摩阿姫のお相手は誰になるのかと思っていたら
天正二十三年(1595年)二月二十日
播磨国 柴田家屋敷
勝家の文を受け取ってから、およそ3週間後、前田利家とまつ夫婦は豪姫と菊姫は勿論として、ついでに勝家に顔を見せに行きたいと言って来た面々を連れて柴田家屋敷に来ていた
「又左、まつ殿。よくぞ来てくれた!改めて礼を申す」
「私からも礼を申し上げます」
「そんな親父殿!お市様!摩阿の我儘を直してくれただけでなく、嫁ぎ先まで推挙してくださったのですから、礼などお止めくだされ」
「そうです。礼を申し上げるなら、私達の方ですから」
「そう言ってくれると、こちらも気が楽じゃ。のう、市」
「ええ。それに、明智殿も凞子殿と母君を連れて、花江と六江に会いに来た様ですし、堅苦しい挨拶はこれくらいにしましょう」
「柴田殿、お市様。お気遣い誠に忝うございます」
「前田殿の付き添いで来たのに、申し訳ありません」
「誠にありがとうございます」
明智家から光秀と凞子夫婦、そして光秀の母の深芳が柴田家に来ていた
理由は市が言っていたが、花江が産んだ光秀と凞子にとっては孫、深芳にとっては曾孫にあたる六江に会いに来たからで、その事を言われた光秀は
「いやはや、お恥ずかしい。ですが、その通りですので、娘と孫に会って来ます」
そう答え、深芳は
「生きているうちに曾孫が見られるとは思っておりませんでした。改めて柴田様、六三郎殿が花江をもらってくれた事に感謝しております」
お礼を言っていた。そんな状況だったので、勝家は
「十兵衛は勿論、奥方も母君も、とりあえず花江と六江に顔を見せてやってくだされ。源四郎、明智家の三人を花江の元に案内せよ」
「ははっ!」
源四郎に命令して、明智家の3人を移動させた。そして
「さて、又左とまつ殿。これから摩阿姫の嫁ぎ先に水郷したい三家に来てもらうが、心の準備をしておいてくれ」
「「はい」」
2人に心の準備をしておく様に伝えて、返事をする。それを確認した勝家は
「うむ。それでは利兵衛。三人を連れて来てくれ」
「ははっ」
利兵衛に3人を連れて来る様、命令する。しばらくして利兵衛が3人を大広間へ連れて来ると利家は
「親父殿。甚九郎と元助は幼い頃に見たから知っておりますから、初対面の方か最上殿と分かりますが、もしや最上殿は、四十を超えておりませぬか?
摩阿には嫁ぎ先で幸せに暮らして欲しいのですが、流石に年齢的な事を考えると」
義光を見て、「コイツ、歳上過ぎない?」と勝家に小言を伝える。言われた義光は
「前田殿、ご安心くだされ。摩阿姫殿を嫁に欲しいのは、拙者ではなく拙者の倅ですから!拙者の倅は摩阿姫殿と同い年です!これならば年齢の心配も無いと思いますぞ!」
利家に「相手は自分じゃなくて息子だよ!年齢も摩阿姫と同い年だから安心してくれ」と返す
義光の言葉に利家は
「そうでござったか!早とちりしてしまい、申し訳ない」
平謝りしていた。一通りのやり取りを終えると利家は
「親父殿、実は此度、摩阿の嫁ぎ先が決まるとの事で、それならば摩阿の妹二人の嫁ぎ先も決めてしまえと思い、連れて来たのです!摩阿と共に見合わせてもよろしいですかな?」
「下の娘達もお見合い参加させてくれ!」と頼む。いきなりのリクエストに勝家は
「市、こういうのは市のほうが得意じゃろう?」
市にそれとなく聞いてみる。すると市は
「なんて素晴らしい!それでは、摩阿姫の妹達の嫁ぎ先も決めてしまいましょう!」
ノリノリで即決した。
市の言葉を聞いて勝家は
「それでは市、摩阿姫殿を呼んで来てくれ。まつ殿は妹達を頼む」
「「はい」」
市には摩阿姫を、まつには豪姫と菊姫を連れてくる様に伝えて、2人は一時的に大広間を出る。そして娘達が到着すると、1番驚いていたのは利家だった
その理由は
「摩阿、あの頃と比べると大人になったのう。しかし、豪と菊は到着した時より化粧が大人びた感じになっておるが、お市様かまつが化粧を施したのですか?」
摩阿姫が大人になっている事もあったが、連れて来た娘2人の化粧が来た時とガラッと変わっていたからだ。この事で豪姫が
「父上。実は、奥方様の侍女の信子殿が化粧をしてくれたのです。可愛らしさの中に、少し大人っぽく見える化粧をしてくれたから、この様になりました
鏡を見た時は、驚きました!こんな化粧が世の中にあるなんて、知らなかったのですから!」
喜びながら、説明していた。説明を聞いていた利家は
「そうか。それではいつか必ずや、その信子殿に礼の一つでもせんといかんな」
そう呟いていた。そんな中で、いよいよ前田家の3姉妹のお見合いがスタートしようとしている所に
「「「摩阿姫様!」」」
摩阿姫に長刀を指導されている各家の女達が集まって来た。娘達を見た摩阿姫は
「貴女達!今日は私は教える事が出来ないから、つる様に教えてもらいなさいと言ったではありませんか!何故こちらに来ているのですか!」
思わず叱責する。しかし娘達は
「摩阿姫様の嫁ぎ先か決まるのです!それを私達も祝いたいのです!つる様も了承してくれました!」
「そうです!私達にとって、お師匠であり、姉でもある摩阿姫様を嫁にもらう殿方をこの目で、見たいのです」
「摩阿姫様が私達に常日頃仰ってくださっておりました「良き殿方へ嫁ぐ為に頑張った結果」をこの目で見たいのです!」
摩阿姫の嫁ぎ先が決まる瞬間は勿論、師匠である摩阿姫の教えの最終結果を見たい。と希望して来た。その言葉に摩阿姫は
「もう!貴女達!お見合いが終わったら、長刀を疲れるまで振りますからね!柴田様、奥方様!教え子達が側に居る事をお許し願えますか?」
嬉し涙を流しつつ、勝家と市に教え子が居て良いかと質問する。勝家と市は
「それくらいは良い」
「しっかりと大人の女性の振る舞いを見せなさい」
「はい!」
許可を出す。摩阿姫が多くの娘に慕われている光景を目の当たりにした利家は
「あの摩阿が、我儘で、このままでは嫁の貰い手が無いと、心配していた、摩阿がこれ程慕われておるなんて」
嫁ぎ先が決まったわけでもないのに、既に号泣していた。こうしてお見合いスタートの前に少しばかり手間取ったが、改めて、お見合いはスタートした。




