第19話「魔障の毒地の浄化」
「あなたにとっては簡単なことです。あなたがわたくしやリディヤの傷を癒してくれたときのようにやっていただければよいのです」
「わ、わかりました! 私がみんなに治癒をするときみたいに……」
アースガルナはメイスの指示に従って、呟くように自分に言い聞かせて治癒のイメージで力を右手に込める。
するとアースガルナの右手は淡い金色に輝き始め、魔障の毒地は浄化され、ただの水溜まりへと姿を変えた。
「毒が……血が……消えていく……」
「やりましたねアースガルナ。これであなたはまごうことなき本物の聖女であると証明されましたね!」
「は、はい……!」
アースガルナにとっては信じられないことであったが聖女の奇跡をその身で証明してしまった手前、否定することもできない。
アースガルナは自らが聖女であると認める他なかった。
「それではアースガルナ、すべての毒地を浄化するのです!」
そうしてアースガルナは村中の魔障の毒地を浄化して回った。
ひとつも残すことなく。
「ごめんね、みんな。救えなくて」
「遅くなってごめんね。でももう大丈夫だから」
「安心して眠って。村のことはこれから私が守っていくから」
アースガルナは魔障の毒地の一つ一つに声掛けながら浄化していく。
まるで魔障の毒地の一つ一つに村人がそこにいて傷を癒すときのように安心させるように声を掛ける。
アースガルナのその言葉に呼応するように魔障の毒地は輝き始める────
「ありがとうな。ガルナ」
「ありがとう。ガルナお姉ちゃん」
「ガルナちゃん、ありがとうねえ……村のことをお願いね!」
アースガルナには村人ひとりひとりの姿カタチが、その声すらも聞こえてきた。
「ガルナ……まだ村人のことを想って……本当に優しい娘だ」
「いいえ、そうではないかもしれません」
しかしそれはどうやらアースガルナにのみ見聞きできるものであるらしかった。
それゆえにダリアスには心優しき少女が殺されてしまった村人たちを憂いてるように見えた。
「……と申しますと?」
「魔障によって汚染された土地には、死者の残留思念が留まることがあると文献にはあります」
「それはつまり……」
「アースガルナはこの地を浄化しただけではなく、魔王軍に殺されてしまった村人たちの魂すらも成仏させた。そういうことになるのかもしれません」
「あの子がそこまで……」
アースガルナから少し離れたところで浄化していく姿を見守りながらダリアスとメイスは会話を交わす。
たったひとりの少女がそこまでのことを成したのかとダリアスは言葉を失った。
今、この瞬間まで半信半疑だったダリアスだったがアースガルナが聖女であると、このとき初めて理解した。




