、正確に何日になるかなんて分からないですよね。逆に言うと、多少は伸びても増額は無いのか。

 お言葉に甘えて、今回は満額頂戴しようと思います。


「ライトさん、リルさん、護衛ありがとうございました!」

「皇帝になる男が、そんな簡単に御礼を言って良いのか?」

「良いんです!僕は…ちゃんと感謝の気持ちを伝えられる男になります!」


 あぁ…。ジョンも皇帝の振りをしてるのに頭を下げたりしてたな。


「そうか。俺もその方がカッコいい男だと思う」

「はい!あの…また何かありましたら依頼を出させて貰おうと思いますが…宜しいですか?」

「当然だ。何かあればいつでも言ってくれ」

「リルも良いよー!」

「ありがとうございます!」


 アルバートは本当に良い子だな。


「それではレイオスに戻る。またな」

「はい!ありがとうございました!」


 さて、3日振りのレイオスだけど、みんな元気にしてるかな?

 俺は、レイオスの冒険者ギルドにある転移用の部屋へとゲートを開きました。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「何だ?騒々しいな…」


 俺がレイオスの冒険者ギルドに戻ると、ギルド全体がとてもドタバタしていました。

 何だかいつもより血の匂いもします。俺は転移部屋を出てカウンターのある広間へと向かいました。あ、バレッタがいる。


「バレッタ。いったいどうした?」

「あ、ライト様。その…静寂の森を調査していた古狼の牙ですが…」

「あぁ、瘴気の調査をしていたAランク冒険者パーティか。どうした?」


「撤退しました…。全員重傷で…命があるのが奇跡的な状態です…」

今回、虚無の内容は不明確にしていますが、改めて別の機会に説明する場を考えてます。

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この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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[一言] 主人公サイド馬鹿しかいないね 読んでて眠くなるわ
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