互いの父を交えたお見合いの結果は
天正二十三年(1595年)四月十五日
近江国 安土城
播磨国の柴田家屋敷を出発して、約2週間。秀吉は本来なら信忠の命令ではあるが、名目上は勝家からの頼み事として、長忠と吉姫を安土城へ連れて、信忠へ挨拶していた
「殿!柴田越前守殿の頼みにより、次三郎様と拙者の娘の吉を連れて参りました」
「うむ。羽柴弾正よ、感謝する。それでは次三郎よ、何故安土城に連れて来られたのか、分かっておる様じゃな」
秀吉と信忠は長年の経験から、2人を連れて来た事を命令ではない事を強調しながら、挨拶を交わす。挨拶を終えると信忠は、緊張している長忠へ言葉をかける
かけられた長忠は
「は、はい!吉姫殿との見合い、なのだと分かって、おります!」
ところどころ口調がおかしくなる程、緊張していた。それでも、この場がどう言う場所か分からないアホの子ではなかった事が分かった秀吉は
「殿。次三郎様は、緊張はしても状況を読み、理解出来る若者ですな!このまま成長したのであれば、一廉の武将になるでしょうな!」
場の空気を和ませる言葉を口にする。秀吉の言葉を聞いた信忠は
「はっはっは!織田家の中でも戦経験豊富な藤吉郎がそこまで言うのであれば、将来が楽しみじゃな!」
笑いながら、長忠の将来を楽しみだと話す。そこから信忠は長忠と吉姫に
「しかし、二人はなにがきっかけで良い仲になったのじゃ?儂は藤吉郎の子供達の事を次三郎に話した覚えはないのじゃが」
「仲良くなったきっかけは何だ?」と質問する。信忠の質問に答えたのは吉姫だった
「内府様!私と次三郎様のきっかけですが、柴田播磨守様です!正確に申すのであれば、私が父上と母上から教えていただきました播磨守様のお話を、
次三郎様も知っておりましたので、そこから色々とお話させていただくうちに、お互いの事を知りたくなったのです!」
吉姫の説明に信忠は
「そうか!次三郎と吉姫も六三郎がきっかけか!全く六三郎の奴は、直接間接問わず人を結びつけるのかのう!儂と松の時もそうであったが、
ここ迄来ると六三郎には三法師の嫁取りもやってもらうとするか!とてつもない良縁を持って来そうじゃ!藤吉郎、お主もそう思わぬか?」
2人のきっかけが六三郎である事を知ると、とてもテンションが上がり、
サラッと六三郎にとてつもなく重大な「織田家嫡男の嫁取り」と言う仕事を任せる事を言い出す。話を振られた秀吉は
「殿、それは良き考えかと思いますが、大殿は三法師様の嫁取りについて、何か言っておられぬのでしょうか?」
「信長は何か言ってないの?」と信忠に質問するが、信忠は、
「父上の事ならば、年末まで待たぬといかん!藤吉郎よ、お主も知っておるじゃろうが、父上と六三郎は現在のところ、関東よりも北の陸奥国に居る
年末には戻ってくるとは言っておったが、その時にでも父上と六三郎には伝える!父上の事じゃ、最初は何も言わずに色々と考えて、最終的に六三郎に任せると儂は思う
藤吉郎!お主も父上や六三郎と付き合いは長いじゃろう?父上が六三郎に「やれ!」と言っておる光景が浮かばぬか?」
「信長なら了承して六三郎を働かせる」と言い、秀吉に六三郎が無茶振りされている絵が浮かばないかと聞く。秀吉は
「それは、、、間違いなく思い浮かびますな。改めてですが殿。お年を重ねる事に大殿に似て来ましたな」
六三郎が無茶振りされる未来がはっきり見えていると信忠に伝えると同時に、信長に似て来た事を指摘する
指摘された信忠は
「父上と似てきた事に関しては、儂自身も実感しておる。恐らくじゃが、十年後か十五年後に元服して経験を積んだ三法師に家督を譲ったら、父上の様に動き回っておる可能性が高い!
儂が生まれる前に亡くなった祖父様も、きっと同じ様なお人だったがかもしれぬな」
将来三法師に家督相続したら信長の様に動き回る宣言をしていた。それを聞いた長忠は
「父上。それをするのであれば、三法師が家督相続した時点で日の本全ての武家が織田家に臣従している状況にしないと駄目だと思いますが」
「完璧に天下統一しないと、それは無理ですよ」と冷静にツッコミを入れる。我が子の的確で見事なツッコミに信忠は
「そうじゃな!次三郎の言う通りじゃ!それならば次三郎よ!儂が動き回る為、三法師が家督相続した時、日の本全ての武家が織田家に臣従する為、何を為すべきか分かるな?」
遠回しながらも「それならどうすべきか答えよ」と長忠に質問する。信忠の質問に長忠は
「父上、それは「織田家の支配地域を広げる!」ですな?」
だった。答えを聞いた信忠は
「そうじゃ。現在の日の本で織田家の支配が届いておらぬのは九州全域、そして陸奥国と出羽国の半分ずつじゃ!そこに出陣して、反抗勢力を叩きのめす事が、
織田家の天下への最短距離になる!だからこそ次三郎よ、出陣前にお主がやるべき事を申してみよ」
まだ征圧していない地域を挙げて、そこに出陣する前に何をやるべきが?と長忠に質問する。質問を受けて長忠は
「柴田家にて鍛えられる事です!」
そう答えた。しかし信忠は
「たわけ!それは当然の事しゃ!全く、正直に答えぬところも儂に似て来おって!次三郎!正直に申せ!!
吉姫を嫁に迎えたいか否か?出陣前にお主がやるべき事は、嫁を迎える事じゃ!ちゃんと、お主の気持ちを吉姫に包み隠さずに伝えよ!」
煮え切らない態度の長忠に、「吉姫を嫁に迎えたいか答えよ」と長忠に発破をかけると、長忠は姿勢を正して
「分かりました。それでは吉姫殿。正直に申します!拙者の嫁になってくだされ。今はまだ領地も何も無い若造ですが、貴女に苦しい暮らしをさせませぬ!」
吉姫にプロポーズした。長忠のプロポーズに吉姫は
「はい。不束者ですが、よろしくお願いします」
そう返事をして、プロポーズを受けた。2人の婚姻が決まった事に秀吉は
「ううう、うう。殿、次三郎様。吉は、しっかり者です。それでも時には心細くなる事もあるでしょう!その時は支えてくだされ!
吉、次三郎様と末長く仲の良い夫婦になるのじゃぞ!これから吉は、次三郎様の嫁なのじゃからな!織田家の事を最優先に考えて行動せよ!」
泣きながらも、吉姫にこれからの事を伝えていた。そして信忠も
「次三郎!これからは養うべき嫁が出来たのじゃ!出陣しても、むやみやたらに敵陣に突撃するのではなくなるぞ!
初陣もまだのお主に言うのもおかしな話になるが、良く考えて戦に臨むのじゃぞ!」
長忠にこれから出陣する場合の心構え的な事を伝えていた。それを伝え終えると
「「二人共、おめでとう!」」
秀吉も信忠も、2人を祝福した。こうして、元々良い仲だった2人のお見合いは、婚姻まで進みハッピーエンドで終了した。




