武田家に文が届くと話し合いが始まる
天正二十三年(1595年)七月二十日
甲斐国 躑躅ヶ崎館
「御館様!北条家より、文が届きました!何やら使者の者は慌てておりましたが、重要な内容なのです必ず見ていただきたい!との事です!」
里見家当主の義勝と、北条家長老よ幻庵の孫娘の玉姫の婚姻が決まってから10日後、北条家の家臣はかなり頑張ったのか、本来なら2週間はかかる甲斐国への道を僅か10日で走り抜けていた
そして、その文を受け取った武田家家臣から勝四郎の元へ文が届けられた場面から始まる
「北条家からとは、また珍しい。祖父様や父上の頃の悪い関係ではないと思うが、とりあえず五郎叔父上と典厩叔父上を連れて来てくれ!」
「ははっ!」
文を受け取った勝四郎は、五郎と典厩を大広間に連れてくる様、家臣に命令する。家臣が動きだし、しばらくすると2人が到着する
「御館様!北条家から、何か重大な事でも?」
「まさか、領地の事でしょうか?」
2人は到着するやいなや
「北条家が領地の事でしょう文句を言って来たのか?」と、文の中身を推測して来た。そんな2人に勝四郎は
「叔父上達。まだ、中身を読んでおりませぬ。叔父上達が到着してからの方が良いと思っておりましたのです。今から読むので、聞いてから意見を聞かせてくだされ」
そう言うと、「ふ〜」と一呼吸おいて読み出す
「では。「勝四郎!いきなりの文で驚かせて済まぬ!この文を書いたのは、北条家の者ではなく、織田右府じゃ!
実は現在、北条家の居城である相模国の小田原城にて六三郎が頼まれておった、北条家の長老である幻庵殿の曾孫達の婚姻を取り決めておる!
そこで、現在のところ、武田家と共に北条家の内乱鎮圧に関わった里見家当主に、曾孫の中の三人の娘の誰かを正室として簡潔ではあるが、
見合いをさせる所じゃ!自己紹介を受けた時点で、男子も女子もしっかりしておると明言出来る!
それでは本題に入るが、勝四郎も五郎も典厩も覚えておると思うが、六三郎の奴、五郎の兄である竜芳殿の嫡男から、「妹の嫁ぎ先に良き殿方を」と頼まれておった
儂としては、六三郎から婚姻に関する事を引き継いだのじゃ!これを機に関東南部から東海道沿いの安寧を考えて、武田家と北条家には親類になってもらいたい
そこでじゃ!竜芳殿の娘だけでなく、竜芳殿の嫡男、更には五郎の前の嫁の娘達の中で歳頃の娘が居たら、小田原城へ連れて参れ!
そして勝四郎!お主もそろそろ江を迎えに行かせなければ、ならぬ!だから、お主は絶対に小田原城に来る様に!この事は竜芳殿も交えて、しっかりと話し合う様に!」と、
右府様は仰っておりますが、叔父上達。とりあえず二郎伯父上の元へ行きましょう」
文を読み終えた勝四郎は、言葉が出ない2人に恵林寺への移動を促した。2人もそれに了承する
そして、恵林寺まで行き快川紹喜に文の内容を伝えると
「はっはっは。右府様は、やる事なす事万事派手で豪快ですな。しかも、此度の事をやっておられる理由が「柴田様から引き継いだ」とは
これは、竜芳の奴も少しばかり悩むでしょうな。拙僧も竜芳への報告の場に参加させていただきますぞ」
「竜芳が苦しむかもしれないから、側に居ます」と宣言し、勝四郎も
「紹喜和尚。よろしくお願いします」
了承した。そこから竜芳の元へ進むと
「紹喜様!もしや、勝四郎様と五郎と典厩殿が来たのですか?」
竜芳は紹喜が話をする前に3人が来た事に気づく。竜芳が気づいた事で勝四郎は
「二郎伯父上!実は、右府様からの文が届いたのですが、その内容が二郎伯父上の嫡男の勝二郎殿と娘の竜代殿に関する事なのです!それだけではありませぬ!
五郎叔父上の娘に関する事でもあります!なので、勝二郎殿にも参加してもらいたい話し合いを開きたいのです!よろしいでしょうか?」
「勝二郎を話し合いに参加させてくれ!」と竜芳に頼む。それを聞いた竜芳は
「分かりました。五郎、済まぬが勝二郎を連れて来てくれぬか?」
五郎に勝二郎を連れて来る様に頼み、しばらくすると五郎と共に勝二郎が到着する。そこから勝四郎が文の内容を説明すると、竜芳は
「分家筋とはいえ、北条家の姫を勝二郎に嫁がせても良いのか、いや、それ以前に竜代を北条家に嫁がせても良いのか?右府様が認めた若武者とはいえ」
竜二郎と竜代、どちらの相手も北条家の者である事に悩んでいた。それに関しては五郎も同じ様で
「兄上。拙者も、三女の鈴と四女の仙を嫁がせても良いのかと思うところはあるのですが」
今年で十九歳になる三女の鈴と、今年で十七歳になる四女の仙を北条家に嫁がせても良いかと悩んでいた
そんな中で、まだ孫が幼いから婚姻の話が遠い典厩は
「二郎殿も五郎殿も、覚悟を決めなされ。娘達が今生の別れになる国に嫁ぐわけではないのですから。それに右府様は、
御館様に小田原城へ来る様に言っているのですから、どうせならば、二郎殿と五郎殿。2人も小田原城へ行ってみてはどうでしょうか?流石に、北条家も嫌な顔はしないでしょう」
2人に対して、「勝四郎と共に小田原城へ行ってみては?」と提案する。それを聞いた2人は
「勝四郎様、盲目の拙僧が同行しても、よろしいでしょうか?」
「御館様!兄上の補佐は拙者がやりますので、兄上を小田原城へ同行させる許可を得たく!」
勝四郎に頼み込む。2人の言葉に勝四郎は
「分かりました。右府様にその旨を書いた文を届けます。なので、二郎伯父上は勝二郎殿と竜代を、五郎叔父上は鈴と仙を小田原城へ連れて行く準備に取り掛かってくだされ」
「「忝うございます!」」
こうして、武田家は話し合いの結果、娘の父親達が勝四郎と共に小田原城へ同行する事が決定した。




