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狐の嫁入りっ ちょっと? 九尾な女の子  作者: 雛仲 まひる
ちょっと? 九尾3人娘イラストそろい踏み感謝際! ちょっと? 九尾な女の子 番外編&短編
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狼の御奉公っ ちょっと? 腐った女の子 (ちょっと? 九尾な女の子) その3

 ちょっと? まだ午後4時過ぎなのよ? ニコニコおはよー工場見学ツアーの日程は工場がある地域までバスで約1時間半、そして途中で超有名な観光地を散策して、このツアーのもう一つの売りになっている伊勢海老の天丼食べ放題の後に、午後3時に工場入りして工場見学と新作ニコニコプリンの試食モニタ、そして帰路に着き、17時到着予定、そして解散だったはずよ? どうしてもう狐の奴が帰ってくるのよ?


 狐の様子を窺がってみると……。


 怒っているはずなのに、時折、気持ち悪い笑みを浮かべてはまた眉を吊り上げて説教を始め出したり忙しそう。


 ……何故かやけに、にやけていて嬉しそうね? あんたってば。


「ぅんとにもうっ! あんたたちはちょっとウチが目を離した隙に知泰にちょっかいだしてっ! なにかあったらどうすんのっ? 言っておくけど知泰だって年頃の男の子なんだかんねっ。あんたたちみたいな女の子が家に押し寄せてきたら、ヘタレなあいつだってケダモノになるかも知れないじゃん!」


 いや別に……ある意味、それが目的でもあるっちゃあるんだけど。


「御姉様、それは違う。御主人様はケダモノじゃないわ」


「狼、なにが違うの? ウチが間違ってるって言うのっ」


「そ、ケダモノは私たち。だって皆、獣系の妖だもの」


 普段は無表情、無口キャラのクール系美少女であるところの大神おおがみ 紅葉もみじがまさかの突っ込みを入れるなんて予想外だったけど、言い得て妙ね。


「まあいいわ、それはそれね」


 いいんだ狐、あんたこの場合に言うケダモノの意味を知らないだけでしょ?


「それよりっ! これよこれっ。あんたたち、こんなもの持って来て知泰に食べさせようとしてたんでしょ? 惚れさせ茸?」


 ……狐の奴も惚れさせ茸? の噂をやっぱり知ってたのね。


 ここで惚れさせ茸? について説明しておくわね。


 惚れさせ茸? とは。


 形状は松茸に似た形なんだけど、松茸より若干大きい感じかな? 彩はというと傘の部分が赤みがかった深いピンク色をしたキノコで、足の部分は日焼けした肌の様に焦げ茶色をしているのよ。


 妖界に広がった噂では、惚れさせ茸? を食べて最初に見た人にメロメロになってしまうそうなの。


 まあ効力に時間制限はあるみたいなんだけど、意中の相手に食べさせて惚れさせている時に、既成事実を作ってそのままゲットしちゃうっていうアザとい手口が横行しているらしいのよね。

 

「まったく……油断も隙もありゃしないわねっ」


「ところで御姉様、これはなに?」


 大神 紅葉が狐が持って来たキノコの絵が描かれた紙袋を指差し、疑惑のジト目を向けている。


「こ、これはっ……その、ち、違くてっ! お、おおお、お土産よっお土産っ。ウチは別に知泰に惚れさせ茸? 食べさせてキャッキャウフフして貰おうなんて微塵も思ってないんだかんねっ!」


 ……思ってたのね、狐。


「なんだよ? さっきからお前ら騒がしいぞっ。調理も途中でほったらかしにしやがってっ! 火を使っている時は目を離すんじゃねぇーよ」


 狐に連れ出されたリビングの方から知くんの声が聞こえ、それと共に足音も近付いて来た。


 そしてドアノブてを掛けたようで、ノブがガチャリと音を立てて回る様子が目に移し出された。


 背中側では狐と狼がなにやら騒がしく、と言っても主に騒がしいのは狐なんだけど、狼になにか言っている声が聞こえ、ガサゴソと耳触りの悪い擬音も混じって聞こえて来ている。


「ちょっ! 狼っ、あんた人の持ち物を勝手に――」


「御姉様、はい、あ~ん♡」


「あ~ん♡」


 ……狼の奴、狐に惚れさせ茸? を食べさせちゃった。


 それも大きくて太いキノコを生のまま、口に咥えさせてるしっ! もし何かの間違いで漫画化やアニメ化した時に、これ絵面をどう処理するのよっ!


 女の子が傘がまだ開いてない状態のエラがはった棒状のキノコを口に咥えてる絵面なんて、モザイク処理されちゃうじゃないっ。


 不味い、知くんがドアを開いた絶妙のタイミングで、狐の眼が熱っぽく潤んで、とろ~んとし始めた。


「美九音? お前ら、いったい何やってんだ? 料理の続きは俺が引き継いで、既に完成している。ちょっと早いけど食っちまおu――」


 ダメっ! 狐の名前を呼んだら、反射的に呼ばれた相手の方を見ちゃうじゃないっ! もし惚れさせ茸? の効力が出始めた狐が知くんを見たら……、なんとかそれだけは回避しなくちゃ!


「と、知くんっ! 伏せてっ」


「な、なんだっ?」


 あたしの言葉に反射的に身を屈めた知くんは、その場にしゃがんで低い態勢を取った。


 よっし今がチャンスよ! 未美。


「なっ! ちょっ、ちょっと未美さんっ!」


 あたしはしゃがみ込んでいる知くんに素早く近付き、狐の視界から咄嗟に知くんを隠した。


「ち、ちょっと未美? 水色っ! 水色と艶めかしい絶対領域の肌色と太ももを覆う白のコントラストがばっちり視界を覆ってますけどっ! あっ、水色の向こうに暗雲地帯が透けて……こ、これは陰m――」


挿絵(By みてみん)


「知くん? その先は言っちゃダメだぞっ」


 と、知くんっ! そこまで解説しなくてもいいのっ。


「んん? 未美、お前っていい匂いがするよな? す~、はぁ~、す~、はぁ~」


 って、と、知くんっ! そんなところで、乙女の不可侵領域で盛大に息しないでっ! 

 あたしのスカートの中から知くんの声と息遣いが聞こえてくる。


 そうあたし……やっちまいましたっ。 アハッ(o^-')ゞ♡


 咄嗟に機転を利かせて、狐の視界から知くんを隠したのはいいけれど、思い付いた方法があれだったわ。


 あたしはそう。


 しゃがんだ知くんの頭から、履いて来た可愛いヒラヒラの付いたレモン色のフレアミニスカートを、スッポリ被せたのでしたっ。 (〃_ _)σ∥


 でもこれで問題が解決したわけじゃないのよね? もし狐が一瞬でも知くんを見ていたら……、もし狐の視界が知くんより先にあたしを見ていたら……。


 ……あたし、そっちの趣味無いんだけど、見られてたら惚れられちゃうよね?


 恐る恐るあたしは狐の方に振り返ってみた。


 すると大神 紅葉が狐の小さい頭を両手でガッチリ押さえて、狐が振り向けない様にロックしていた。


 狐はとろ~んと蕩けた顔で大神 紅葉に熱っぽい視線を向けていた。


「も、紅葉ちゃんって、ほんと綺麗よね? ウチ、ちょっぴり、ほんとちょっぴりだけど、嫉妬しちゃうわ」


「なにを言っているの? 御姉様は何時だって綺麗でキュートなお顔をしている」


「ウ、ウチね? ほんとはいつも不安なの。こんなにも綺麗な紅葉ちゃんが知泰の傍に居たら、いつか知泰が紅葉ちゃんを好きになっちゃうんじゃないかって……ウチより紅葉ちゃんを選んじゃうんじゃないかって、気が気じゃないの。それに紅葉ちゃんも知泰しか見なくなって、ウチなんかもう忘れちゃうんじゃないかって不安なの……」


「御姉様、大丈夫。もしそうなっても私は御姉様の物よ?」


「紅葉ちゃん……ウチ、嬉しい」


 蕩けた顔をした狐が目を閉じ、なにかを待つ様に小さくて薄い唇を若干前に差し出した。


「御姉様……」


 大神 紅葉は狐の小さな顔の頬に両手を添えて、自分の方へとゆっくり引き寄せて行く。


 そして狐と狼の唇が重なり合って……って! あんたたちなにやってんの! 女の子同士でっ。


 恐るべし! 惚れさせ茸? というか狐に見られたのがあたしで無くて良かった。


 だってあたしの唇は知くん以外に触れさせたくないもん。




 番外編 4へ 続く。

ご拝読アリガタウ


次回もお楽しみにっ!

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