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第2話 幼馴染邂逅

マツリからスマートフォンを渡されて、毎朝アプデ状況を確認するよう言われた。それは俺、すなわち来栖三太のアプデのことだ。マツリは今宮鏡花の「お願い」と、それに伴うアップデート情報を数値化して記録しておくためのツールとして、これを作ったらしい。今どきの神はアプリ開発もできるのか。


2045年×月×日 来栖三太

体調:100 文系:100 理系:5 芸術:70

容姿:90 運動:60 根性:80 やれやれ:0 ストレス:0

 

うわっ、設定細か。ま、でも、理系科目がダメなこと以外は何事もそこそこできそうなパラメータでいいじゃん。「やれやれ」ってまさか「やれやれ系」のやつですか。この手の恋愛シミュレーションゲームは割とやってきたけど、これは初めて見た。


恋愛ゲームなら、毎日選択する行動によってパラメータを育成するんだよな。くっつきたい女の子の好みのパラ値になるように主人公を調整してくのが楽しい。だけどこの世界では、ヒロイン=今宮鏡花が俺を好みのパラメータに勝手に育成してくれる。この画面はただの確認用ってわけ。

せっかくだから女の子のステータス画面も見ときますか。


[1/1]


☆今宮鏡花 電話:○△×ー△△××

誕生日:12月24日

星座:山羊座

血液型:O型

BWH:85・56・84

クラブ:未定

備考:主人公の幼馴染。神社の娘で、むっつりスケベのツンデレ。


王道美少女って感じのプロフ写真。ストレートのセミロング、いい匂いしそう。てかおいマツリ、備考欄テキトーに書いただろ。この文章じゃ興が削がれる。立派なスリーサイズでプラマイゼロってか。




そんなわけでヒロインと初顔合わせなのだが、これどういうテンションでいけばいいわけ?俺が神に発注されてた幼馴染です。ども。詳しい事情については何も知りませーん。でOK?とか考える余裕もあんまりなく、今宮鏡花は俺を部屋に連れ込んで正座させ、宇宙人を見るみたいにジロジロ観察してくる。


「あんたが知ってること、全部話しなさい」

「ええと……」


マツリには、あくまで昔からの幼馴染を演じろと言われている。俺が平行世界から来たとか、そういう話はNGだ。ちなみに、パラメータに反映されてる俺のアプデ情報はマツリが制御できるから、俺は特に努力することもないらしい。


「俺は鏡花の幼馴染だろ。どうしちゃったんだよ、いきなり」


おお、口をついてすらすらと台詞が。


「ふんっ! そうと言うなら、証拠を見せなさい」

「誕生日はクリスマスイブ、血液型はO型」

「そうだけど。証拠にしては弱いわね」

「うーん……あんまり言いたくはないんだけど。

 ベッドの下にえっちな本がある」

「っ!?!?」


今宮鏡花のむっつり情報がここで生きるとは思わなかった。彼女は赤面して、後ずさりする。ベッド下のエロ本はただの思いつきだったが、本当にあったのか。さすがむっつり。


「勝手に見ないでよね……」


鏡花はベッドの下からチラ見えしている雑誌をつま先で奥へ押しこんでいる。必死。


「勘違いして悪かったわね。……三太」

「大丈夫。そんな日もあるよ。体調でも悪いのか?」

「平気。なんか変な夢見たっていうか。今がその夢、みたいな」


同意だ。でもまあこの話って俺にとってはただの世界転移なんだけど、鏡花からすれば「願ったら現実になった」っていう相当いかれた出来事なわけで、かなり動揺してもおかしくないよな。実際今も息が荒いし。俺の顔をじーっと見ながら、肩を上下させている。


「あんた、幼馴染なのよね」

「だからそうだって言ってるだろ」

「じゃ、じゃあ、なんかこういうとき、気の利いたことしなさいよ」


鏡花の言葉を聞いた直後、俺の身体に不思議なことが起こった。行動が思考を上回ってるというか、誰かに操作されてるような感覚。俺は鏡花を抱きしめていた。俺の意志じゃない。これが、マツリの言っていたアップデートの恩恵か。


「三太……そういうことするのは、私たちまだ早いよっ……」


なにっ。この美少女、そんなことまで考えていたのか。俺があまりにも鏡花の性癖に刺さりすぎているからか、この子理性を失うスピードが速すぎる。俺の容姿、性格、特性、行動パターンまで全部がこの子のドタイプらしいので。こりゃ困ったな。


「そうだな。……ごめん。俺はいくらでも待つよ」

「だだだだだめってことじゃないんだけど、ぜんぜん……」

「いや、だめだ。俺らまだ10歳だし。鏡花の言うことが正しいよ。

 もっと鏡花のこと、大事にしたいんだ」


鏡花は俺の腕の中でうなずいて、ほほえんだ。

とんだ茶番。なんだこれ。




翌日の朝、マツリから支給されたスマートフォンを確認して俺はギョッとした。


2045年×月×日 来栖三太

体調:100 文系:100 理系:5 芸術:70

容姿:90 運動:60 根性:80 やれやれ:0 ストレス:10

モテ:100000000000000000


モテとかいう新しい項目にアホみたいな桁の数字。


これがアプデ?

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