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リリーラ王国物語  作者: 麗海亜
12/15

新たな一歩

 ーリリーラ王国宮殿 執務室

 そこではクロエとアメリアが二人で話していた。

「この情報は本当なのか⁉︎」

「ええ。その場にいた人が全員口を揃えて言っているから間違いないはずよ」

「敵の情報はまだだが、そんな事よりもルーナが目を覚ます可能性が少しでもあるのであれば協力してもらいたいな」

「そうね。では早速宮殿への招待状を送りましょう」

「そうだな」

 敵の情報はルーナが眠ってから全く手に入っていない。分かっているのは名前くらいだ。だが、クロエとアメリアはある楽師を宮殿へ招待することにした。それはルーナが目を覚ます可能性を0から1へと変える希望となった。


 ー数日後

 ある楽師はリリーラ王国宮殿の前に立っていた。

「初めてここに来たけど、やっぱりリリーラ王国は広いんだなぁ……」

 楽師として色々な国を旅していたが、リリーラ王国のように立派な国はあまり多くなかった。

「そんな事よりもなんで俺は呼び出されたのか……。全く分からないが、行けば分かるだろ」

 楽師は呟きながら、リリーラ王国宮殿の門へと近づき、

「すみません。本日、こちらから招待状が来ていたのですが……」

と門に立っている兵に言った。

「確認しますので招待状を見せて頂けますか?」

そう言われたので招待状を見せると、

「どうぞ中へ」

と言って、門を開けてくれた。そして兵は、

「ついてきてください」


 ーリリーラ王国宮殿執務室

 そこでは一人の男と一人の女が真剣な表情で立っていた。よくよく見ると、二人には共通して目にクマがあった。最近は忙しいのだろうか。

 俺はどう声をかけるべきか考えていると、男の方が最初に話始めた。

「忙しいところ、このリリーラ王国に来てくれた事を感謝する。私はクロエ・ベルナットだ。よろしく頼む」

 クロエの自己紹介が終わると今度は女の方が話した。

「私はアメリア・ベルナットよ。本当にここまで来てくれてありがとう。もしよろしければ、貴方の自己紹介も軽く聞いてもいいかしら?」

 俺は自己紹介をするべきか迷ったが貴族にこうも言われちゃ断りづらい、と思い自己紹介をする事にした。

「私の名前はアドル。アドル・ツーリストと申します。以後お見知りおきを……」

 そう言って、軽く一礼した。少しの間、気まずい空気がその場を支配した。しかしアメリアが話し始めた。

「こちらこそ。アドルと呼んでも構わないかしら?」

「勿論でございます」

「では早速で申し訳ないんだけど、本題に入ってもいいかしら?」

 本題に入ってもいいのだが、どうしても聞きたい事があったので了承を得てから聞いてみる事にした。

「その前に一つよろしいですか?」

「いいわよ」

「私は旅をしながら楽師の仕事をしています。ですが、こんな私はこのリリーラ王国宮殿に呼ばれるような功績も持っていません。失礼でなければ、私をここにお呼びになった理由を聞いてもよろしいですか?」

 本来、リリーラ王国宮殿のような所に招待される為には一般的に様々な功績が必要とされている。だが私は各地を転々としているという事もあり、功績が残せるような事はしていない。

 疑問に思っていると、クロエが言った。

「貴方は功績が全てと思っているのかもしれないが、そんな事はない。功績よりも大切なのはその人自身の努力だと思っている。私達は貴方の噂を耳にしたからここに呼んだ。それ以上の理由はない」

 私はその言葉を聞くと何故か心のどこかでこの人達は信頼出来る、と感じた。

「そのように言って頂けて心より嬉しく思います。私のような人の努力を認めて下さった事、感謝致します」

 そう言って深く一礼した。しばらくすると、再び話し始めた。

「質問はそれだけか?」

「はい」

「では、今度こそ本題に入ろう」

 そしてクロエが話し始めたのは、こういう内容だった。

 今リリーラ王国の民には、ルーナは体調不良の為汚れ払いが出来ないという事になっているが、本当はルーナ自身に汚れが溜まってしまい出来ない事。代わりにアメリアが汚れ払いの仕事をしている事。私の音楽を聞いたものは皆口を揃えて、気分が楽になると言っているので、情報を集めて招待状を送ってきた事などなど……。様々な事を話してくれた。

 話が終わると、クロエとアメリアは私に頭を深々と下げて言った。

「頼む。ルーナを目覚めさせてくれ!!」

「お願い。今ルーナが眠っている理由は汚れが溜まっているからだと考えているの。でもどんな方法を試してもその汚れが減る事はなかった……」

「何十回、何百回試そうとダメだった……」

「貴方の音楽は聞いている人の気分を楽にする、というのが汚れが少なくなっていくから気分が楽になる、という原理なら納得するわ」

「失敗しても、私達は決して貴方の事を責めたりしないと神に誓おう。だからこの通り頼む……」

「お願い。貴方しか頼れる人がいないの……」

 そう言うと、もっと頭を深く下げていた。

 私はこの時、どうするべきか迷っていた。失敗を恐れているからではない。この二人は私しか頼る人がいないから頼ってきたわけだ。となると私が断る事は簡単だが、断ってしまうと二人はまた振り出しに戻ってしまう。二人がどれだけ必死だったかは、机の上に置かれた本と二人の目の下のクマを見ればよく分かる。

 それに、今はいないが天国に行ってしまった兄さんがよく口にしていた言葉が脳裏に浮かんだ。

『困っている人を見つけたら、身分なんて関係なく助けてあげなさい。そうすれば、お前の味方は少しずつ増えていくよ……』

 この言葉は兄さんが私に言った最後の言葉。心の底から大好きだった兄さんの最後の言葉。ずっと自分自身の胸に刻み込まれている言葉。

 きっとこれが答えなのだろう。私は心の中で答えを出した。

(きっと私の答えを兄さんは天国から笑顔で応援してくれるだろう。だから……)

「分かりました。やってみましょう」

 私がそう言うと、クロエとアメリアは口を揃えて言った。

「「ありがとう!!」」

 この瞬間、二人はずっと「ありがとう」と言って私に感謝してくれた。

 しばらくして、私達三人はルーナが眠る部屋へと向かった。


 ーリリーラ王国宮殿

 そこには、ベッドで眠っている赤髪の一人の少女とその横に座る青い髪に緑の瞳の男がいた。

 すると、クロエがその男に話しかけた。

「ユーリヤ。ルーナの様子はどうだ?」

「残念ながらまだ目が覚めません……」

「そうか……」

「クロエ様。失礼ですがそちらの方は?」

「ああ。この前話していた楽師だよ。すまないがまた自己紹介をしてもらってもいいか?」

 いきなり話を振られたので驚いたが、自己紹介をした。

「こんにちは。アドル・ツーリストと申します」

 そう言うと、男も自己紹介を始めた。

「そうですか。貴方が……。先程は申し訳ありません。私はユーリヤ・エレフォードと申します。私はこの方の護衛として側にいます」

 そう言って一礼をしてきたので、私も軽く一礼した。そしてクロエがまた話し始めた。

「それでここで眠っているのは、ルーナだ」

「もう眠ってからしばらくたつわね……」

「そうだな……」

 しばらくの間、沈黙がその場を支配した。三人はずっとルーナの目覚めを待っていた事が、何も言われなくても見ていれば分かった。そんな風に思っていると、クロエが言った。

「…………。そろそろ始めてもらうか。アドル。頼んでもいいか?」

「勿論でございます」

「ありがとう」

 その言葉を最後にまた沈黙が訪れた。しかし今回の沈黙はさっきと違って、私の音楽が奏でられるのも待っている時の、どんな風な音を奏でるのか心の中で高揚している時の沈黙だ。もう何年も楽師として各地を転々としてきたからよく分かる。

 楽器の準備が出来たので、演奏を始める事にした。

「今回はバイオリンという楽器を使って演奏させて頂きます。今この時、この場に相応しい音を心を込めて奏でましょう。それではお聞きください。『目覚めの曲』」

 そう言って私はバイオリンで演奏を始めた。クロエ、アメリア、ユーリヤの三人は神に祈るような形で私の音を聞いている。そして三人が何を祈っているのかは、聞かなくても分かる。

(((目が覚めてくれますように……)))

 ただその願いを胸に三人は静かに私の音を聞いてくれた。


 ここは真っ暗闇の世界。私の世界。だけどいつもと何かが違う。いつもみたいに温かくて、明るくて、楽しい世界じゃない。冷たくて、暗くて、寂しい世界。

 そんな所に今、ルーナはいる。そしてルーナともう一人の、どこかエリーの面影がある女の人がこの世界にいる。ルーナがこの世界から抜け出そうすると絶対に、絶対に邪魔をしてくる。

「いい加減ここからは出て行くわ。何度も言っているわよね!お父様にお母様、ユーリヤに心配をかけちゃうから早くここから出るって!!」

「まだそんな事を言ってるの?あの日からずっと貴方はそれしか言ってこないけれど、結局出られてないわよね。それは何故?」

「それは…………」

 本当にここから出られないのは事実だ。私は出たくて仕方がない。むしろ早くここから出て、お父様達に会いたい。なのに出ようとすると絶対に邪魔をされてしまう。そんな事を思っていると誰かが言った。

「私が代わりに何故か教えてあげる。その理由は簡単。貴方が私を恐れているから。その恐れが貴方を蝕む汚れへと変わっていく…………。とても簡単な理由だわ」

「そうかもしれない。確かに私は貴方を恐れている。そのせいで私に汚れが溜まってしまうのも分かっている。だけど今日こそはここから、この世界から絶対に出るわ!」

「やれるものならやってみなさい!!私が貴方を絶対に離しはしないから!!!」

 そんな事を話していると突然、暗闇の中に一筋の光が現れた。その光は何故かよく分からないが力強く、ここから出る勇気を与えてくれる……。そんな予感がする光であった。そしてその光を見てルーナは思う。

(皆が私の事を心配してくれている。きっと今もそう。だから私はどんなに汚れの量が多くなろうが、絶対に諦めない!!私の側にずっといる彼女が何をしようが絶対に、絶対に諦めない。そして絶対にこの世界から出てみせる!!!)

 そしてまた、ルーナはこの世界から出ようと一生懸命足掻き、時には苦しみながら、脱出の糸口を探していくのであった。


 アドルが演奏を始めた。バイオリンという楽器からはとても不思議で、だけど聞いている人の心を魅了するような……。そんな音色が室内に響き渡る。

 そして今演奏されている『目覚めの曲』は時に激しく、時にゆったり、時に優しい音が奏でられている。噂通り、本当に気持ちが楽になっていく気がする。

 この曲はアドルが必死に練習した曲なのだろうか。本人のこれまでの努力が聞いているだけで分かった。本人は功績を残していないと言っていたが、これだけの演奏が出来るのであれば大会に出る事も出来るだろう。この場にいる誰もがそう思っていた。

 アドルの演奏はまだまだ続く。だが永遠に演奏されていてもいいくらい、ずっと側で聞いても飽きないくらい素晴らしい演奏だった。


 ルーナは足掻く。この暗闇の世界の中で足掻いて、足掻いて、足掻き続ける。

 その時、先程現れた一筋の光から、素敵な音色とお父様とお母様、ユーリヤ……。それに誰か知らない人の声が聞こえて来ている気がした。

 何故だろう。あの光の、あの声がする方へと行けば皆に会える気がする。そう感じる。だからルーナは光の方へと走る、走る、走る。

 しかしそんな簡単に出られる訳がない。だってここにはルーナともう一人知らない女がいるのだから。今までだってその誰かが邪魔ばかりするから出られなかったのだから。

 ルーナがそう思っていると案の定、やはり私が走っているとその誰かがまた邪魔をしてきた。そして誰かは言った。

「ふふふ。今度は光の方へ走り出したのね……。でも私から逃げられると思わないで欲しいわね」

「貴方は一つ勘違いをしているわ」

「どういう事?」

「確かに私は貴方から逃げて、この世界から出ようとしているかもしれない……。だけど違う。私はここから出て、私の大切な家族とまた泣いて、笑って、沢山の思い出をまた作りたいからここから出るのよ!」

「何を言っているのかしら?」

「貴方の辛かったり悲しかった経験は確かに私も辛かった。貴方が私に苦しみを共感して欲しいのも分かった。だからこそ、私は貴方の側を離れてもいいのか迷ってしまった……。だけど、私には私の事を思ってくれている家族が側にいるから……。もうこれ以上心配をかけたくないから、ここから出てみせる!!」

 そう私が言うと、彼女の態度が今までにないくらい急変した。

「さっきっから聞いていれば、何よ!全てを理解したように言わないでよ!!もういいわ……。私はなんで今までこんな発想がなかったんだろう……」

「何を言っているの?」

 私がそう疑問に思っている事を言うと、彼女は笑って言った。楽しい時の笑いじゃない。冷たくて、憎しみに満ちた笑いで。

「私は貴方の汚れを増やしてここから一時的に出ようという意思をなくすだけだった。だけどそれは間違いだったんだわ。貴方が出ようと思わなくなるくらい、貴方の心も精神もボロボロにすれば良かったのよ」

 彼女はそう言うと、その場の空気が一気に冷たくなった。だがルーナは絶対に諦めなった。

「貴方が今まで苦しかった事を無かった事にしろ、なんて私は絶対に言わない。貴方が苦しいと感じた事はきっとこの先も思い出す事があるかもしれない。だけど、私は貴方の今までの苦しみから目を背けたりなんかしない!これは私の、私自身の役目だから!!」

「まだそんな事を言っているの?!」

 彼女がそう言った次の瞬間、先程現れた一筋の光がどんどん広がっていった。それは今ルーナ達がいる所まで広がっていった。そして、ルーナがその光に手を伸ばしたその時。

「なんなのよ!この光は……。私の体が崩れていく……」

 彼女が泣きながら叫んでいた。ルーナもその姿には息を呑んだ。つま先からどんどん彼女の体が崩れている事が分かった。しかしルーナは彼女に言った。

「私はこの世界から出るわ。きっとこの光に触れれば出られる気がするから」

 そう言うと、彼女はさらに声をあげて叫んだ。

「どうして!私を一人ぼっちにしないで!!貴方はここにいればいいじゃない。もっと私の苦しみを味わってよ!!」

 ルーナはそれを聞くと、助けてあげたいと思った。だから、ルーナは笑顔で言った。

「また今度ここに来るわ。貴方を一人になんてしない。だから、安心して。今はゆっくり休んで……。おやすみなさい」

 ルーナはそう言い残して、光に触れた。すると視界が、この世界全体が真っ白に染まっていった。最後にルーナが振り返ると、彼女の姿はなかった。


 そこではアドルの演奏が終わっていた。そしてしばらくの間、皆はルーナを見つめている。特に変化がない。全く目覚める気配がない。まだ長い眠りから解放されないのか、とその場にいる誰もが思っていたその時だった。

「んーーーー。あれ?ここはどこかしら?」

 突然ベッドの方から声がしたので、皆ベッドの方へ視線を移すとそこにはルーナが起き上がっていた。その場にいる誰もが自分の見ている光景を疑ったが……。現実だった。そしてクロエ、アメリア、ユーリヤが口を揃えて言った。

「ルーナ、良かった!!目が覚めたか!!」

「ルーナ、ようやく目を覚ましたのね!!」

「ルーナ様、目覚めてくれて嬉しいです!」

 ルーナは自分の自室で寝ていた事も、ずっと眠り続けていた事もすぐに分かった。でもそれよりもルーナは三人を見て泣きながら言った。

「良かった!本当に良かった!!ずっと怖かったよ。辛かったよ。でもやっと皆に会えた!!!やっと皆といつも通りの温かい日常を過ごせる!本当に、本当に嬉しいよ!!」

 ルーナの泣き顔を見るとクロエとアメリア、ユーリヤが嬉し涙を流しながら、ルーナに抱きついた。それを見ていたアドルは四人のその光景を見ながら、ホッと肩を撫で下ろしていた。


 ー数時間後

 クロエとアメリア、ユーリヤの三人とルーナは落ち着いてから久しぶりに話していた。ルーナが眠ってしまってからの汚れ払いの事やルーナがどんな夢を見ていたのかなどなど……。そしてルーナは三人から話を聞くとアドルに感謝をした。

「改めて、私はルーナ・ベルナットよ。今回は助けてもらって本当に感謝しているわ。ありがとう」

 そう言って私が深く礼をすると、アドルは言った。

「私はアドル・ツーリストと申します。ルーナ様。顔をお上げください。私はただ演奏をしただけですから……」

 しかしルーナは言った。

「その貴方の演奏が私を助けてくれた。ずっと暗闇の中にいた私に光を与えてくれた。そのおかげで今こうしていられるのだからお礼の言葉くらい言わせてね!」

 そう言っていると、クロエとアメリアも言った。

「本当に今回はありがとう!」

「貴方のおかげでルーナの目が覚めた。本当にありがとう!」

 アドルはそう言われると思った。

(貴族なんて悪い奴ばかりだと思っていたが、優しい貴族もちゃんといるんだな……)

「いえいえ。私の音楽が役にたったなら何よりでございます」

 しばらくすると、アドルが話しかけてきた。

「そういえば、一つ疑問があったのですが聞いてもよろしいですか?」

 何を聞かれるかと思ったが、断る理由もないので聞いてみる事にした。

「いいわよ。答えられる範囲でなら答えるわよ」

「ずっと疑問に思っていたのですが、ルーナ様は何故眠ってしまったのですか?」

「話すと少し長くなってしまうのだけれどいいかしら?」

「構いません」

「数週間前、私はある人の汚れ払いをしていたら突然自分も汚れが溜まってしまったの。そこから先はずっと意識を失っていたから分からないわ。ユーリヤに聞いた方がいいわね。ユーリヤ、お願いしてもいいかしら?」

 ユーリヤはその時あった事を正直に話してくれた。

「勿論です。ルーナ様が意識を失ってから、ウィス、ジークと名乗る二人組の男がやってきました。そして……。アドルさん。大丈夫ですか?顔色がすぐれないようですが……」

 ユーリヤがそう言うので私も視線をアドルに移すと、確かにさっきまでの様子と違っていた。何故だろうか。少し震えているようにも見える。不安になったので私は声をかけた。

「アドル、大丈夫?」

 するとアドルは言った。

「今、ウィスとジークって言ったか?」

 何故そこを問い直すのか分からなかったが、アドルの様子がさっきまでと違う事だけは確かに分かった。

「ええ。そうよ」

 私がそう言うと、アドルは急に大声をあげて叫んだ。

「なんでだ!なんで今あいつらが動きだしているんだ!!なんでなんだよーーーーッ!」

 アドルは泣きながら叫んだ。それを聞くとクロエは言った。

「アドル。ゆっくりでいい。だから教えてくれ。お前はウィスとジークを知っているのか?」

 クロエのその問いは、その場にいる誰もが思っている事だった。しばらくすると、アドルは言った。

「ああ。知っているよ。ウィスとジークが何を目的にしているのか、どこにいるのか。何もかも全て知っているよ……」

「本当か!」

「ああ。本当だよ……」

 クロエとアメリアは私が眠っている間、ずっとウィスとジークの情報を集めていたらしい。だが少しも集まらなかった。なのに何故知っているのだろう。そう思っているとアドルは小さな声で言った。

「俺は昔、そいつらに実験体として使われていた。それに今はもういない俺の兄さんもあいつらに実験体にされて、最後には汚れの溜まりすぎで自我を失い死んでしまった……」

 それを聞くと、四人は息を呑んだ。しかしアドルは続けた。

「俺は貴方達みたいな優しい貴族なんて見た事ない。民の事をしっかり考えてくれる貴族なんていないと思っていた。でも貴方達は違った。だから貴方達が望むなら、俺が知っている奴らの情報を教えてあげてもいいですよ」

 それを聞いて、確かに情報は欲しいがそれよりもアドルに辛い思いをまた思い出させてしまうのが可哀想だと思ったので、私はアドルに聞いた。

「本当にいいの?」

 するとアドルは意を決したように言った。

「勿論だ」

 アドルは力強く頷いた。

 この時、やっとウィスとジークの尻尾を掴む為の大きな一歩を踏み出すのであった。

こんにちは。今回もリリーラ王国物語を読んでくださりありがとうございます。今回の話はいかがでしたか?急展開に驚いた方もいるかもしれません。

こんな作品ですが、これからも温かく見守って頂けると幸いです。

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