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第5章 激闘

第5章 激闘


9月の第1週は3日連続の出撃となった。


いずれも50を超える<厄魔>が現れ、<蜉蝣>の修理が間に合わなかった徳丸の離脱分を、水天宮が参戦することで補った。


生徒会と教師、部隊幹部は臨時で話し合いの場を持ち、部隊員の夏休みの振替を9月は中止とすることを決めた。


「葛西君、目の下にくまができてる」


仙太郎が机に突っ伏している葛西幸尚を指差した。


「まるでゴリラの死体ね…」


梶ケ谷三春はおれの肩に手を回しながら言った。


無理もない。


戦闘員も疲労困憊だが、それを支える整備士や事務員たちとて事情は同じだ。


いずれの教室においても部隊員たちは似たような状態だと確信できる。


「柩君は何ともなさそうだね」


仙太郎が不思議そうな顔をして言った。


彼らはおれの軍歴の長さや以前の所属を知らない。


海岸線付近の最前線では、それこそこことは比較にならない程の攻勢に晒され、毎日が死と隣り合わせだった。


もちろん学兵に許された軍備から見て、いまの第301生徒部隊の置かれた状況は全く楽観視できるものではない。


それでも最前線で戦い続けたことで、おれの恐怖や疲労といった感覚は半ば麻痺してしまっていた。


「柩君。私と仙太郎、こっちに来てから軍務課程を取り始めたんだよ」


梶ケ谷がにっこりと笑みを浮かべて、耳元で囁いた。


軍務課程とは、生徒部隊へ就くために必要な最低限度の学習要綱を指し、高校1年から部隊に所属している者は皆中学生で履修していた。


「…なぜだい?梶ケ谷も仙太郎も、もう3年なのに」


「戦況は悪くなってるっていうし…何か、柩君を手伝えることがあるかもって思って」


「ほら、僕ら部活や生徒会活動をやってないから放課後暇でしょ?補習で単位とれるらしいから」


仙太郎が努めて明るく継いだ。


普通科の生徒たちですら危機感を募らせているのかと思うと、憐れみを禁じ得ない。


何としても、ここを凌がねばならないとの決意を新たにした。


***


訓練時に式神恵美那を本格的に鍛え、整備の時間には藍沢渚と<蜉蝣>の隅々を点検・改修していった。


夜半には事務方に顔を出して、有栖川鏡子に嫌味をぶつけられながら補給の最新情報を確認する。


0時を回った頃に恵美那から<蜉蝣>の駆動パーツを確保出来たとの一報が入ったが、受け取りに時間制限があるという。


有栖川事務長と、副部隊長室で執務にあたっていた来島冴子少尉の2人に断りを入れ、羽田連理を叩き起こした。


「…で、こんな真夜中に山の手まで行ってパーツを積んでこい、と」


「すまない」


「トレーラー出しちゃって、敵襲があったらどうするんです?」


「女子校で使っていた戦闘用ジープを出すさ」


「なるほど…。じゃあひとっ走り行ってくるとします」


羽田は敬礼し、颯爽とトレーラーに乗り込んで出発した。


「彼、よく承諾したわね」


来島冴子が隣に立って言ったが、おれからすれば不思議はなかった。


彼が軍のスパイだとしても、おれと同じくこの部隊を気に入っているのだろう。


「…それよりも、恵美那のツテ以外にも補給を受けられるルートを探さないと」


おれは来島冴子に課題を提示した。


「…わかりました。なにか手を見つけてみます。明日結城さんや葛西君と相談してみるわ」


***


東山紅緒とシバリスが連れ立って教室を訪れ、休み時間の新3年D組がざわめいた。


東山紅緒はその美貌が、シバリスはサイボーグへの物珍しさから注目を集めたのだ。


「柩先輩。シバリスがF90744VIエリアに異常な反応があるって」


おれの席までやって来て、東山紅緒が訴えかけた。


「そんなの、部隊長に言いにいけよ」


隣席の葛西幸尚が不満顔で言う。


東山紅緒は葛西を睨み、集まってきた梶ケ谷三春らをしっしっと手で払ってから言った。


「水天宮先輩は今日から管区司令部の式典参加で出張。留守は来島先輩と柩先輩に任せるって」


「シバリス。具体的に言ってくれ。何を見つけたんだ?」


「はい。熱量とサイズ、放射線値の推計から、最前線にしか存在しないはずの、成体の<厄魔>の反応と推測されます」


***


城竜二に戦闘員の指揮を任せ、おれはシバリスと式神恵美那の2名を連れて緊急出動で偵察に出た。


少数での移動なので、羽田連理にジープを出してもらった。


敵襲があった際のトレーラーの運転は、事務方の次席運転担当が執り行うことになっている。


「柩少尉。こりゃあ超過勤務手当でももらわなきゃ、やってられませんよ?」


羽田がハンドルを握りながら軽口を叩いてくる。


「女子校の連中に、お前さんの活躍を吹聴するのでどうだ?」


「…異議ありません。話される際には必ずイケメンとの念押しをお願いします」


『ポイントまで推定90秒。<蜉蝣>のバーニアを起動してください。適性反応はなし』


東山紅緒から通信が入り、3人共バーニアを噴かして移動体勢をとった。


残り60秒のところでジープを停車させ、恵美那を残しておれとシバリスが対象地点を目指した。


「シバリス、どうだ?変化はありそうか?」


「はい、変化はありません」


そこは公園内の池であった。


見える範囲では何もない。


『ポイント到着。敵性反応は無し。…いえ、パターン赤!<厄魔>の反応です。来ます!』


池から水飛沫が上がり、見馴れた醜悪な物体が姿を現した。


全身が堅牢な甲羅に覆われ、隙間からは鋭い鉤爪を持った触手が何本も垂れ下がっていた。


頭部と思しき部分には、目のような黒く深い空洞が2穴と、口に相当する突起部が配されている。


海岸付近でよく見掛ける、成体の<厄魔>の1種だ。


「シバリス!こいつは重火器以外は効果が薄い。実剣で腹を突くぞ」


シバリスからは応答がない。


<厄魔>を前にして何やら処理をしているようで、瞳が目まぐるしく明滅していた。


…六郎丸の仕込んだお遊びか。


おれは単独で突撃を敢行した。


すぐに触手による迎撃があるだろうと予測するも当てが外れ、直進したおれの体当たりがそのまま決まった。


池から地上へと弾き出された<厄魔>は、転がってすぐに透明化していき、気が付けば大気に溶け込むようにしてきれいさっぱりと消え失せていた。


『…大変です!周辺に敵性反応多数!』


モニター上に夥しい数の光点が出現した。


トレーラー近辺にも数十の敵影が見られ、おれはシバリスを促してすぐに引き返した。


<厄魔>の成体は海岸の防衛戦を突破して内陸部に侵入すると霧消し、それが内陸各地で大量の<厄魔>として再び具現化する。


原理は全くわかっていないが、そうして虫食いのように内陸を荒らし回る<厄魔>を退治しているのが生徒部隊だ。


先ほどのように、成体が実体を伴ったままに内陸部で発見されるケースは記憶になかった。


「恵美那!20秒で行く!ジープを頼む」


『隊長、早く頼むぜ』


声色に深刻さを滲ませて羽田連理が通信する。


『ジープから半径100メートル内に敵性反応36。500メートル内で90!』


東山紅緒の報告を聞いた瞬間、校舎に待機させている部隊の出動命令が頭をよぎった。


しかし、こちらにいる面子を鑑みて思い止まる。


精鋭はこちらに集まっているし、他所で別に<厄魔>が出てくる可能性も否めないのだ。


バーニア全開で、超科学合金製の実剣を構えたまま<厄魔>の群に突っ込む。


敵を両断しながらジープのそばまで突進し、<蜉蝣>に急制動をかけて立ち止まる。


ジープと恵美那の無事を確認して、おれは両手にマシンガンを構え直した。


「恵美那、無事だな?」


『当たり前だ。1人で全部狩り尽くそうかと思っていたところだ』


シバリスが紅く光る手刀で<厄魔>を片端から引きちぎっていく姿を認めた。


目に見える範囲の至るところに敵がいるので、照準をつける必要もなかった。


おれは弾が切れるまで撃ちまくった。


***


H09646QEエリアに敵が現れたとの一報は、おれたちが大量の<厄魔>を掃討している最中にもたらされた。


留守を守る来島冴子副部隊長の指示で、城竜二を臨時隊長として徳丸毅、睦月、笹原に出撃命令が出されたという。


向こうの敵は索敵中で、推定60体。


城以下の隊員には荷が勝ちすぎる数字だ。


弾薬が空になった銃を捨てて剣に持ち換えて、おれは再び<厄魔>の列に突入した。


早くこちらを征伐して向こうの救援にいかなければ。


***


『残敵41。笹原機中破!至急撤退してください!睦月機残弾そろそろゼロです。補給の必要を認めます。徳丸機小破!』


ようやくジープがトレーラー脇に停車した時には、戦況は予断を許さないものとなっていた。


「シバリス、すぐに徳丸の援護を!恵美那は睦月だ。おれは笹原の撤退を助ける!」


ジープに搭載していた予備燃料で簡易補給は済ませていたので、おれは<蜉蝣>のバーニアを噴かせて急ぎ笹原のいる地点を目指した。


<蜉蝣>から黒煙が上がっていたが、笹原はそれでもマシンガンを連射し続けていた。


1体の巨大な蝶型の<厄魔>が撃ち抜かれて落ちた。


「笹原!マシンガンを寄越して、低速で撤退するんだ!<蜉蝣>は道中で破棄するように」


『了解です。隊長、あとをお願いします!』


笹原と位置を替えて、おれはマシンガンと実剣による殴打とで<厄魔>に相対した。


モニター上では、シバリスと恵美那もギリギリ救援に間に合ったようで、城竜二も己のパートをよく守っていた。


補給に撤退した睦月をトレーラーの防御に置き留めて、おれたちは<厄魔>を狩り続けた。


***


おれとシバリスに加え、ついに恵美那が<国士無双>賞を受賞した。


ついでにおれの第301生徒部隊における通算撃破数が250を超え、<武極奮迅>賞を獲得した。


「在籍4カ月足らずで250たあ…隊長、あんたは化け物か何かですか?」


トレーニングルームで城竜二と汗を流していた。


「城の腕だって捨てたものじゃない。…というより、学兵のレベルを超えている」


これは本音で、山の手の姫であり全てが規格外の恵美那は置いても、城の戦場での安定感は異常と言えた。


「…いい加減、ジョー呼ばわりでいいですよ。上官なんだし」


言って、城はウエイトリフティングを切り上げた。


その身体は極限まで絞られていて、筋肉は鋼鉄の如く締まっているように見えた。


「ジョー。君に戦い方を指南したのは誰だい?才能や喧嘩の経験だけじゃ、こうも<厄魔>には抗えない」


城はしばし思案した後、素直に白状した。


「水天宮部隊長ですよ。粋がってた頃に手酷くやられてましてね…」


***


その日の<厄魔>は、数も厄介ながら出現エリアの分散こそが難題だった。


四ヵ所それぞれに20体前後が出没しており、民間人の避難は半分も達成されていなかった。


笹原と徳丸毅は<蜉蝣>の整備不良で出撃が出来ず、水天宮部隊長は先だっての成体の<厄魔>発見の件で管区司令部に呼ばれて不在。


おれは不本意ながら各ポイントに隊員たちを割り振り、比較的近距離に式神恵美那・城竜二・睦月の3名を、援護が望みにくい位置にシバリスと自分を指定した。


このところ戦力の分散配置を余儀なくされている。


『ポイントAにおいて敵増殖中です!シバリス、注意してください』


『了解しました』


東山紅緒の通信にシバリスが応じる。


モニターでも輝点の増加が確認でき、シバリスの相手は30体を突破しそうな勢いだ。


正直なところ、彼女がいなかったら部隊の継戦能力は著しく低下することだろう。


おれはシバリスの能力を自分と同等に信頼し、戦術の要として運用していた。


「シバリス、油断はするな。奴等が増殖している以上、そこには何かがある可能性もある」


『了解です。柩隊長』


『こちらBポイント。式神だ。間もなく<厄魔>と交戦に入る』


恵美那から通信があり、続けてCポイントの城・睦月組からも会敵連絡が入った。


おれはそれぞれに激を飛ばし、自分の受け持ちであるDポイントへと急ぐ。


『新たな敵影を確認!エリアは…』


「東山、ポイントAからDとの比較距離で頼む」


ようやく視界に<厄魔>を捉え、ライフルを構えながら注文をつけた。


『ポイントCから360秒、ポイントBから420秒程度の地点にまとまった反応が出現しました。数は12…いえ、15!』


最悪だ。


おれやシバリスの居場所からは少なくとも600秒以上離れていた。


現有戦力では対処出来ない。


「各員、持ち場を堅持。敵を殲滅次第近隣のポイントへ急行してくれ。東山、新たな敵の出現位置から第1級警戒配置の範囲で避難勧告を発令。至急管区司令部に救援要請を出すんだ」


『了解です』


「それと、新しい敵の動きはトレースして、逐次報告を」


新たに出現した<厄魔>の一群は、Bポイントに雪崩をうつように殺到した。


Dポイントの敵を全滅させたおれが駆け付けた頃には、式神恵美那の周りに<厄魔>の屍が城壁の如く積み重ねられていた。


『柩…遅い、ぞ…』


おれの姿を確認して、恵美那がその場に崩れ落ちた。


蜉蝣に目立った外傷は見当たらず、モニター上のダメージ表示は「疲労困憊」とだけあった。


残敵は8。


恵美単独でBポイントの18体に加え増援の15体とも対決し、25体を屠った計算だ。


感動的な戦果である。


おれは恵美那を背後に庇いつつ、8体の<厄魔>を剣で叩き潰していった。


城竜二が睦月をサポートしつつ持ちこたえていたCポイントでは、最大数の敵を撃破した後急行したシバリスがそこでも猛威を振るった。


彼女は1日で37体撃破という驚異的なスコアを記録した。


四海高校に帰参して、東山紅緒に頼み込んで各ポイントの戦闘をシミュレートしてもらった。


恵美那の近接戦闘の技は優雅さもさることながら、必殺の一撃の精度が飛び抜けて進歩していた。


「…さすが式神の姫ですね。末が恐ろしい」


東山紅緒は鋭い目をしてモニターを見つめていた。


「そういう言い方は好きじゃないな。人間同士、味方戦力の向上には喜びをもって応えるべきさ」


東山紅緒に睨まれた。


「残業したのに…説教された」


「はい。差し入れ」


おれは有栖川鏡子からくすねてきたプリンを東山紅緒の手のひらに載せてやった。


***


錦雁之助が倒れたのは、その翌日のことだった。


保険医の話では過労とのことで、しばらくの間一線から退いて療養入りすることになった。


連戦や激戦の余波は<蜉蝣>の酷使に及び、必然的に整備士たちはフル稼働となっていた。


水天宮部隊長や恵美那が裏から手を回してなんとか補修部品や弾薬を調達していたが、質・量ともに物足りないと藍沢渚は嘆いていた。


錦は常々「<蜉蝣>の1機や2機、管区司令部から盗んで来れないのか?」と事務員に発破をかけていたが、有栖川鏡子とて歯噛みしながら軍本部に催促している状況なのである。


***


水天宮部隊長の戦時権限により、部隊員たちに1週間の授業出席停止が言い渡された。


これにより、部隊員の全力が部隊運営に回されることとなった。


朝から整備棟に詰める日々が幕を開けた。


「柩少尉。藍沢さんに休むように言ってください。そろそろ危険です…」


自分も頬の痩けた結城ユウが声をかけてきた。


「わかった。君も少し休んだ方がいい。あと、食事はしっかりとること。いいね?」


結城ユウは弱々しく微笑んだ。


無理矢理藍沢渚を仮眠室に放り込んだところで、整備士の久留米誉が悪いニュースを運んできた。


シバリスのメンテナンス期が来たのだという。


「…今回は延期することはできないか?」


「無理でしょうね…。相手は軍本部の技官です。こちらの要望などお構い無しですから」


久留米の持ってきた書類を決裁して、明日から2週間ほどシバリスの不在が確定した。


これで戦術の幅がぐんと狭まること疑い無い。


「柩少尉!来島副部隊長から内線ですぜ」


羽田連理に呼ばれて電話を代わる。


「部隊長と私が、急遽軍本部から召喚されました。これから出て2日程留守にします。東山さんは置いていきますので、大変でしょうが後をお願い」


良くないことは重なるものだ。


「青い顔をしているな。珍しいこともある」


ツナギを着た恵美那が歩み寄ってきた。


「これか?整備の手が不足しているようだから、手伝っている」


長髪をポニーテールにまとめていて、年相応に可愛らしかった。


「お前は普段から余裕がありすぎるから、ちょうどいいのではないか?」


「簡単に言ってくれるね」


整備棟の入り口付近からおれを呼ぶ葛西幸尚の声が聞こえた。


同時に校内放送でも呼び出しがかかる。


「行ってこい。皆のまとめ役、似合っているぞ」


「…君にそう言われると、少しだけ元気が出る」


「少しだけ?後でゆっくり話し合う必要がありそうだな」


おれは頷きを返して葛西の元へと走った。


***


46体の<厄魔>をどうにか退けることに成功した。


おれと睦月とで前衛を務め、伏兵に対処するべく式神恵美那を遊軍として配置し、城竜二を後衛に据えた。


陣形が上手く作用し、民間人に被害を出すことなく勝利を収めた。


「ご苦労さん。帰って肉でも食って、ゆっくり休んでくれ」


羽田連理がトレーラーのハンドルを握りながら皆を労う。


『…市中に出回っているのは合成肉ですけどね』


東山紅緒も雰囲気を和ませようと羽田の発言に乗った。


「俺ぁ菜食なんだよ。ああ豆が食いてえ」


城が応じ、睦月がくすくすと笑った。


「よし。お前に<国士無双>が獲れたら死ぬほどの豆を贈呈しよう」


恵美那が不適に言う。


「…けっ。式神の施しなんぞいるか。なら隊長に奢ってもらうぜ」


突然話を振られ、おれはただ頷いた。


「よし!じゃあ今夜は隊長にご馳走になろうかね」


羽田が言って、城や睦月が賛意を示した。


『駅前に青豆のサラダを出すレストランがありますね。…まあ、合成素材でしょうが』


***


整備の後でレストランに集合し、皆疲れている中でも和気あいあいとした時間を過ごした。


戦闘員プラス東山紅緒と羽田という異色のチームではあったが、羽田が盛り上げ役を買って出てくれたのが幸いした。


恵美那ですら楽しそうにしていたものだ。


「隊長、どちらにお住まいなんです?」


帰り道で東山紅緒と2人になった。


「君は知っているだろう?」


「…住所と、そこに隊長が帰っていない事実は把握してます」


東山紅緒が思いの外近寄ってきて、近距離から見上げておれの表情を窺った。


「あと、隊長と副部隊長の怪しい関係も、ある程度は把握していたり」


「…そんなところだろうね」


「別に責めてるわけではありませんから。隊長くらいやり手の男性なら、普通かと思います」


これには苦笑を返す他なかった。


「葛西は君と水天宮中尉の関係を疑っていたよ」


「事実無根ですね」


ぴしゃりと断じた。


「今度は豆と関係のない食事でお願いします。…では」



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