12話 鉄鋼街ドラゴンスキン 1
鉄鋼街ドラゴンスキン。
竜の肌と言われた町の扉は、いとも簡単に開かれた。
「…ん。あれ、家かな?」
「ようやく、到着よ」
キツくない、緩やかな上り坂の丘を登り。
地平線の向こう側に現れた、一軒家。
近づけば。
小屋の中で腕を組んだまま、居眠りをしている、中年男性が見えた。
「あそこから、ドラゴンスキンって、ことになるわ」
「ずいぶんアバウトだねぇ~。あの人、あそこで、何してるの?」
「えっと…、税関というか、関所というか、門番というか」
声が、萎んでいくのは、ご愛嬌だ。
だが、琴誇に、アリサに慈愛を見せる理由がない。
「仕事する気、ないよね?」
「仕方ないじゃない。
ドラゴンスキンは、森とか、塀とかで、囲まれてないんだから」
「つまり、徒歩なら、ドコからでも入れると?」
「こんな所を、わざわざ通ってくるのは、
荷馬車くらいだから、ああ、なっちゃうのよねぇ」
こんな所と、言ってしまったアリサに。
思うところがあるのは、皆、一緒である。
「税金、取る気ないでしょ?」
「税金なしで、軍隊とか、慈善事業の公共施設とか、
どうやって維持していくのよ。
孤児院まで、総倒れ、しちゃうじゃない」
この言葉の説得力は、ドコに行ったのだろう
「もっと、ちゃんとしようよ…。
ね? ちゃんとしようよ…」
「大丈夫よ、この状況にも、手は打っているわ」
と、目の前の関所と、言いのけた施設が、あるにもかかわらず。
アリサの口は、滑り出す。
これだけパターン化してくれば。
おのずと、車の速度も、落ちるものだ。
歩行者レベルまで。
さて、今回は長いので、覚悟を、ココで決めて頂きたい。
アリサさんの、お言葉を、おまとめすると、こうだ。
鉄鋼街ドラゴンスキンは。
隕石が落ちたような、大きなクレーターから、
鉱石が、取れることから始まった街だ。
街になる前は、ただの資源地だったわけである。
最初は、手が届きやすかった南の首都、レーレシアから。
労働者・発掘調査隊。
鉱石の価値を分かる者達が、細々と採取しているだけだった。
細々と、やっているだけでも。
当時にしてみれば、普通水準以上の生活が、できてしまった。
それだけ、大戦の爪痕は、想像している以上に、ヒドいモノだったのだ。
黙っていても、きれるかに思えた人の流れは、
想像を裏切る形で、増え始め。
長期間、継続的に発掘するため、小屋が建ち。
レーレシアへ、大量に、持ち帰るための道が、必要になり。
権力者の誰が、そうしたわけではなく。
生活のため、生きるため。
自然に、クレーターの北側に、汚い集落がデキた。
これが、ドラゴンスキンの始まりである。
労働者だけが、集まる集落。
出稼ぎ目的以上でも、以下でもない。
まだ、名前もなかった集落が、だ。
同時期、植民を始めた、農業目的の土地より、目覚ましい成長を遂げた。
大きくなり、人の数が増え。
分かりやすい、男だけの世界が、デキれば。
やってくる、利権問題。
幼稚園児のような、主張が、まかり通る環境。
暴力と罵声こそが、集落のカーストを形作っていく。
誰もが、ロープで括った内側を、自分の土地だと、主張し。
労働者を、かき集めるようになる。
それでも、このクレーターは巨大だ。
ロープで囲うことができるのは、全体からすれば、針の先ほどだろう。
無管理・無法地帯に、ポッと出た金の山は。
北大陸内に、部分的な、波乱を作り上げていった。
金が稼げるのは、手放しで良いことだ。
とは、外から見ていたら、口にすることが、できないだろう。
人を、奴隷に仕立てて良いハズがない。
動物のように捨て置いて、コマのように、取り替えて良いハズもない。
甘えなど、一切通用しない。
嫌なら、出ていけ。
その一言で、すべてが、片付けられていった。
専門知識を、たまたま、持っていた者達が、
少ない労働力で、荒稼ぎできてしまったのが、始末に悪い。
総じて、知識人は管理側へ。
環境が、どんなに、ヒドくても、金と集団を黙らせる。
利権を主張する大多数が、戦後復興で苦しむ中。
見つけてしまった、打ち出の小槌。
宝くじ以上に、現実味のある夢だ。
それがたとえ、想像を絶する、肉体労働だったとしても。
機械などないのだ。
掘るのも、運ぶのも、売るのも。
すべて、アナログなのだが。
大戦後の、戦後復興で皆、ひもじい思いをしている中。
この話を聞いて、飛びつかない男は、いないだろう。
少しのうわさが、人を、かき集めるのも当然だ。
当時の南の管理者様は、戦後復興の仕事に、悩殺されていた。
南と区切られた範囲だけとはいえ、大戦が、大戦だ。
手つかずの、野原を開拓するのとは、すべてが違う。
焼野原、荒らし切った大地で。
草は生えるかもしれないが、虫ですら生きることは難しい。
同族同士で、使えなくしてしまった土地を、手入れし。
再度、使えるように、しなければならない。
北大陸は、半分が極寒の地なのだ。
緑地が、できる土地。
全体の面積で見れば、これ以上なく貴重だ。
昨日今日で、解決できるハズがない。
だから、問題だけが、山積みになるのだ。
経済なんて言う言葉が、遠く思えるほど。
当時の人々、管理者の目の前に広がる、荒れ果てた土地は。
見る者の希望を、吸い上げるほどの、ありさまだった。
軍隊こそ運用しては、いたが。
アリサが言うように、維持費と労働量に悩まされ。
ただでさえ、人口そのものが、不足していたのだから。
手ごまで使う人の数など、限られて当然だった。
残っていたのは、武器を取ることが、できなかった人々が、大半だったのだから。
健康で体が動く男性、それだけで価値があり。
人を並べれば、ひときわ、輝いて見える。
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