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ため息ついたらゴスロリ魔神が降臨した 〜追放された僕ですが、パパの魔力を戻すついでに世界最強を目指します〜  作者: はまゆう


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第36話:国王の土下座と、僕の退職金(※再雇用は丁重に断ります)

黄金の銅像が朝日に反射して僕の部屋をこれでもかと照らしていた翌朝。

 屋敷の前に、王国の近衛騎士団がズラリと整列し、その中心には、僕を「無能の極み」と罵って宮廷から追い出したはずの国王が立っていた。

「……はぁ。パパ、アビィ。居留守使ってもいいかな。あのアツ苦しいマント、見ただけで胃もたれするよ」

「主殿、そう仰らず。……どうやら今回は、兵を連れての討伐ではなく、文字通りの『お願い』に来たようですぞ。国王の膝が、生まれたての小鹿のように震えておりますからな」

 僕がしぶしぶ玄関を開けると、国王は僕の顔を見るなり、アスファルトに額を擦り付ける勢いで土下座した。

「カノン君! いや、カノン様! どうか……どうか我が国に戻ってきてほしい! 君が宮廷を去ってからというもの、会議は常に怒号が飛び交い、大臣たちはストレスでハゲ上がり、国政が全く進まないのだ!」

「……はぁ。それ、僕が戻っても解決しないですよ。ただ僕が皆さんのストレスを吸い取って、代わりにハゲ上がるだけじゃないですか」

 僕は頭を抱えて深くため息をついた。

「いや! 君のあの『ため息』が必要なのだ! 君が会議室の隅で一回『はぁ……』と吐き出してくれるだけで、荒れ狂う騎士団長も、強欲な財務大臣も、みんな一瞬で『……なんか、争うの馬鹿らしいな』と悟りを開いてくれる! 君は我が国の、いや人類の『精神安定剤』なのだ!」

「勝手なこと言わないで! カンちゃんはアタシたちの執事なのよ。あんたたちの空気清浄機じゃないわ!」

 アビィがカスタネットをカチリと鳴らし、周囲の重力を二倍にする。国王の背中にさらなる負荷がかかった。

「主殿。どうやらこの王は、主殿の尊い『絶望』を、組織運営の道具として利用しようという不届きな考えのようですな。……100%の権能をもって、この国の王政そのものを『定時退勤』させましょうか?」

「……パパ、国を潰さないで。……はぁ。王様、僕が戻ることは絶対にありません。その代わりに、これを持って帰ってください」

 僕は、自分の「二度と働きたくない」という強い意志と、国王への冷めきった感情をすべて乗せて、本日一番の、そして人生で最も「突き放した」ため息を吐き出した。

「『どん底ため息砲・早期退職推奨(ハピネス・バスター・早期リタイア)』!!」

 スゥゥゥゥゥゥゥゥン…………ッ!!

 僕のため息が国王を直撃した瞬間、彼の頭の中にあった「カノンを連れ戻して国を安定させるぞ!」という執念が霧散した。代わりに、あるひとつの真理が彼を支配した。

「……あ。……そうだ。なんで私、こんなに必死に王様なんてやってるんだろう。……王冠、重いな。……明日から、パン屋さんになりたいな」

「えっ、国王様!? 乱心されましたか!?」

 国王は立ち上がり、その場で王冠を騎士団長に押し付けると、「私は、小麦の香りに包まれて生きていくぞ!」と叫びながら、軽やかな足取りで走り去っていった。

「流石は主殿。一国の支配構造すらも『個人の夢』という名の無気力で崩壊させるとは。これぞ究極のデバフ……。さて、残された騎士団の皆様は、私がまとめて『パン屋の従業員』として再就職を斡旋しておきましょう」

「……はぁ。これで本当に、僕を呼び出す人は誰もいなくなったかな……」

 僕は、主を失って呆然とする騎士たちを横目に、ようやく手に入れた「真の隠居生活」を確信し、冷えたミカンを剥き始めるのだった。

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