僕の話
人通りのない朝の町で、最近僕は変な人に会う。
ここ数日、掲示板の前でじっと行方不明者のチラシを見ている女性がいるのだ。
その女性の顔がどう見ても、チラシに描かれた似顔絵にそっくりなので不思議に思っていた。
行方不明者が、自分で自分の行方不明情報を眺めている。
そんな妙な光景に困り果てて、昨日はついネットの相談サイトにまで書き込んでしまった。
やっぱり、警察に通報するのが一番かもしれない。そう思って今朝も掲示板の様子を伺いに行くと、あの女性がいた。
ところが今日は掲示板に貼られた行方不明者のチラシを、べりべりと引き千切っている。
彼女は引き剥がしたチラシをじっと見つめて、それから躊躇なく紙を破り捨てていた。
いくつもの紙の破片が風に乗って道路の上を舞う。
女性はふらふらと歩き出し、次は電柱に貼られた同じチラシを剥がそうと手をかけた。
「どうされたんですか?」
恐る恐る声をかける。
こちらを振り返った女性は僕を見て、ぱっと顔を明るくさせる。
それから弾むような口ぶりで、チラシを指した。
「これ、もういらないから剥がしてるの」
彼女の花柄のワンピースが、風に揺れる。
その顔は、目の前のチラシに載っている似顔絵そのままだ。
【鐘崎みきこちゃんを探しています!】
「もう、私がお家にいるんだから、こんなもの必要ないでしょ」
ね、そうでしょ?と彼女は僕を促す。
やっぱり行方不明の子が帰ってきたんだ。
それはとても良いことだと思った。
とても優しくて清くて白い人なので、帰ってきてくれて、うれしいと思いました。
「良かったですね」と、ぼくは言いました。
みきこちゃんは「はい。お友達をたくさん作りたいな」と答えてくれました。




