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リリーラ王国物語  作者: 麗海亜
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13/15

幸せだった時間

 そこではクロエ、アメリア、ルーナ、ユーリヤ、アドルの五人がいる。これからアドルが話してくれる事に四人は耳を傾ける。

 そんな中アドルは自分の過去を振り返っていた。


 ここはラニスという小さな国で、多くの自然に囲まれている所にある。そんな小さな国に僕、アドル・ツーリストはいる。

 この国の住人の職業はほとんどが農家だ。買い物をするにも馬車で片道一時間かかる。その為、農業を自分たちでやって自給自足をする人が多いのである。これだけ聞くと不便そうに聞こえるかもしれないが、贅沢を望まなければ普通に暮らしていける所だ。

 アドルはそんな光景を家から少し離れた所で見ている。そしてため息を吐きながら、一人で呟いた。

「はぁーー。今日も一日長いな……」

 そしてその場で大の字で寝ていると、ある人の声がした。

「アドル、またこんな所にいたのか?」

 その声を聞くと僕は起き上がって声のした方向へ顔を向けた。聞き慣れている声だから間違えるはずもない。そして走りながら言った。

「お兄ちゃん!!」

 ルーク・ツーリスト。いつも僕がここにいると一番最初に見つけてくれる、大好きなお兄ちゃんの名前。僕にとっての太陽みたいに明るく元気をくれる人。それが僕のお兄ちゃん。両親は仕事があるので、いつも僕の面倒を見てくれる。

 僕は走りながら近づいていき、お兄ちゃんに抱きついて言った。

「お兄ちゃん!待ってたよ!!」

 するとルークは僕の両脇を持って空高く僕のことをあげながら言った。

「家の前で待ってろって言ったのに待てないんだから、アドルは。まぁ、どこにいても兄ちゃんがちゃんと見つけてやるから安心しろよ!」

「えへへ……。ありがとう!!」

 しばらくすると、僕をそっとおろした。

「今日は何をして遊ぶ?また鬼ごっこか?」

 僕はそう聞かれると考えた。

「うーーん……。何がいいかな?」

「珍しいな。いつもは即答で鬼ごっこって言うのに」

「いつも鬼ごっこだと飽きちゃうし……」

「じゃあ、一緒に楽器でもやるか?」

 ルークは僕にそう聞いた。確かに良いかもしれない。

 ルークは生まれつき楽器が上手だった。両親が音楽をやっていたという事ではないが、何故か出来るのだ。それにルークが丁寧にコツを教えてくれるのでとても楽しいのだ。

「お兄ちゃん!一緒に楽器で演奏しよう!!」

 僕が元気よく言うとルークは笑顔で、

「ああ。勿論だ!」

と言ってくれた。

「じゃあ、楽器を取りに家に戻るからここで大人しく待っていろよ!!」

「分かってるよーー」

 僕がそう言うと、ルークは急いで家に戻って楽器を取りに行った。


 しばらくして、ルークは楽器を持って帰ってきた。いつもやっている楽器はバイオリンと言うものだ。

 僕が生まれる前、ラニスに若い楽師が来たそうだ。その時に楽師が演奏していた楽器がバイオリンだったらしい。ルークはその音色を聞いて感動し、コツコツ自分でお小遣いを貯めて買ったそうだ。

 この話はよくルークは話してくれる。この話をする時のルークの目はいつも星空みたいにキラキラしている。その目を見るといつも、僕ももう少し早く生まれて来れば良かった、と思うくらいであった。

「じゃあ、そろそろやってみるか?」

「うん!」

「でもアドルはお兄ちゃんが教えた事は一回で出来ちゃうからな……。もうお兄ちゃんが知ってることは全部教えちゃったし……。どうしようかな……」

 そう言って、ルークは考え込んでいる。少し前にもバイオリンで遊んだ事がある。その時にルークが丁寧に教えてくれたおかげで一回で出来たのだが、本人は気づいていないらしい。

 僕も一緒に考えているとルークがハッと思いついた事を言った。

「じゃあ、今日はバイオリンで弾ける曲をやるか!」

 僕はバイオリンで弾ける曲をルークから教わった事がなかったのでわくわくしながら、

「うん!やろやろ!!」

と言った。

「なんていう曲やるの?」

 僕がそうルークに聞くとルークは考え込んだ後、今日弾く曲を言った。

「目覚めの曲ってやつにしようか。そんなに長い曲じゃないしな」

「目覚めの曲?」

「そう。目覚めの曲だ」

 初めて聞いた曲名なので、ルークにどんな曲なの?と聞くと、丁寧に説明してくれた。

「目覚めの曲って言うのは、ここから遠い国ではどんな人も目覚めさせる事が出来る曲として有名な曲なんだ」

「そうなんだ!」

「ああ。でもこれだけじゃないんだ。この曲の言い伝えは諸説あるが、ずっと眠っていた女神でもその曲を聞くと目が覚めるとか、聞いた人の心を癒してくれる、って言う言い伝えがあるんだよ」

「すごいね!僕その曲やってみたい!!」

「そうか!じゃあ、早速始めるか!!」

「うん!!」

 そうして僕たちは練習を始めた。久しぶりにバイオリンに触ったので弾けるか不安だったが、ルークが教えてくれたおかげですぐに調子を戻す事が出来た。


 そして僕達は目覚めの曲を練習した。とても激しいと思ったら、ゆっくりになったり、とても癒されるような音色になったり……。一つの曲のはずなのに、何曲も何曲も演奏していると錯覚してしまうくらいに、曲調が変化していく曲だった。これを練習していたら時間が過ぎるのはあっという間だった。僕とルークは二人でずっと練習し続けて、遂にゆっくりだが一曲通して弾けるようになった。


 時を忘れてずっとバイオリンを弾いていた。二人が気づいた頃にはもう日が暮れていて、周りは真っ暗だった。

「時間だしそろそろ帰るか、アドル」

「そうだね、お兄ちゃん」

「じゃあ、行くか」

「うん!」

 二人は手を繋いで、ゆっくりと家に帰った。


 アドルとルークが家に帰り、大きな声で「ただいま!!」と言った。するとアドルの母と父がアドル達の声に反応して、「お帰りなさい」と優しく答えてくれた。

 僕は急いで靴を脱いでお母さんの所まで走って行った。

「ねぇねぇ、お母さん!今日はねお兄ちゃんがバイオリンで弾ける曲を教えてくれたの!」

「あらまぁ、そうだったのね。どう?楽しかった?」

「うん!!すっごい楽しかった!」

「それは良かったわね。今度お母さんにも聞かせてね」

「恥ずかしいなぁーー」

 僕が恥ずかしがっていると、ルークは優しく言った。

「いいじゃないか!アドルは上手に弾けてるんだから、母さんと父さんにも聞かせてあげれば喜んでくれるぞ!ねぇ、母さん、父さん」

「ええ。勿論よ」

「今度でいいから聞かせてくれよな、アドル」

(ここまで言われちゃ、恥ずかしいけど断りづらいな……。でもお母さんとお父さんが喜んでくれるなら今度聞かせてあげようかな)

 アドルは心の中でそう決めて言った。

「上手になってからね!だからこれからはお兄ちゃんといっぱい練習する!」

「あはは。いいぞいいぞ!!母さんと父さんに聞かせられるように頑張ろうな!」

「うん!」

「じゃあ、楽しみにしてるわね。それはそうと、夕飯が出来るまでまだ時間がかかるから二人でお風呂に入ってきなさい」

「分かった!お風呂入ってくるね!お兄ちゃんも一緒に入ろーー!!」

「アドルは甘えん坊だから仕方ないな……。母さん、父さん。アドルと一緒にお風呂入ってくるよ」

「ええ。ゆっくり入ってきてね」

「しっかり温まるんだぞ〜〜」

「うん!」

 僕とルークは両親のその呼びかけを背に、お風呂場へと向かった。


 ー数時間後

 お風呂に入った僕とルークは今、椅子に座っている。丁度ご飯が出来たそうなので待っていると、お母さんはテーブルまで運んで来てくれた。

「はい。今日のご飯とおかずと味噌汁よ。おかわりは沢山あるからいっぱい食べてね!」

「うん!」

 僕は元気よく頷いた。

「急いで食べる前に挨拶をするぞ!」

 ラニスでは、ご飯を食べるごとに使われている食材に感謝する為の挨拶がある。その挨拶は絶対に忘れてはいけない、という決まりがある。だから急いでご飯を食べる事も大切だが、食材達に感謝する事も大切なのだ。

 お母さんとお父さんが席に着いた事を確認すると、皆は両手のひらを合わせて言った。

「「「「いただきます!」」」」

 そう言ってから、ラニスの人達はご飯を食べ始める。

 僕の家では、食事中にその日の出来事を話すのも一つの日課である。

 

 お母さんとお父さんは仕事で忙しかったらしい。お母さんの手には沢山の豆があり、お父さんの体からは汗の匂いがした。お母さんとお父さんの仕事の話は聞いていて面白い。でもそのうちお母さんとお父さんの話が終わると、今度は僕が話していた。

 今日は、いつもより沢山話した気がした。バイオリンをルークとやった事。やった事がない曲に挑戦して、とても楽しかった事。お昼ご飯の事を忘れるくらい、夢中になって練習した事などなど……。

 話しても話しても、次から次へと話したい事が出てきていた。


 そんな話をしている間に、僕もルークもお母さんもお父さんもご飯を食べ終えていた。もうお互いに話す事も無くなってしまったので、食後の挨拶をしようとしていたらお母さんとお父さん、ルークが僕に質問してきた。

「そういえば、アドル。貴方の誕生日はそろそろだよね」

「何か欲しいものはあるか?」

「アドルが欲しいものをプレゼントしてやりたいんだ!」

 いきなり質問されたので驚いたが、すぐに欲しいものを考え始めた。

(ゲームはあんまり興味ないし、本とかもあるし、うーーん……。どうしようかな……)

 考えていると、ふと思いついた。もしかしたら、お母さんとお父さんに無理だ、と言われてしまうかもしれないが、試しに言ってみる事にした。

「バイオリン……が今欲しいかも……」

「どうしてだ?バイオリンならルークのを借りればいいだろう?」

「そうなんだけど、今日もお兄ちゃんと一緒にやりたいところも出来なかったし……。バイオリンが高いのはもちろん知ってるよ!だけど欲しくなっちゃった……。でもいつかお兄ちゃんと一緒にバイオリンを演奏してみたいなって思ったんだ!」

 それを聞いたお母さんとお父さん、それにルークも困惑していた。だけど、ルークは納得してくれたらしい。

「そうか!そうだな!!今はバイオリンが一つしかないから出来ないが、二つあれば出来る曲も増えていくかもしれないしな!それにお兄ちゃんもいつかアドルと一緒に演奏したいと思っていたんだ!だから二つあっても損はしないし、いいと思う!」

 お母さんとお父さんは顔を見合わせて、そこまで言うなら、と言う事で納得してくれた。

「じゃあ、今年のアドルの誕生日プレゼントはバイオリンで決まりね!」

「楽しみにしていろよ、アドル」

「ありがとう!お母さん、お父さん!!」

 そして誕生日プレゼントが決まったので、皆で食後の挨拶をした。

「「「「ごちそうさまでした!」」」」

 そう言ってから、お母さんとお父さんは使った食器を片付けてくれた。

 その間に歯磨きをしようと、部屋を出ようとしたら、お父さんが言った。

「そういえばアドル、ルーク。最近ここら辺で子どもが誘拐されているらしい。だから外で遊ぶ時も気をつけてくれ」

 そう言われると怖くなってしまったが、ルークが大丈夫だ、と囁いてくれたおかげで少し怖くなくなった。

「うん。分かった。気をつけるね」

「そんな事があったんだね。俺も気をつけるよ、父さん」

 僕とルークはそう言って、部屋を出て歯を磨き、寝室に行った。そして、ルークと少し遊んでから僕達は寝たのであった。

 

 寝る前、僕は思ってしまった。ずっとこんなに楽しくて幸せな日々が続いてくれればいいのに……。

 だが残念ながら、幸せと感じる日々は今日で終わってしまう事をアドル達は、ラニスの国の人々はまだ知らない…………。


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