料理下手の理由と高代の出張と陸奥国の進捗
「それでは、焼いてみます!」
安芸乃はそう言うと、料理人に串打ちしてもらったウナギを関西風の要領で、焼き始めた。その様子を見た料理人達は
「あ、安芸乃姫様。宇治丸を蒸さないのですか?蒸してから焼いた方が食感も柔らかくなり過ぎず
固くなり過ぎずと丁度良い食感になるのですが、それに安全かどうかも」
遠回しに「その焼き方、大丈夫ですか?」と言葉をかけるが、安芸乃は
「大丈夫ですよ。それに、蒸す作業を省く事が出来たら、薪も節約出来ますから。先ずは、一度やってみましょう」
料理人達の言葉を聞かずに作業を続ける。そんな安芸乃の後ろでは、藤四郎が手を合わせて料理人達に頭を下げて謝っていた
藤四郎がそんな事をしていると知らない安芸乃は
「それでは、漬け汁に焼いた宇治丸を入れます」
そう言いながら、タレの入った壺にウナギを潜らせて、そこからまた焼き始めた
これを何回かしていくと
「おお、我々が柴田様から教わった焼き方では出ない香ばしい香りがするな」や
「この香り、皮を強火で焼いているから出ているのでは?」等
安芸乃が目指していた関西風の良い所に料理人達が気づいていた
しかし、1人の料理人が
「香りは素晴らしいけど、宇治丸の脂が薪に落ち過ぎなのは、少し不安じゃないですか?」
と、料理人頭に質問すると、頭は
「確かに、火が燃え過ぎな気もするが」
火力が高い事を不安視していた。そんな中で安芸乃は
「皮目を焼くと、もっと美味しくなるはずですから」
そう言いながら、薪を投入して火力を強くする。その数分後、ウナギの脂が高くなった火種に落下した瞬間
ゴオッ!と火柱が出来ると同時に、安芸乃の焼いていたウナギが炎に包まれる。しかも炎が高代の眼前まで立つと安芸乃は
「きゃあ!!」
思わずウナギを投げ捨てた。火のついたウナギは、調味料が置かれていた棚に着地すると
「火事になるぞ!消せ消せ!」
「は、はい!」
棚が燃え出した。そこからは、料理人達は勿論、藤四郎と高代までもが消火作業にあたり、なんとか棚の一部が焦げたくらいで消火出来たが
焦げ臭い匂いと消火作業のドタバタは、信長達にも届いていた様で
「何事じゃ!!」
「高代、何がありましたか?」
台所まで来ていた。台所の棚が一部焦げているのを見た信長は、棚に近い場所に居る料理人達と高代と藤四郎とは反対に
遠い位置に居る安芸乃を見て、色々と察した様で
「とりあえず怪我人が居ないだけ、マシとしよう。宇治丸に関しては出来ている物だけで良いから、持って参れ」
ボヤの原因が安芸乃である事を聞かずに、既に出来ている蒲焼と白焼きを持ってくる様、命令した
その後、信長達は大広間に戻ってウナギを食べたが、食べ終えてから藤四郎と又次郎と安芸乃は平身低頭で謝り倒していたが
信長から
「まあ、何事も最初は上手く行くわけがないから気にせずとも良い。次からは気をつけよ」
フォローする言葉を受けていた。そんな信長が高代に
「高代、お主が作った宇治丸は六三郎と同じで美味かった。なので、冬の間限定で神戸家を手伝え」
「冬限定で神戸家で働け」と言い出した。これには市が
「兄上!高代は播磨国へ連れて帰ります!神戸家で働かせるなど、もっての外です」
断固反対した。しかし信長は続けて
「市、高代と宗六郎を連れて帰って権六に会わせてやりたい気持ちは分かるが、
京六郎を知り合いの居ない中で働かせては不憫であると判断したからこそ、高代も働かせようと決断したのじゃ!なので、此処は我慢してくれ!」
「京六郎が不憫だから」と、市が断りにくい理由を挙げる。それを聞いた市は
「もう!分かりました!ですが、ちゃんと冬の間限定である事を守ってください!」
信長に「約束を守ってくれ」と強く伝えると、信長も
「勿論じゃ」
了承した。こうして、高代も六三郎と同じく出張が確定した
畿内で軽いドタバタが起きていた同時期、陸奥国の六三郎達はというと
天正二十四年(1596年)一月二十五日
陸奥国 伊達家屋敷
「佐竹殿!柴田殿!誠に済まぬ!今だに二人の嫁の成り手が見つかっておりませぬ!」
「伊達殿、こればかりは伊達殿が悪いという問題ではないのじゃから、そう気にせずとも良い。のう、柴田殿」
「そうですぞ伊達殿。そもそも、歳頃の娘が少ないのですから」
皆さんこんにちは。現在、伊達政宗から謝られている柴田六三郎です
いやあ、佐竹殿が亡くなった四郎殿の正室と側室、更にはそれぞれが産んだ子供達を連れて常陸国に帰るつもりだったのですが
どちらも「兄貴が独身なのが心配なので、嫁を当てがってください。兄貴に嫁が出来たら、常陸国へ行きますから」と、言っておりましたので
陸奥国の事なので、伊達政宗が「自分がどうにかしよう」と張り切っていたのですが
現在、進捗状況は芳しくありません。これは俺が帰るのが遅くなるな!と確信しております。本当は嫌なんですけどね!
で、そんな手詰まり感が出ている状況でしたが、此処で声を挙げてくれたのが
「藤次郎、佐竹殿、柴田殿。この件、私の実家の最上家も巻き込みましょう!私が文を書いて、
今すぐにでも嫁ぎたい歳頃の娘が居たら、伊達家に送り届ける様、頼みたいと思います。なので、もう少しだけお待ちください」
伊達政宗のお袋さんの義姫殿でした。これは期待して良いのか?とりあえず、少しは休めそうなので、お言葉に甘えたいと思います
こうして、休めそうな喜びを感じていた六三郎だったが、そんな気持ちはフラグを立てている事を本人は当然知らなかった。




