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24話・ご無体はおよしになって

「でもナイルは聖職者なのでしょう? 妻帯は許されてないはずじゃ…」

「ぼくはきみと一緒になりたいから還俗することにしたんだよ。叔父上にもすすめられていたしね。ぼくは先代のパルシュ国王から財産としてブラバルド大公国に隣接するユーリッシュ地方を所有地として頂いていてね、叔父上に委託してその管理をお願いしていたんだ」

 あいつはあてに出来ないから。と、ナイルが苦笑する。あいつとは言わなくてもわたしにはわかっていた。パルシュ国王ヘリオスだ。確かに彼なら弟の所領だろうが手を出して好き勝手しそうだ。その点、養父なら安全だ。真面目で実直だからナイルが不在中もきちんと管理してくれるのは確実に思えた。

「叔父上にはもともと還俗を勧められていたんだ。だからいまは還俗する為の申請中で半年は正式な処分が下るまで待たなくてはいけないけど、どうしてもきみに会いたくなって叔父上にセッテングしてもらったんだ」

 なるほど。今夜のことは養父とナイルがわたしに内緒で驚きの再会の場を用意していたということらしい。

「だけどさっきヘリオスに組み敷かれているきみを見たらこれ以上、待てないと思った。まりか。ぼくと結婚してくれないか?」

「ナイル」

 ナイルの言葉は正直嬉しい。でもわたしには気にかかってることがあった。わたしの表情の陰りに気がついたらしいナイルが寂しそうに言う。

「まりか。喜んではくれないのかい?」

「嬉しいけど…ナイルはわたしのことどう思ってるの? この世界にわたしを召喚してしまったことで責任を感じてわたしをお嫁さんにするつもりなら止めた方がいいと思うの。わたしは所詮異世界の者だから。あなたはあなたに相応しいこの世界の女性と一緒になるのが一番だと思うの」

「きみは本気でそう思ってるのかい?」

 ナイルは苛立ちを押さえた様な声音で言う。わたしは頷いた。

「わたしはナイルに甘えてたわ。この世界に来てから何も分からなくて傍で支え続けてくれたナイルを頼りにしすぎた。幼い考えであなたを束縛してしまった。でもそれはあなたにとって良いことだったのか考える時があるわ。わたしがあなたを手放さない限りあなたを縛りつけてしまう。他にあったはずの未来を捨てさせているのかもしれない」

「きみ以外の未来なんていらないのに」

「ナイ…!」

 気がつけばナイルがソファにわたしを押し倒していた。

「ぼくはきみが好きなんだ。そのぼくに他の女性との未来をすすめるなんて、きみはどれだけ残酷なんだ。ぼくがどれだけきみを欲して来たのかを今思い知らせてあげるよ」

 ナイルの感情を押し殺した様な声が耳元で囁いた。その声音がこれから起こる良からぬことを予感させてなんだか怖い。

 きゅっと目を瞑ったわたしの手首をナイルは強引に掴み、ひんやりとした鋼鉄のようなものを押し当てて来た。

 えっ。なに?と、思う間もなくガチャリッ。と、耳触りな音がして、目を開ければわたしの左手首とナイルの右手首が鉄の手錠で繋がれていた。わたしは意味が分からず混乱する。

「ナイル。これなに? どういうこと? 監禁プレイなの?」

「なにって。手錠だよ。こうしていればきみと未来永劫、繋がっていられる。ぼくにとっては有効なアイテムだけど? これできみともう二度と離れることは無い」

 わたしの上から身を起こし蔓延の笑みを浮かべてナイルが答えた。腕を引かれてわたしも起き上がる。

「え。やだ。こんなの」

 手錠で繋がれた関係なんて。二人の手錠の間には五十センチほどの距離しかない鎖が繋がっていてどちらかが動けば片方もつられるようなものだ。

「どうして? ぼくと一緒はいや?」

「ナイルと出来ればずっと一緒にいたいけど…」

 ナイル一体どうしちゃったの? 変態さんになったの? やっぱり変態王子と双子だけあってその片鱗がいま現れて来たということなの? 軽くショックを受けているわたしの頬を彼が撫でた。

「どうしちゃったの? まりか。ぼくらが繋がる事で何か問題でもある?」

「あるわよ。大ありよ。問題あるでしょ? トイレとかお風呂とかどうすればいいの?」

 暢気なナイルを睨めばそんな顔も可愛いね。と、腰を引き寄せられた。

「今さら何照れてるの? 夫婦になるんだから全てをさらけださなくちゃ。十年前みたいに一緒にはいろ♪ まりかの成長を楽しみにしてたんだよ。あんなところやこんなところ大事なところも含めて毎日ぼくの手で洗ってあ・げ・る」

 ナイルの言葉がわたしの柔な心臓を揺さぶる。十年前はわたしも幼かったからナイルを大好きなお兄さんとして見てて平気で入浴も一緒にしたけど、それをこれから一緒に毎日? と、思ったら一気にわたしの脳内温度は上昇した。

 ぷはあ。白い湯気のようなものが上がってる様な気がする。わたしは意識を保てずに卒倒した。




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