第31話 アイリスとジンジャーの修行
佐藤夏樹とテレサが修行をしている間、アイリスとジンジャーはマリーの元で魔法の修行を行っていた。
アイリスとジンジャーは佐藤夏樹がテレサの攻撃で悲鳴を上げているのを聞きながらもマリーは顔色一つ変えずににこりとしながらこう言う。
「それじゃあアイリスちゃんにジンジャーちゃんには得意な魔法の強化をしてもらおうと思っているわ。正確には強化ではなく効率よく使う修行だけどね」
マリーがにこりとしながら言うとアイリスとジンジャーはうんうんと頷く。
「アイリスちゃんは風以外に何が使えたっけ?」
「え~っと、私は風と水と光属性魔法が得意かな~」
アイリスは自分の指を数えながら使える魔法属性を数えていた。
「ジンジャーちゃんは無属性魔法が使えるんだっけ?」
「実はさ、無属性以外にも最近私もジョセフみたいに光属性魔法が使えるようになってさ……」
ジンジャーはいつの間にか使用できる属性魔法が増えていることにマリーは驚きを隠せずにいた。
「基本的に使用できる属性魔法が増えることなんてことはありえないんだけどジョセフ君といいジンジャーも結構意外性があるよね」
「まあ私の場合冒険者しながら行商していたしね」
「ジンジャーちゃんって初めて会った時から思っていたけど結構他の人と違う感じよね」
「そうかな?私はこれが普通だと思っているし」
「別に私もジンジャーは変だとは思わないぞマリー」
アイリスはジンジャーを変だとは思っておらずマリーは(そういう意味で言ったのではない)と内心思いながらも修行に入ろうとしていた。
「とにかく二人がどんな属性の適正があるか分かったから早速魔法を発動してもらってもいいかな?」
「分かった、まずは私からいくよ。『ウィンドカッター』!」
アイリスは右掌を前に出し『ウィンドカッター』が空を切るようにアイリスの目前に立っている岩目掛けて軌道に乗っていた。
『ウィンドカッター』は剃刀のように岩を一刀両断するのかと思っていたのだが軽く亀裂を入れるだけで威力が減衰していたみたいだ。
「う~ん、ゴブリン程度の魔物なら確実に仕留められるわね」
マリーはアイリスの魔法を見てこの年でこれくらいのことができるだけでも大したものだとでも言いたそうな顔であったが裏を返せば戦力としてはまだまだという解釈もできる。
「やっぱり私ではジョセフみたいには強くなれないってことなの?」
「いやアイリス、マリーはこう言いたいんだよ。アイリスの年齢を考えれば魔力量が少ないながらよくここまで魔法が使用できるようになったなと思っているはずよ」
肩を竦め俯いているアイリスをフォローするかのようにジンジャーはああだこうだと励ましていた。
「まあジンジャーちゃんの言う通りと言った方がいいわね。正直なところアイリスちゃんと同じくらいの歳は私だって魔力量は今みたいに多くはなかったわ」
マリーは自分の魔力量がアイリスと大差変わらなかった時期があることをアイリスとジンジャーに言った。
「「うそおっ!?」」
アイリスとジンジャーは息ぴったりに声をあげる。
「それじゃあジンジャーも魔法を見せてくれるかな?」
マリーはジンジャーに尋ね、ジンジャーはいつものように構える。
「『ハイスピード』!からの『スパーク』斬り!」
ジンジャーは『ハイスピード』を発動し、ジョセフが使用していた『スパーク』斬りで岩は木端微塵となる。アイリスの魔法では亀裂が入る程度だったのにジンジャーは二つの魔法をゲームのコンボのように組み合わせたことにより威力を倍増させていた。
「これが私の技量ってやつかな。ジョセフがやってたのを試してみたんだけど魔力をコントロールするのが難しくて威力を抑えられなかったんだよね……」
ジンジャーは頭をボリボリと掻きむしりながらアハハと笑っていた。
(ジンジャーちゃん、まさかとは思っていたけどジョセフ君の『スパーク』の使い方を見ていただけなのに魔力のコントロールこそ到底ジョセフ君程ではないにしても無属性魔法『ハイスピード』を応用しての『スパーク』を使うアイディアは流石行商していただけ頭はいいってことね……)内心マリーはそう思いながらジンジャーの魔法の才能に驚かされていた。
「多分ジョセフ君が魔力コントロールが上手く出来ているのは明確にイメージが浮かんでいるからなんじゃないのかな?少なくともあたしはそう思うけどね」
「なるほど!」
ジンジャーは手をポンと叩きながらマリーの意見に頷く。
「分かった!イメージを明確に浮かばせればいいんだね?」
「それは私でも同じなのかな?」
「多分そんな感じで行けば以前よりも魔力コントロールがアイリスちゃんも上手くなるはずよ?」
マリーは適当な表情をしながらアイリスにアドバイスをする。
「《《明確なイメージ》》って簡単に言っているけどそれで上手くいくなら苦労はしないのだけれど……」
アイリスはマリーに弱音を吐きながら頬を膨らませ睥睨する。
「今は分からなくてもいつか必ず分かる日が来るわよそもそもジョセフ君がやっていることは高等テクニックのようなものだし最初は上手く出来なくても当たり前よ。魔法の威力をコントロールしてなんて戦い方だって私クラスの魔法使いでも普通はそんな簡単にできないんだから……まあ《《威力を調整する使い方を練習》》したことないだけでやればできるんだろうけど」
マリーはジョセフの魔法の使い方に関して少し動揺しながらも自分も練習すればできると高を括るような口ぶりでアイリスとジンジャーに言う。
「『クレイ』!」
マリーは土属性魔法『クレイ』で土の壁を粘土のような土で生成し、火属性魔法『ファイアー』で粘土を急激な温度変化を加えながら乾燥させた。
「嘘でしょ……粘土を3秒程度で乾燥させるなんて……ありえない!」
「これがあたしの技量ってやつよ。なんとなくジョセフ君がどんな風にやっているのか想像しながらしてみたらこんな風に仕上げられたわ」
ジンジャーは両手を口に当て驚き、マリーはドヤ顔で自分も魔力コントロールができることをアピールしていた。
マリーはアイリスとジンジャーに魔力コントロールをするところを見せつけるだけ見せつけ後は自分達でどうぞというような感覚で後ろに下がり二人を見守る。
「やってみる!イメージを明確にして魔力をコントロールしてみせるの!」
アイリスはふんす!と鼻息を立てグッと自分の拳を握り締める。
マリーが魔法で作った全長メートルほどある粘土をどのように魔法で破壊するのか目を瞑りながらイメージを作り上げ、アイリスはそのまま右手を出し詠唱を始める。
「風神よ、我に風の加護をお与えくださいませ。『ウィンドスラッシュ』!」
アイリスの右掌から緑色に輝く魔法陣が飛び出し風はソニックウェーブのように年度の方へと軌道に乗り始める。アイリスは閉じていた瞼を開け物凄い目力で粘土を睨みつける。
風属性魔法『ウィンドスラッシュ』は『ウィンドカッター』の発展型で魔力消費量もその分多いため滅多に使用できないものではあるがジョセフが使用しているような複合魔法『パープルサンダー』のように使用すれば人体に影響が及ぶわけではない。
粘土は真っ二つになり、断面は寸分狂わぬ形で仕上がっていた。
マリーは闇属性魔法『サイコキネシス』で真っ二つになった粘土の一つを空中に浮かせ、断面図が触れられる向きへと調整し地面に置き手でさらりと触る。
「こんなに綺麗に切断できるとはね……」
一度聞いてなんだかんだ言っていたアイリスが一度のアドバイスで魔力コントロールに成功したことにはジンジャーですら驚きを隠せずにいた。
「凄いじゃんアイリス!」
ジンジャーはアイリスを褒めちぎり自分もやるぞとやる気を出していた。
「威力を抑えることによって消費量まで削減するって発想もジョセフ君がいてこそできたことよね」
「そう考えるとジョセフってマジで凄いんだな……魔法初心者が使うような『スパーク』で魔人族倒したりと……」
「もしかしたらジョセフ君には私達とは違う何かがあるのかもしれないわね。あの独特な発想があったからこそ私達はこうして生きているし出会いもしたんだから」
「ジョセフがいなければ私もこうやって修行なんてすることもなかったしね」
マリーとジンジャーはジョセフと出会ったことを思い出しながら草の生えた地面に座りながら楽しく会話をしていた。
「それにしても佐藤夏樹君はどうしたの?テレサにこっぴどくしごかれて急にどっか行っちゃったけど……」
「彼ならきっと宮廷に帰ったんじゃないかな?テレサちゃんにも無理して練習しても意味ないって途中で修行止めちゃったし」
ジンジャーが佐藤夏樹のことを心配しながらマリーは木陰で剣の素振りをしているテレサを見ながら微笑む。
木陰で素振りをしているテレサの姿は剣道を必死に練習している可憐な美少女そのものであり男子高校生であれば間違いなく見惚れてしまいラブレターを渡してしまいたくなるくらいだ。




