第20話:世界平和の祝賀会と、僕の家出(※もう放っておいてください)
王都は祭り一色だった。「魔界の脅威を退けた英雄カノン」を祝うため、近隣諸国の王族までが集まり、街中に僕の顔を模した(全然似ていない)銅像が建ち並んでいる。
「……はぁ。あんなキンピカの像、夜中に目が合ったら怖くて眠れないよ」
僕は宿の窓から、広場で踊り狂う人々を眺めて深くため息をついた。
「主殿、お迎えの馬車が参りました。国王陛下が『カノン殿に、我が娘との婚約を正式に発表したい』と、鼻息荒くお待ちですぞ」
パパが、これ見よがしに豪華な礼服を差し出してくる。
「婚約!? そんなの聞いてないよ! ……アビィ、助けて!」
「ふん、お姫様なんてアタシがカエルに変えてあげるわよ。……でも、そんなことよりカンちゃん。さっきパパが言ってたけど、魔界で取り戻したオーブ、あれって『起動キー』に過ぎないんですって」
「……えっ?」
パパが眼鏡をクイッと押し上げる。
「左様です。私が真の力を振るうには、さらに世界各地の聖域に封印された『属性の核』を取り込む必要があります。……今はまだ、本調子の3割といったところでしょうか」
「3割であの威力……!? 10割になったら世界が消えるよ!」
「だからこそ、主殿。王宮で退屈な挨拶回りをする暇はありません。今すぐこの街を脱出し、次の目的地――東の『精霊の樹海』へ向かうべきかと」
「賛成! お城のパーティーより、新しい冒険の方が面白そうだわ!」
アビィが窓を蹴破り、巨大なカスタネットを召喚して空飛ぶ絨毯のように浮かべた。
「……はぁ。結局、逃げる先も修羅場か……。でも、お姫様と結婚させられるよりはマシかな」
僕は窓枠に足をかけ、追っ手の騎士たちが部屋に踏み込んでくる直前、空に向かってため息を吐き出した。
「『どん底ため息砲・目くらまし(ハピネス・バスター・スモーク)』!!」
モワァァァァァァン!!
僕の吐息が雲となり、王都全体を優しい霧で包み込む。その隙に、僕たちは夜空へと舞い上がった。
「さらば、王宮の退屈な日々! ……はぁ。静かな隠居生活は、あとどれくらい先になるんだろう……」
僕は星空を見上げながら、これから始まる「全属性オーブ回収の旅」の長さを思い、深い、深いため息をつくのだった。




